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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

ツインタワーⅡ-18

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ツインタワーⅡ-18

上手く行く時もあれば、上手くいかない時もある。それが仕事だ。

交渉が停滞し始めた理由が不可抗力だと、何とも言えない脱力感に見舞われる。工場建設のための資材の納入が遅れていて、完成時期が遅れてしまう。これに関してはすでに決定事項ということだった。それに伴い、諸々の決定が先送りされることになったのだ。

先方は時間ができた分検討する幅が増える。こちらとしては闘う相手が増える。厳しい状況だが、うちを使ってもらう良さを説いて粘るしかない。年明けの手応えが良かっただけにガッカリしてしまう。

上司としての小野村からは動向を注視して、すぐに動けるようにとだけ指示された。それを見ていて慰めの言葉を掛けてくれたのはラーマンとオット。職場では徹底的に上司な恋人に、寂しいと言いたいのを辛うじて呑み込んで自分のデスクについた。

けれどドライだった日中の反応とは一転、理央の家で二人きりの夕飯を共にしていたら、小野村の方から話を振ってくれた。

「日本と違って、その手のルーズさが痛いよな。俺もシンガポールにいる時は何度も肩透かしを喰らったよ。粘れば粘っただけ成果が出るか、っていうとそうでもないし。タイミングなんだよな、何事も。」

「タイミング・・・。」

「でも、待ってるだけでも駄目なんだ。自分でピッタリ嵌るピースを探しに行かなきゃいけない。それが大変なんだけどな。だけど、後で振り返ると楽しかったな、って思えるよ。」

「そっか・・・。」

出来る準備はまだある。工場の食堂に入れてもらう分だけの食材を契約するのではなく、別の自社商品にも展開していくことができるなら、日系工場の仕事の有無に関わらず農家と契約しておける。事前に契約がある状態で追加の発注を打診する方が、客の事情に振り回されるのは最小限で食い止められる。

「堂嶋の案件と同時並行で動いてみる、っていうのはどうだ?」

小野村に言われて、灯台下暗しとはまさにこの事だなと気付く。

堂嶋は別案件で、マレーシア発の商品を日本展開するべく動いている。確かにそれと同調できればスムーズにいくかもしれない。むしろ一緒に動けるなら理想だ。

「真さん、ありがとう。どうにかなりそうな気がしてきた。うん、なんか、スッキリ。」

笑顔を零せば、小野村もつられて照れ臭そうに笑い返してくれる。

小野村の援護はいつだって的確で、やっぱりこの人には敵わないなと思ってしまう。本当は甘い慰めが欲しかった、というのはこの際胸のうちに封印する。目の前の霞が開けた爽快感で身体まで軽くなった気分だ。

「理央」

思い付いたが吉日と、早速堂嶋に社内メールを送りつけた後、待ち構えていたように小野村から呼ばれる。

彼の顔を見遣った瞬間に口付けをされて固まる。だっていつも仕掛けるのは自分のことが多くて、彼からこういう不意打ちをかけられることは滅多にない。吃驚して目を見開いたまま小野村と長い長いキスをしていると、彼の唇がそっと離れて楽しげに笑う。

「仕事だからね。メールするのが駄目だとは言えないけど・・・二人でいるのに俺のこと忘れて他の男とメールしてるのは納得がいかない。」

小野村が嫉妬してくれたんだと思ったら、嬉しくて口元が緩む。普段独占欲とは無縁に見えるこの人も、自分に対してはそういう面を見せてくれるのだと思ったら堪らない気分になる。

ニヤけていたら軽く頭を小突かれた。こっちは恋愛絡みもそうでないことも嫉妬が日常茶飯事なのだ。たまには嫉妬してくれたってバチは当たらないと思う。

緩んだ頬を戻す努力も特にせず、嬉しさで胸をいっぱいにして、今度は自分から小野村へキスを仕掛けた。














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