身体を重ねたのは一週間も前ではない。なのに忘れていた。男の身体が正直なことに。小野村が自分のことを好きでなかったら、きっと反応なんかしない。疑う方が愚かだろう。でも自分の不安な部分を突かれて表面化した。今回のことは、そういうことだったんだろうと冷静に解釈する。
だってのし掛かってくるこの重みも、小野村の膨れる欲望も、偽りのない現実だ。理央のことを見て、触れて、彼の分身はちゃんと主張している。好きだとカタチを成して示している。
そっと手で包み、舌を這わせる。呻く声も、手の中でみるみる育っていく熱も、堪らなく愛しい。
「理央、俺にもさせて。」
「ん?」
咥えたまま見上げると、小野村が息を呑む。
「俺だって、おまえの事、気持ち良くしたいよ。」
「うん」
「ッ・・・咥えたまま、頷くなよ・・・」
思い切り顔を顰めて、理央の手を制す。小野村が足を顔の方へ寄越せと言ってくる。互いに愛撫し合える体勢。小野村がこういう事を言い出すのは珍しい。彼の気が変わってしまわないうちに、素直に従った。
小野村と横向きに身体を合わせて、彼の口へ自分の屹立が迎え入れられるのをジッと眺めた。分身に温かくて柔らかい湿ったものが纏わり付く。腰へ響く刺激は甘美だ。
うっとりしながら目の前にある彼の硬茎に舌を這わせる。ビクッと震えて、先端から透明な粘液が溢れる。無意識に逃げていく彼の腰を捕まえたら、仕返しとばかりに強く吸い付かれた。
夢中になりながら奉仕し合う。際どい刺激を施しながら、意地になってくる。先にイったら負けのような気がして、達してしまいそうになりながら、小野村の分身も高めていく。
小野村の指が後孔の縁で円を描く。間もなく中へ滑り込んできて、秘部からの刺激と硬茎に施される愛撫で蕩けそうになっていく。
そんな両刀ズルいじゃないかと彼の分身を弄り返す。けれどそんな仕返しをモノともせずに、小野村の手は理央を翻弄していった。
気持ち良くて頭の中が焼け切れてしまいそうだ。理央が快感に悶えていると、ふと小野村が理央を呼ぶ。
「理央、おいで・・・ぁ、こらッ」
呼ばれて思い切り吸い付いたら、小野村に頭を小突かれた。けれど上に乗るように促されて、口から彼の熱い硬茎を離し、彼の身体に跨る。
良い眺め。熱に浮かされた小野村の顔を見て、彼を征服できたような気になる。自分の眼前で揺れる彼の熱情が早く欲しい。
彼の硬さを確かめるように数度擦り上げて、自ら秘部へ充てがう。彼の熱さに溜息が漏れる。重力に任せて腰を落とすと、小野村の分身が後孔に侵入してきた。
もう何度も繋いだ身体は、彼のカタチを知っている。もっと奥へと誘うように中が蠢いて、彼の陰茎を締め付けた。
「ッ・・・理央・・・」
「ぁ、くる・・・まこと、さ・・・ッ・・・」
小野村が衝動を堪えて抱きしめてくる。男ならこんな風に刺激されれば突き上げたい衝動に駆られる。それを堪えてくれる優しさが好きだ。
二人で互いを掻き抱いて、馴染むまで唇を貪り合う。彼を迎え入れて蠢く中が、やっと落ち着いて彼を包んだところで、理央の方から腰を揺すって誘った。
「ッ・・・」
顔を顰めて快感を享受する小野村が愛おしい。眉間に皺を寄せて、時折甘い息を口から吐き出して、刺激を与える理央の腰を手で掴んだ。
ゴムをしていないから、彼の熱を直に感じる。今、彼の頭の中を支配しているのは自分だけだろうか。そうであって欲しいなと思う。
「真さん・・・好き・・・」
「そう。」
「・・・。」
同じ言葉を返して欲しいと思うのは欲張りだろうか。
「俺もね、おまえの事で、頭がいっぱいだ・・・どうやったら、悲しませないで済んだのか、考えてる・・・。」
「・・・うん・・・」
小野村の思いがけない言葉に、涙腺が刺激される。自分の考えている事は、どうやら彼に筒抜けらしい。
「大好き・・・」
「・・・知ってるよ・・・傷付けて、悪かった。」
「うん」
取って付けた愛の言葉より、小野村の正直な気持ちが胸を射止める。心臓がキュッと締め付けられたような甘い痛みを感じて、心底彼に惚れている自分を自覚した。
好きって気持ちは偉大だ。どん底を味あわせたり、胸を高鳴らせたり、忙しいったらない。
小野村の一部を身体の中に取り込んで、身も心も近くにある幸せを噛み締める。
「ッ・・真さん・・・んッ・・・」
彼に蹂躙されて揺さぶられることが多いけれど、今日は自分が彼を狩りにいく。小野村の上で律動するたび、眉を顰めて息を詰めてくれるのが嬉しい。
理央自身も己の気が良くなる場所を探しながら腰を揺らめかせた。小野村をジッと見つめていると、困ったように笑う。
「ッ、理央ッ・・・」
もうすぐこの人は自分の中で極まろうとしているんだと思ったら、堪らない気持ちになった。理央の先端には白く濁ったものが浮かんで、弾けそうになっている。二人で同じ快楽を求め合って交わる行為に心が震える。
もう少し、あと少しで、この人と同じ高みを見る。
律動を早めて、形振り構わず腰を振る。もう、恥ずかしい気持ちはとっくに捨て去っている。彼の先端の弾力ある丸みを、快感を生む場所へとピンポイントで当てる。
「あぁッ・・・どうし、よ・・・ん・・・んッ・・・」
「・・・ッ、ぁ、理央・・・出、そう・・」
「中、だし、てッ・・・いい、から・・・ッ・・・」
「・・・ッ・・・ぅッ」
「ぁ、くるッ・・・んッ・・・ぁッ」
体重に任せて腰を深く落とした瞬間、小野村の呻き声と共に、身体の奥に熱を感じる。ジワジワと侵食していく熱が、理央を絶頂へと誘った。
目の前がチカチカと白く点滅して呆然としてしまう。優しく抱き締められていることに気付いたのは、達してからだいぶ経った後だった。
「気持ちい・・・」
「悪い・・・中、出した・・・」
「良い、って言ったの俺ですよ。」
「そうだけど・・・大変だろ、掻き出すの。」
「真さん、して?」
「洗ってる間に、また挿れたくなりそうだ・・・」
「挿れても良いですよ?」
我慢させる事は理央自身望んでいないし、また抱き合いたくなったら、欲望に流されたって良いと思う。だって恋人同士なんだし。身体の関係も込みなのはお互い承知の上だから何も問題がない気がする。
「おまえさ、体力あるよな・・・俺の方が腰砕けそうだよ・・・」
小野村が情けない声で抱き付いてくるなんて滅多にない。少々がっつき過ぎただろうかと心配になる。
「俺・・・性欲強い?」
「心配するとこ、そこなのか?」
真剣に考えて言ったのに、小野村に思い切り笑い飛ばされて納得がいかない。
「風呂、入るか。」
まだ可笑しそうに肩を震わせている小野村の顔を不満げに覗き込む。けれど小野村からの口付けの甘さに呑まれて、理央の不満も長続きはしなかった。
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朝霧とおる