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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

隣り35

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隣り35

合格発表はネットで確認できるため、現地には行かなかった。合格通知の書類が手元に来て、ようやくあの場所へ帰れるのだと実感する。

歩に受かった旨をメールしたら、すぐに電話が鳴った。迎えに行くと歩が興奮して話す様が可愛くて、声を録音してしまったのは彼には内緒だ。電話を切った後、何度も何度も彼の声を再生していると知ったら、歩はどう思うだろう。

歩の元へ行くことは、嬉しくて、少し不安だ。電話越しで幼馴染の事で泣いたのは一度だけ。ポツポツと時折話に出る事はあったものの、あれからどう心の整理を付けたのかはよくわからない。

歩にとってあの幼馴染は、永遠に特別。同じ時を重ねてきた思い出の空間に、自分が入り込む余地はない。出来ることは、これからの時間を共に過ごす事だけ。それも、歩が心を許してくれれば叶うという狭き門なのだ。

歩に会いたい。けれど会ってしまって失望する事もあり得る。歩はとても正直だ。その目は嘘をつかない分、悲しいくらい残酷だった。

「歩・・・」

もう一度、はしゃぐ彼の声が聞きたくて、ベッドに身体を横たえたまま再生ボタンを押した。耳に心地良く流れてくる彼の話し声に、抑えていたものが溢れそうになる。受験の重圧からも解放され、心の枷が一気に消え失せたからだろう。

「どうしよう・・・」

熱を持った下半身を持て余して、考えても仕方のないことを延々と考える。好きな相手に真っさらな心を持つ事は自分には不可能だ。

触れたいと思ってしまう。歩の肌を知っている分、よりリアルにその熱を思い出した。

こんな事で逐一罪悪感を抱いていたら身が持たない。好きな人を想って欲望を満たしたくなるのは仕方のない事だと、結局は割り切った。

「歩・・・」

耳をくすぐる歩の笑い声が、下半身に響く。躊躇うことなく自分の熱に触れて、望むままに扱いていった。気持ち良さに酔っていき、閉じた瞼の向こう側に歩の顔をはっきりと思い浮かべる。
辿々しい手付きで触れてくれた彼の手を思い出しながら、その動きを真似てみる。途端に気持ちが昂ぶって、強烈な射精感に襲われる。

熱を吐き出す事に全く躊躇ったりしなかった。込み上げるままに腰を浮かせて吐精する。掌で受け止めきれなかった白濁の液がシーツを汚した。

「ッ・・・歩ッ・・・」

歩を前にして、この身体に抱える衝動を堪え切れるだろうか。快感を味わって思考力の落ちた頭で考えてみても、賢介にはわからなかった。

住まいを見つけるために、もう早速明日には歩に会うのだ。この気持ちを律するだけの時間が足らない。

録音の再生が終了して、呆然と天井を見上げる。歩を傷付けないための強靭な忍耐力が欲しい。
そう願って、手から溢れ落ちた欲望をティッシュで拭った。


















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