忍者ブログ

とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

ツインタワー2

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

ツインタワー2

気候が暖かいと人も陽気になるものなのだろう。各方面に挨拶を終えてプロジェクトのメンバーと簡単な打ち合わせを終えた後、全員がきっかり定時に上がった。現地スタッフも混ざって早速夕飯を食べに行く運びになる。宗教上の理由で酒を飲まない者もいるがお互い特に気兼ねなく来るようだ。初対面の者も堅苦しくなく、好き勝手に飲み交わせる雰囲気があるのは助かる。人間関係が良好なのは纏める立場としては願ってもないことだ。

「小野村さんと堂嶋さんは同期だって伺ってますけど、今まで接点はあったんですか?」

一つ下だという田浦とは一度も顔を合わせたことがない。英語が堪能で入社してすぐマレーシア支店に来たらしい。気さくでおおらかな営業事務の女性だ。配属された時から支店長のスケジュール管理なども任されている。

「俺と小野村は入社してすぐの五年間、本社の営業部で一緒。俺の結婚式の時もわざわざシンガポールから駆け付けてくれたぐらいの仲だよ。島津も含めてここ三人は腐れ縁だな。」

「俺と真さんは腐れ縁じゃなくて良縁です。」

「はいはい・・。こいつ、小野村大好き人間だからね。去年の暮れ辺りから、真さん、真さん、って酒飲むたびに煩かったんだよ。」

そうなのかと理央を窺い見れば、涼しい顔をしてビールを喉に流し込んでいた。

もしかしたらマレーシア支店に行くことになるかもしれないと理央にメールをしたのが去年の暮れだ。その頃からずっと騒いでいたのだろうか。

「プロジェクトリーダーで来る人、どんな人か知ってるかって島津くんに聞いた時の反応が可笑しくて。格好良くて、仕事も出来て、厳しいけど面倒見の良い人だ、って褒め殺しだったんですよ。だから、よっぽどなんだろうなと思って。小野村さん、愛されちゃってますよね。」

田浦が愉快そうに笑いながら焼き鳥にピーナッツソースをつけて頬張る。

「理央、ハードルを上げるなよ。」

「だって本当のことですから。俺にとっては、大事な尊敬する先輩ですよ?」

「小野村はもうおまえさんの教育係じゃないんだから、いい加減親離れしたらどうなんだ?」

堂嶋が揶揄うように言うと、理央は拗ねたように堂嶋から顔を背けた。

「真さんはずっと俺の先輩でしょ?」

縋るように問うてくる姿は二十九にもなる青年のそれとは思えない。理央の場合、見た目と言動にも大きなギャップがある。

「まぁ、おまえの後輩になる気はないから、ずっと先輩だろ。」

堂嶋と田浦がクスクス笑い出したので、理央は不貞腐れたようにビールの入ったグラスに口を付けた。

理央が俯いて何か隣りで呟いたが、すぐに店内の喧騒に掻き消される。どうかしたのかと問えば、何でもないですよと小さく笑って首を横に振った。

「俺としては今回のプロジェクト、小野村と一緒にやりたかったんだけど、そっちまで手が回らないから残念なんだよなぁ。」

「俺と真さんの邪魔しないで下さい。」

「可愛くないね、おまえ。」

理央と堂嶋の掛け合いは飲み会の恒例らしく、周りは笑うだけだった。会っていなかった間にここまで砕けた関係になっていたことが、流れた歳月を思わせた。

「そういえば、そのソースもだけど・・・」

ピーナッツソースをたっぷり焼き鳥に付けて頬張り続ける田浦の方へ向き直る。

「マレーシアの食べ物は甘いか辛いか極端じゃないか?」

空港の売店で買った甘過ぎる紅茶紛いな飲み物の話も引き合いに出す。

「小野村さんは甘いのも辛いのも苦手ですか?」

「真さんは辛いのは大丈夫。」

何故おまえが答えるんだと理央を見遣ると、楽しげに語り出す。

「辛さを選べるカレー屋さんに連れて行ってもらった時、真さんのカレー、信じられないくらい辛かったんですよ。でも涼しい顔して食べてたから、辛いのは絶対大丈夫です。でも甘いものは苦手でしたよね。俺がバレンタインにチョコレートあげたら変な顔してましたし。」

そういえばバレンタインにそんなこともあった。甘い物は確かにあまり好きではないが、あの時変な顔をしてしまったのは、チョコレートが原因ではない。何故、男同士でそんなものを、と疑問に思っただけだ。ただのイベント好きなのか、感覚がニュートラルなのか、理央の行動が時々解せないことが昔からあった。

「お茶って名の付くものには、大抵砂糖がたっぷり入っているんですよ。だから間違えて買ったら俺に下さい。」

「理央、尊敬してるはずの先輩にたかる気か?」

慕ってくれるのも悪いものではないなと思う。新しいことに逐一動じるほど若くもないが、全く不安がないと豪語できるほど世間知らずでもない。自分を祭り上げてくれるこの後輩の存在は、少なからず真の緊張の糸を解いてくれるものだった。














いつも応援ありがとうございます!!
励みになっております。

Twitter
@AsagiriToru
朝霧とおる

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

B L ♂ U N I O N
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

プロフィール

HN:
朝霧とおる
性別:
非公開

P R

フリーエリア