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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

ツインタワー5

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ツインタワー5

真、理央、堂嶋の三人だけで久々に酒を交わす。堂嶋は自分とは違い、順調な結婚生活を営んでいて、すでに子ども二人にも恵まれていた。

「生まれた、って聞いてたから、もっと父親らしくなってんのかと思ってたけど、早々人間は変わらないな。」

「父親って胸張れるほど子育てできてるかって言うと、怪しいからな。嫁さん任せだし。」

「でもそれでも上手くいってるんだろ?」

「まぁな。」

同期のメンバーも風の噂で結婚話や出産話をよく聞くようになった。真もそういう歳になったということなのだ。

「小野村は再婚しねぇの?」

聞いてきた堂嶋より隣に座る理央の方が食い入るように凝視してきて、真は苦笑した。この二人とは離れている間も連絡を取り合っていたので、真が結婚に失敗したことを知っている。

「結婚する気にはならないな。」

「その歳で枯れるなよ。」

「いや、枯れるとか、ってことじゃなくて・・・何て言ったらいいんだろうな。」

「向かない、とか?」

「まぁ、そんな感じ。」

「おまえらしくねぇな。」

堂嶋の言う通り、わりと仕事では白黒はっきりつけて物事を進めていくタイプだし、曖昧にすることや中途半端なことは嫌いだ。でもまさか理央が好きだから、などと言うわけにもいかず、口籠る。

「真さん・・・何で別れちゃったんですか?」

「別れようって言われたから。」

堂嶋は少し込み入った事情を知っていたからか、ウイスキーの入ったグラスを手に取り、口を付けただけだった。しかし一方の理央は首を傾げている。

「もともと好きで結婚したわけでもなかったからな。親に結婚急かされてたタイミングで向こうから結婚前提の付き合いを提案されたから乗っただけなんだ。向こうも結婚して気付いたんだろ。俺としては引き止めるほど結婚生活に愛着もなかったからな。だから別れた。それだけだ。」

「こいつ、なかなか酷いだろ。俺も離婚した段階で初めて聞いたけど、なかなか衝撃的だったもんよ。」

自分でも酷いと思っている。好きな人を忘れるための道具として、彼女とは結婚したのだから。子どもを作る気も、それらしい結婚生活を送る気も、今思えば真の方には全くなかった。

「俺・・・結婚したって聞いて、一年もしたら離婚したって連絡来たから、真さんに何があったんだろうって思ってました。真さん、それって幸せだって思えた瞬間、あったんですか?」

心底ショックを受けている理央を見て、苦笑するしかない。彼の素敵な先輩像を壊すには十分な破壊力だろう。人間性に難があると思われる類の話だ。

「人並みに幸せにはなりたいよ。でも俺にとって結婚はそういうものじゃない。そういうおまえは?」

「えっと・・・」

理央に話を振ると、これまた苦笑したっきりグラスに口を付けて話そうとしない。

「島津も全く女っ気がねぇよなぁ。おまえら二人、枯れるのが早過ぎねぇか?」

堂嶋の揶揄いに珍しく歯向かっていかない理央を見て、彼にとってわりとこの手の話が鬼門なのだと、真は勘付く。入社したばかりの頃も、見た目の華やかさで随分女性社員の注目の的だったが、確かに浮いた話は一度も聞いたことがない。

「俺ね、絶賛片想い中なんです。」

「告白しねぇのか?」

「絶対無理。」

「情けねぇな。人妻か?」

「違います。」

口を尖らせて堂嶋に抗議する姿は、いつもの理央だ。しかし明らかにテンションは低い。堂嶋もその事を察しているのか、真に視線を投げて寄越した。

「それ、いつからだよ。」

「七年前。」

「は?七年前!?」

真も飲みかけたグラスを置いて目を見張った。

「俺ね、その人に操立ててるんです。俺の一方的な想いだから、その人は全然知りもしないと思うけど。」

「ストイック過ぎるだろ、おまえ。」

堂嶋は心底驚いたように声を上げ、真は複雑な心境でそれを聞いた。二十九だ。好きな人がいるくらい別におかしなことではない。むしろ自然だ。けれどそんな長い間操を立てるほど好きな人がいる事実にショックを受けた。

「告ってフラれて終わりにすりゃいいだろ。案外スッキリ諦めつくかもしれねぇぞ。」

「フラれるのは想定内だとしても、避けられたりしたら耐えられない。だって本当に好きだから・・・。どうにかできるなら、とっくにしてます。」

「勿体ねぇだろ、それ。おまえ、ちゃんと仕事もして甲斐性もあんだから。他にも目向けろよ。」

「何度も言いたくなったけど、堪えるって決めたんです。嫌われたくない。この気持ちに終わりが来てほしくないっていうか・・・。死ぬ時にね、あなたの事一番に想ってたのは絶対自分だったって胸張って言いたいから。」

理央は言い方が日本人から見ればオーバーなことも多いが、あまりに真剣な目で話す理央に、言っていることが全く冗談ではないのだと悟る。真は堂嶋と二人、俯いてしまった理央を見遣る。

「おまえ、そりゃ・・・随分重症だな。」

「俺って一途でしょ? 見直しました?」

「一途過ぎて笑えねぇわ。」

呆れたように堂嶋がグラスに入っていた残りのウイスキーを全て飲み干して、バーテンダーにお代わりを注文する。

「その人以外に抱かれたいなんて思わないから。だからいいんです。」

そうなのか、と堂嶋と頷きかけて、理央の発言を慌てて頭の中で反芻する。堂嶋の方が湧いた疑問を投げかけるのが先だった。

「島津、今サラッと言ったけど、おまえそっち?」

「そっちです。ああ、言っちゃったなぁ・・・」

「だから言わねえのか。」

「納得しました?」

「したよ。相手がノーマルなら完全にアウトだな。全く可能性がないわけ?」

「はい。」

堂嶋は納得したのか、頷いただけだった。しかし真は頭では納得しつつも、心が混乱していた。可能性があるんじゃないかと期待してみたり、筋金入りの彼の片想いにそんな隙などないと思い直してみたり。そもそも同じ職場でこれから会い続けるのに、言ったら気まずくなるに決まっている。何を血迷っているのかと自分に言い聞かせて最後は落ち着いた。

「言われてみれば、接待でクラブとか連れ回してた時、女の子が隣りに来て微妙な顔してたもんな。」

「俺、顔には出さないように気を付けてたんだけどな。」

「今思えば、ってくらいだよ。少なくとも嬉しそうにしてたことはなかったと思って。」

理央が少し申し訳なさそうな顔をしてきたので、首を横に振る。

「俺が連れ回してた時もそうだったわ。」

「堂嶋さんの行くクラブは別の意味で引いてたんですよ。あんな服着てるのかわからないような状態で側に寄られたら、目のやり場に困りますよ。真さんがセッティングする接待は、まともでした。」

「普通の男は嬉しいんだよ。相手方のおやじ連中も喜んでたろうが。」

「堂嶋さんは下品です。」

「おまえ先輩に向かって下品とはなんだ。」

気まずくなりかけていた空気が一転、二人はまたいつもの調子に戻る。しかし真は、自分にとって酒の肴にするには重過ぎる話題に、こっそり溜息をついた。














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