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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

ツインタワー26

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ツインタワー26

たくさん注文をしたわりには、真の皿に取り分けるだけで自分は食べようとしない。職場では拍子抜けするくらい普段通りだったのに、二人きりになった途端人が変わったように目を合わさなくなった。

大した遅れもなく飛行機は無事着いて、市内の渋滞に巻き込まれつつ、そのままマレーシア支社入りした。歓迎会をしようとラーマンやオットが盛り上がっていたが、忙しくない日に改めて、ということで落ち着いた。理央との約束があったので、それとなく話の流れをそうなるように誘導したのだ。

「これ、初めて見るやつだな。何ていう食べ物?」

「ロジャッ、っていって味は甘辛い感じです。ここのは野菜がメインだから食べやすいと思います。果物も混ぜたりするけど、それだと真さんは苦手でしょ?」

「ああ、そうかも。」

ピーナッツソースをつけて食べる焼き鳥は、もはや見慣れたものだ。サテという名の食べ物であることも初日に聞いた。慣れれば癖になる味だ。

「こっちのご飯はココナッツミルクで炊いてあるやつで、そっちはターメリックで炊いたやつ。」

「ターメリックの方はピラフみたいな感じ?」

「そうです。ココナッツミルクの方も、多分想像するほど癖はないですよ。」

「食わず嫌いは勿体ないからな。一通り食べてみるよ。」

笑いかけると照れ臭そうに視線を泳がせて、そのまま視線はテーブルに着地する。

「食べたかったんじゃないのか?」

「・・・。」

テーブルの上に無造作に投げ出された手の先に触れる。ピクリと肩が跳ねて、彼の意識がそこに集中するのを感じる。人の目のあるところは、理央を疲れさせるのかもしれない。

「ほら理央、俺一人じゃ、こんなに食べられないよ。食べるぞ。」

恥ずかしそうに頷いた彼に苦笑して、真はなに食わぬ顔で焼き鳥に手を伸ばした。

 

 


帰りのタクシーの中で窓の外ばかり眺めて真の方を見ようとしない。男同士、外での距離の取り方に迷うのはわかる。しかしあまりにつれなくされると寂しくもなる。けれど気持ちはわからないではないので、理央の好きなようにさせた。

タクシーがコンドミニアムの敷地内に入って支払いを済ませる。外に出る前に辺りの様子を一度確認して、扉を開いた。コンドミニアムの敷地内だからといって、安心なわけではない。ここは日本とは違う。用心に越したことはないのだ。

二人で降りて足早にエスカレーターまで歩く。扉を閉めたところでようやく一息ついた。ちらりと横に並ぶ理央を見ると、少し肩の力を抜いたようだ。ようやく真の視線を受け止める。そして同時に目的の階に辿り着いて扉が開く。目の前は理央の部屋だ。俯いてばかりの彼を満足に拝めなかったから、ここで別れてしまうのが惜しくなった。

「理央、上がっていい?」

「・・・はい。」

適当に何か買い込んで、さっさとここへ来れば良かったかもしれない。満更でもない顔で頷かれて、真はドアを開けるよう、理央を促した。

先に通されてドアの閉まる音を後ろで聞く。すると同時に背中に小さな衝撃を受ける。少し間を置いて、抱きつかれたのだと気付く。

「真さん、ちょっとだけ・・・」

首筋に顔を埋めて、背後から腰に手が回る。お互いしばらく無言で身動き一つしなかった。けれど穏やかながらも確実に劣情が湧いてくる。先に沈黙を破ったのは理央の方だった。

「真さん・・・今日、泊まっていって・・・」

腰に回された手を掬って、彼の手の甲に唇を寄せる。

「そのつもりだよ。」

「あの・・・真さんさえ良ければ・・・抱いて欲しいんです・・・」

遠慮がちな声音なのに、言うことは限りなく直球だ。理央はオブラートに包むことを昔からしない。こういうところでも発揮される彼らしさに可笑しくなる。張り詰めている空気を少し柔らかく感じるくらいには心が和んだ。

「抱きたいよ。抱かせて。」

理央の腕を身体から解いて振り向く。不安げな顔に口付けて、緊張を振り払うように少し勇んで部屋へ上がった。

部屋の間取りは真の部屋と同じだ。バスルームまで迷わず手を引いていく。立ち止まり向き合って、理央のシャツのボタンに手を掛けた。

「経験あるのか?」

「結構前ですけど・・・あります。」

「男同士のことはわからないんだ。教えてくれ。辛い思いはさせたくない。」

「・・・うん。でも、引かれたらショックだな・・・。やっぱり、慣らすのは自分で・・・」

この期に及んで悩み始めた理央に苦笑する。信用されていないことに少し悲しくもなった。

「ッ・・・」

理央の額に自分の額を合わせて、諭すように告げる。

「全部知りたい。好きだから知りたいんだよ。教えて、理央・・・」

心の底から欲しいと思った人を抱くのは、多分初めてだ。自分の必死な気持ちが伝わってくれるといい。

理央から目を逸らさずに、ジッと瞳の奥を見つめる。迷って揺れた瞳も、ブレない真に観念したのか、震える唇が真の唇に重ねられた。

 





 








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