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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

ツインタワーⅡ-7

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ツインタワーⅡ-7

つい昨日までうだうだ悩んでいたのに、すっきりした気分で出社したら、早速堂嶋から突っ込みが入る。

「昨日まで落ちてたヤツの顔じゃねぇな。」

「俺は切り替えが早いんです。」

「よく言うよ。思春期のガキか。」

「・・・。」

堂嶋に言われてムッとしつつも悪態を堪えたのは、昨夜、小野村にも全く同じ事を言われたからに他ならない。伊達に二人は同期じゃないと思い、項垂れる。

「真さん、堂嶋さんがイジメます。」

小野村のデスクに向かって訴えると、苦笑いが返ってくる。

「堂嶋、あんまり揶揄うなよ。」

後で拗ねて大変だから、と心の声が聞こえてくるような小野村の言い方に、若干納得がいかない。

恋人の自分を立ててくれないなんて、とむくれかけて、ここは職場だと自分に言い聞かせる。

しかし側でそのやり取りを聞いていた田浦は吹き出して笑った。

「堂嶋さん、また島津くん弄りですか?」

「そう。楽しくて、つい、な。」

その言葉にフロアの人たちの間でドッと笑いが起こる。助けを求めるように小野村の方へ目を向ければ、理央から顔を背けて肩を震わせていた。もはや恋人も味方ではないようだ。

不貞腐れた顔を隠しもせず、理央は盛大に溜息をつく。仕方なく、自分から年末最後の報告をする。

「真さん、例の工場の件、年始に担当者と会えることになりました。」

「ぇ・・・あ、そうか。担当者は日本人?」

「はい。それであの・・・」

「うん?」

最後の最後まで迷って、しかし決意を固めて宣言する。

「契約が決まるまで、一人でやらせて下さい。」

「そう・・・。じゃあ、任せようか。」

小野村の顔から先ほどまで自分に向けられていた揶揄いの笑みは消える。見定められるような、挑発的な彼の目に、ゾクリと武者震いがした。

理央が新人だった頃にはまだ見ることのなかった、射抜くような目。再会して仕事を共にするようになって、この冴えた目にも心底惚れた。

小野村は仕事をする時、絶対に自分を特別扱いしたりしない。徹底的に上司の顔をする。だから、自分も安心して部下の顔ができる。気持ちの整理が上手くいかなかったのは、発揮する必要のないプライドを仕事場に持ち込んでしまったからだ。

職場にいる時は彼の部下でいればいい。追い付ける日はやってくるかもしれないし、永遠にそんな日は訪れないかもしれない。けれど心配だけしていても状況は変わったりしない。出来ることを一つひとつ重ねていくしかないと、納得するより他ないのだ。背伸びして一瞬大きく見える自分は、本当の自分ではない。

小野村だって完璧な人間ではない。昨日それが垣間見えたから嬉しかったのだ。そしてホッとした。ダメな自分を素直に受け止める気になれた。

だからきっと大丈夫。これから先も、この人の下で頑張っていける。

この仕事は賭けというほどのものではない。今まで実績を重ねてきた自分なら、手繰り寄せることのできる仕事だと思っている。

躓きながら、試行錯誤してカタチにすればいい。頭の中であらゆるパターンを想定しながら、理央は年始からすぐに行動が起こせるように下準備を始めた。











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