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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

ツインタワー16

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ツインタワー16

日本と違ってあまり残業らしい残業はないが、一人家にいてもすることがない。夕飯を作る気にもならないし、結局飲み歩いているので、正直健康的とは言い難いだろう。

付き合ってくれる堂嶋は奥さんも子どももいるわけだが、毎晩こんな出歩いていて家庭不和を起こさないのかと聞いたら笑われた。

「むしろ子どもが寝るまでは帰ってくるな、って言われんだよなぁ。俺が帰ってきちゃうと興奮しだして子どもたちが寝なくなるから。喜んでくれりゃ、俺も構いたくなるからな。」

「そんなもんか?」

「そんなもんなんだよ。で、どうよ?」

「別に・・・どうもなってないよ。」

話を振っておいて興味があるのかないのかわからないような相槌を堂嶋が寄越す。この軽さにある意味救われているのも事実だ。

「ま、どうするかはおまえたち次第だよなぁ。」

何となく居た堪れない気分になってきて、酒を飲んで心の中の靄を誤魔化す。

「おまえの場合、一度失敗してるわけだし。」

「そもそも同列で考えていいものか?」

「同じだろ。結婚で縛る気も縛られる気もなかったおまえなら尚更。引き止めもしないで、あっさり離婚したんだから。大事なのは気持ちがあるのかどうか、ってことなんじゃないのか?」

好きな気持ちは事実としてあって、けれど実際問題、理央と恋愛する気があるかというと、自分でもよくわからない。

先日は気持ちも昂ぶって言う気になっていたけれど、躊躇する気持ちが全くないわけでもない。

職場では今まで通りでいたいと思っている自分。けれど上司と部下という関係に恋人という関係がプラスされて、変わらないままでいられるのかがわからない。ただ、それを怖いと思ってしまう。

「まぁ、女と恋愛するのとは違うだろうな。男の場合、職場の上下関係も気になるんだろうし。たださ、難しく考えたところで気持ちが変わるわけじゃねぇだろ?」

「そう言われてもな・・・」

「ちんたらしてると、あっという間に歳食って、後悔すんぞ。それに・・・」

堂嶋がバーのガラス窓から見える双塔を眺めながら、溜息混じりに言葉を吐き出した。

「おまえが上手く自分の気持ちを昇華したとして、島津に同じようにしろ、ってのは酷なんじゃねぇの?」

「気付いてないままだったら、そうなってただろうな。」

「でも、おまえは知ってる。」

とどめを刺すように堂嶋に言われて、その視線から逃れるように酒を口に含み、グラスの底を見つめる。

「あいつ、おまえの話が出るたびに一喜一憂して、結婚の話が出た時は暫く浮かない顔してた。今思えば、だけどな。あいつなりに心の整理したんだろうけどさ、あっさり離婚しやがって。おまえに振り回されっぱなしだろうがよ。」

「随分肩持つな・・・」

堂嶋は呆れたように眉を上げて、溜息をついた。

「当たり前だ。おまえの部下だった時間より、俺の部下だった時間の方が長いんだぞ。」

「そう、だったな・・・」

「それでもあいつの一番はおまえなんだ。」

頭で何となくわかっていることと、はっきり言葉にして突きつけられるのは違う。事実として目の前に舞い降りてくるからだ。

「どうしたいのか、それだけ考えれば良いんじゃねぇの? 誰から見ても正しい、ってのはあり得ないだろ?」

「堂嶋、強引過ぎだよ、おまえ・・・」

「両想いなのに、目の前でぐずぐずされたら、捗るもんも捗らねぇだろ。今年度の数字いかなかったら、おまえらの所為ってことにするから。」

「滅茶苦茶だろ、それ・・・」

突拍子もない言葉でも、この同期が背中を押そうとしてくれているのはわかる。ここまでくると、気恥ずかしさもどこかへ飛んだ。

「区切りがついたら、って理央に言ったんだよ。」

「それを先に言えよ。」

堂嶋から肘打ちを喰らい、真は顔を顰める。

「でも、おまえに言われて、ようやく踏ん切りついた、かな。悩んでるだけだと、どうせ着地点も見えないし。どうにか決着つけるよ。」

二人揃ってグラスを口につけ、真は肺に溜まっていた空気と共に胸の澱も一緒に吐き出した。すると堂嶋がもっともらしい言葉を吐き出す。

「あぁ・・・ようやく、ぐっすり寝られるわ。」

「どうせ毎日酒飲んで、ぐっすり寝てるだろ。」

「あ、バレた?」

馬鹿なことを言って、二人で肩を揺らして笑い合う。同期でもここまで砕けた関係なのは堂嶋だけだ。互いに口には出さないけれど、切磋琢磨して支え合える、家族でも恋人でも、ただの友だちでもない不思議な関係。彼がいなかったら、もっと窮屈な日々を過ごしていたかもしれない。
真は今この瞬間、堂嶋という存在に感謝せずにはいられなかった。












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