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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

ツインタワー13

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ツインタワー13

不快な話し合いの席は疲労だけが溜まる。つけ入る隙を与えたくはなかったので、淡々と相手に依頼の取り下げを告げた。

こちらがそう出てくるとは思っていなかったのか、担当者も上長も慌て出した。要求されたデザインに対してスケジュールがタイトなので料金は以前より割増だが、請け負うことはできると言ってきたのだ。結果、読み通りの展開に真は興醒めし、他にあてがある旨を伝えて断り続けた。

最後には逆上して契約違反だと言ってきたが、交わしてきた契約書を提示して、冷静に受けて立った。

相手の足下を見て仕事をすれば、いつか痛い目は見る。コストに見合わない破格の数字など提示してはいけないのだ。安価を要求されても譲れないラインを超えてはいけない。自分たちにしかない武器を手に、堅実に実績を積み上げていく。それが仕事をするということだと真は思っている。

理詰めで諭していくのは、あまり気分がいいものではない。向こうの出してきた条件の中で、こちらも付き合いをしてきたのだ。しかしギリギリのところで保たれてきた均衡がここへ来て崩れた。ただそれだけのことだ。

競争が厳しい中で安価を武器にしたくなるのはわからないではない。しかし価格勝負は、あっという間に底が見えて立ち行かなくなる。安易な解決策は身を滅ぼすのだ。

「申し訳ありませんが、社の方針転換で別のデザイン事務所との契約を考えています。こちらも依頼をして一度断られている身ですので、対応を考えた次第です。快く引き受けて下さらないところとは、今後も気持ち良く仕事ができるとは思いませんので。」

真は話をクローズする方向に持っていく。目でこれ以上何かあるかと問えば、相手は項垂れた。こうやって付き合いを切るのは双方にとって嫌な話だ。しかしビジネスである以上、馴れ合いで仕事はできない。

二人を出口に案内し頭を下げて見送る。後味は悪くなってしまったが、これまで世話になったのは事実だ。契約をこれから先しないことになったとしても、人として無礼な態度は取りたくない。彼らが振り向いて手を挙げた。真はそれにもう一度応えるように頭を下げた。

デスクに戻るとメンバーが複雑そうな視線を寄越してきたので、小さく首を振った。これで商品パッケージに関しては振り出しに戻ったわけだが、さほど陰鬱な雰囲気ではなかった。

「真さん。例のイラストレーターのアブバカールさんが会って下さるそうです。すぐにでも、ということなので、早速夕方に会ってきます。」

「任せていい?」

「はい。」

少し気負っているようにも見えたが、何でもかんでも手を出していたら、彼の成長を妨げてしまう。一緒に行く、という言葉を呑み込んで、真は理央に任せることにした。












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