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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

隣り14

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隣り14

随分長く時が止まったように感じた。けれど息を止めた口付けが長いわけはない。離れた唇を再び片岡が重ねてきて、触れ合うだけのキスから、次第に濃厚なものへと変わっていく。

どうやって息継ぎをしたら良いのかもわからないまま翻弄されて、気が付いたら頭は真っ白になって、身体は骨抜きにされていた。

「歩。嫌じゃない?」

囁くように問われて、回らない頭で頷いた。けれど深呼吸をして脳に酸素が回り始めたら、急に身体の変化に気付いて顔が熱くなる。耳まで熱くて、きっと自分は赤面しているだろう。そう思ったら、居ても立ってもいられなくなった。

「可愛い。」

楽しげに微笑んだ片岡が布越しに歩の兆したものに触れる。驚いて身体が跳ねた歩を、片岡があやすようにそっと抱き締めてくる。

「別に変な事じゃないだろ? むしろ嬉しいよ。手でしよっか?」

片岡は口では歩に尋ねながら、手はすでに確かな意図を持って動き始めていた。

「ぁ、賢介、待って・・・」

嫌ではない。むしろ身体が望んでしまっている現状を心が受け止めきれなくて困惑する。恥ずかしくてパニックになっていた。

「歩。大丈夫。大丈夫だよ。」

片岡の手が、器用にベルトを外して、直に肌の上を滑っていく。下腹部に触れた手が官能的に動き回って、歩が慌てふためいている間に、硬く実っている屹立に辿り着いた。

「わッ・・・ぁ、待って・・・」

自分以外の誰かに硬茎を弄られたことはない。あまりの気持ち良さに驚いて情けない声を我慢できなかった。あっという間に身体から抵抗する力が抜けていく。

彼の手の中で順従に育っていく屹立。快感が脳天に響いて、抗うことなどできなかった。

身体が刺激で跳ねるたびに熱が溜まっていく。自分でするのとは違って、限界はすぐにやってきた。

「待ってッ・・・離して・・・ッ」

「歩、大丈夫。出して。」

「でもッ・・・んッ、ダメ、出るッ・・・ぁ、んッ・・・うッ・・・」

敏感な先端を指の腹でくすぐられて、促されるままに歩は身体を震わせた。

「んッ・・・ん・・・」

弾けた先端から昂った証を吐き出す。止まらない精が片岡の手を幾度も濡らした。

「・・・賢介、ごめん・・・俺・・・」

扱かれるままに放った精を慌てて拭おうとするけれど、片岡は宥めるように優しいキスを繰り返してきた。腰を抱き寄せられ、彷徨う手を掴まれる。

「歩、何で謝るんだよ。好きな人が自分の手で気持ち良くなってくれたら嬉しい。わかる? 俺は嬉しいんだよ。だから落ち着いて。」

諭すような声に、ようやく混乱していた頭が冷静さを取り戻していく。けれど落ち着くほどに、片岡の手で極まった恥ずかしさが増した。

片岡の胸に顔を埋めて、煩いほど鳴る自分の心臓の音を聞く。人と触れ合う事はこんなにも自分から理性を奪う。それが怖くも魅惑的で、未知の世界への期待に心が昂っていく。そして自分は子どもだったのだと思い知った。

「・・・賢介」

「うん?」

「どういう顔、したらいいの・・・」

消え入るような歩の声に耳を傾けてくれた片岡は、微笑んでまたキスをくれた。彼の手が慣れた手付きで歩の放ったものをティッシュで拭っていく。

柔らかい刺激に萎えているはずのものがピクリと震えて、また少し先端から精が溢れてしまう。それを何も言わず、片岡は満足げに拭ってくれた。

「今の歩は誰にも見せたくないな。」

「・・・見られたら、困る・・・」

「ごめん。いじけないでよ、歩。どうしよう。可愛くて、困る。」

「・・・。」

「嫌だった?」

片岡に嫌かと聞かれると、嫌とは言えない。そして本心から嫌だと思っていない自分がいる。聞き方が狡い。嫌だと言わない事をわかっていて、片岡は自分に問うている。

「ねぇ、歩?」

片岡の胸に額を押し付けて、せめて目を合わせないようにしがみつく。目が合ったら、嫌がってなどいない事がバレてしまって、さらに気恥ずかしいからだ。

嬉しかった。けれど誰でも良かったわけじゃない。片岡は歩の心に絶妙な距離感で入り込んだきた。強引なようでそうじゃない。歩が心地良いと感じる立ち位置をわかっている。

付き合いが長い悟史はそれが当たり前だった。けれど片岡は違う。それだけ歩の事を意識的に気に掛けて見守ってくれている証だろう。

片岡といると不思議なくらい苦しい気持ちがなくなっていく。甘やかされて、絆されていく自分を感じていた。

自分は片岡と恋ができるだろうか。

微かな期待を胸に抱いて、片岡の腕の中でそっと息を吐き出した。











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3月13日(日)HARU COMIC CITYでお会いできましたら、嬉しいです!!
ザ49b「とおる亭」

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