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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

ツインタワーⅢ-7

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ツインタワーⅢ-7

イライラが止まらなくて、けれど常盤に素っ気ない態度しか取れなかった自分の狭量具合も許せなくて、頭の中はぐちゃぐちゃだった。

負の感情に支配されたまま飲み過ぎるのは本当に良くない。こんな悪酔いをしたのは初めてだ。途中からこめかみが痛み出し、タクシーで帰宅する頃には身体が重かった。

「理央、大丈夫か?」

大丈夫じゃないけれど、素直に甘えられない。甘えたくて独り占めしたかったのに、いざ小野村と二人きりになったら、情けなくて泣きたくなる。

スーツのままベッドにダイブして、うつ伏せになって小野村を視界に入れないように遮った。

「理央、シャワー浴びよう。寝るのはそれから。」

「・・・。」

「それとも、シャワーできないくらい具合悪いのか?」

「・・・浴びる。」

頭上から溜息が降ってくることを覚悟していたがその気配はなく、小野村はベッドに腰掛けてこちらを覗き込んできた。

「おまえが傷付くようなこと、何かしたか? 困ったことに心当たりはないんだけど・・・気に障るようなことを俺がしたなら、ちゃんと謝らせてくれ。」

小野村はこんなに優しくしてくれるのに、なぜ不安の芽は尽きないのだろう。

自分は十分過ぎるほど愛されている。大切にされているし、軽んじて扱われたことなどない。それでも不安はやってきて、常盤の視線を過度に意識してしまったりするのだ。

「真さんは何も悪くないんです。ただ俺が・・・自信がないから・・・。」

「自信、か・・・」

「忘れて、真さん。」

「理央?」

「真さんのこと、困らせたいわけじゃないんです・・・」

頭に響く鈍い痛みをこらえて起き上がる。そして自ら小野村に抱き付いて、心に刺さった棘を誤魔化した。

 * * *

シャワーを浴びると頭が冴えて、幾分頭の重さが消えていた。しかし冷静になればなるほど、可愛くて、小柄で、いかにも庇ってあげたくなる女の子の常盤に嫉妬してしまう。

ここ二、三年は小野村と自分の間を阻むものが何もなかったから忘れていた。小野村は元来、仕事ができて女性に人気のある人だ。ライバルはそこかしこにいる。しかし理央が戦々恐々としていても、本人は全く他人事。淡々としていて、自分の興味が向くものにしか関心を示さない。そういう人だった。

愛されていると思う。誠実な彼がよそ見をすることなどないと思うのに、弱い自分は勝手に敵を作ってしまう。

「真さん」

「うん? 寝ないのか?」

「ちょっとだけ・・・したい、な・・・。」

強請れば、特に躊躇うことなく微笑んで、小野村の手は理央の方へ伸びてきた。

「理央」

優しい声音で呼ばれ、胸が締め付けられる。少し気を緩めれば、感極まって何かが溢れてしまいそうなくらいだった。

「こっちは元気だな。」

「だって真さんが触るから。」

「してほしいんだろ?」

頷いて、小野村の首筋に顔を埋める。先の行為を促すように吸い付くと、彼の手が理央の分身に辿り着いて刺激しはじめる。

気持ちが良い。脳天に響くような快感とは違って、とても緩やかだったが、気持ち良いことには違いなかった。

もしかしたら身体が感じる充足感以上に、安堵の気持ちが強いのかもしれない。心が満ちるのだ。まだ彼は自分に触れてくれるのだな、という安心感。

「ッ・・・ん・・・」

窪んだ皮膚の薄いところを小野村の手が擦ってくる。みっともなく声が漏れそうになり、咄嗟に目を瞑って唇を噛んだ。

小野村の愛情を疑わないでいられる強いメンタルが欲しい。ちょっとやそっとの事で不安にならない心が。

「触って、いい?」

「どうしたんだ? いつもはそんな事聞かないで触ってくるのに。」

「真さん、俺のこと、好き?」

何度でも確かめないと、すぐにすり抜けていきそうで。まだ会って間もない新卒の子に盗られる心配をするなんてバカみたいだけど、それでも好意的な視線に焦ってしまう。

そんな目で自分の恋人を見ないでくれと叫んでしまいそうなのだ。

「好きだから、こういう事してる。」

「うん・・・」

常盤に意地悪なんかしたくない。けれど小野村に向ける憧れの視線を見るたびに頭に血が昇る。どうにかしたくても、どうにもならなかった。このままだと彼女のことを嫌いになりそうだ。

「きっと・・・真さんとのこと、ガッカリさせる・・・心が狭いって・・・」

「そんな風に思ったことないよ・・・理央、本当にどうした?」

「・・・ヤダ・・・言いたくない。」

「・・・。」

自分でもどうしたいのかよく分からない。きっと小野村は呆れてる。けれど愛撫の手は止まらずに、優しい口付けが降ってきた。そして小野村が頭上で小さく笑って、理央の昂りを確かめるように陰嚢ごと掌に包まれて揉み込まれる。

「ッ・・・」

「言わなくてもいいけど・・・仕事中にそういう顔するなら吐かせるからな。」

「・・・はい。」

時々こういう風に小野村がちょっと強引になるところが好きだ。うっかり真っ黒な気持ちを吐き出してしまいたくなるけど、もう少しだけ、一人で闘ってみないと後悔してしまいそうで。

「ほら、さっさと出して、寝るぞ。」

「んッ・・・」

滾った熱を小野村の手が性急に扱き始める。急所を知っている彼に抵抗する間もなく、理央は呆気なく熱を放って、意識を手放した。














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