*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。
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今日の告白に至った経緯を話せば、理央は完全に魂が抜けたように脱力した。
「どうしてよりによって、堂嶋さん・・・」
もう何度目かわからない言葉を呟いて、自ら潰れようとしているかのように、理央は度数の高い酒を浴びるように飲んでいた。真は理央のハイペースには付き合わず、冷静に横で宥めながらグラスを傾ける。
「もう、ホント、信じられない・・・週明け堂嶋さんに会いたくない・・・」
「朝から堂嶋のチームと会議だろ。」
「そんなのわかってます・・・っていうか、何で真さんそんな平気な顔してるんですか?」
別に平気なわけではない。堂嶋に知られているのは居た堪れないし、正直崩れ落ちたい気分だが、今さらどうすることもできない。要は開き直っているだけだ。
「午前中、半休じゃダメですか?」
「どうしても仕事が手に付かないって言うなら、いなくてもいいけど。でも、どうせすぐに顔合わせるだろ?」
「鬼ッ!」
「なんとでも。」
文句を言って、拗ねてくれるのも気を許してくれているからだ。甘い雰囲気とは程遠いけれど、それでもこういう時間が愛おしくて、真は心が安らいだ。
昔からそうだった。日頃は文句一つ言わないで黙々とついてくるくせに、酒が入ると少し開放的になって愚痴を溢す。しかし嫌味はなく、むしろ愛嬌すらある。そういう憎めないところが好きで、可愛いと思っていたのだ。
「真さん・・・」
「ん?」
「眠い・・・」
「おい、ここで寝るなよ。」
「お姫様抱っこ。」
「できるか、バカ。」
想像するのも憚られて、即座に却下する。酔っ払った理央の鼻を摘めば、少し照れたように笑った。
これは相当酔っ払っている。グラスの中身を口に運ぼうとする理央の手を止めて、引っ張り上げて立たせる。
「ほら、もう帰るぞ。」
「イヤです。もうちょっと。」
子どものように駄々を捏ね始めた理央をなんとか立たせて、引き摺るようにタクシーまで引っ張っていく。せっかく綺麗な夜景が臨めた日なのに、自分たちはどうやらそういうものとは無縁らしい。情緒の欠片もない展開にも、真は全く残念な気持ちにはならなかった。
十分ほどタクシーに揺られて着いたコンドミニアム。理央のポケットから何とか鍵を探り当て、ドアを開けて絶句する。
「おまえ・・・何でこんなに汚いんだ・・・」
「うん・・・?」
会社では身の回りを綺麗にしていたはずだ。ということは、どうも本性を隠していたらしい。
食べ残したようなものはさすがにないが、テーブル周りは本や書類が、ベッド付近には脱いだものが散乱している。しかも角には埃の塊まで見えて、真は無意識のうちに後退りをした。
自分では特別綺麗好きだとは思っていないが、この惨状はさすがに許容できず、理央を支えながら部屋を後にした。しっかり施錠して、自分の部屋へ向かう。泥酔している今、何を言っても駄目だろう。
真は世話の焼ける後輩に溜息をつきながら、理央を自分の部屋へと招き入れた。ベッドに横たえてやると、すぐに規則正しい寝息が聞こえてくる。
真はシャワーを浴びるのが面倒だと思いつつも、汗でベトついた肌をそのままにする気にはなれなかった。
すっかり気持ち良さそうに寝入っている理央に目をやり、また一つ溜息をついて彼のベルトに手を掛ける。そしてそのままスラックスを脱がせてハンガーに吊るした。後で皺になると厄介だ。子どもの面倒を見る母親のような心境に、何だか笑ってしまう。
「浴びてくるか・・・」
理央に背を向けてシャワールームへ向かう。身体は疲れて重くとも、心はふわふわと軽やかで満ち足りた気分だった。
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