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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

嫉妬2

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嫉妬2

皆の前で告白され、困った顔をする歩の姿が目に浮かぶ。

歩の大丈夫は信用できない。目測を見誤る歩に翻弄されたのは過去の話でも、賢介の心にはまだ不安の種が根深く残っている。

彼はフった相手だと言うけれど、現にこうやって街で出くわしてデートを申し込まれているあたり、本当にきっぱり断ったのか疑わしい。

根が優しいから、当たり障りなく言ってかわしたのではないだろうか。

上手く逃げたつもりでも、そう思っているのは本人だけ、という可能性がある。

歩が女の子に興味がないのはわかっている。盗られる心配をしているわけじゃない。単に自分の恋人に手を出されたのが気に入らないだけ。それを歩にあれこれ理由をつけて当たっている。歩が悪いわけじゃない。それはわかっている。

しかしもう少し警戒心を持ってほしい。器用ではないのに何でも受け身だから、隙が生まれるのだ。

「賢介、怒ってる?」

「怒ってるわけじゃないよ。」

怒っていはいない。それは本当。

「賢介、ごめん・・・もう、隠し事しないから・・・」

そう言って項垂れる歩に、今まで何度も白旗を上げてきた。

「お願い・・・怒らないで・・・」

結局自分も中途半端なのだ。思っているまま全てを吐露してしまったら、歩はその独占欲に戸惑うだろう。わかっているから追い詰め方は緩くなる。

まだ賢介自身も自分の独占欲と上手く向き合えていないのだ。

「歩、俺もごめん・・・」

自分が笑って気にも留めなければ、今日は二人で楽しい休日を過ごせたはずだった。その意味も込めて、早々に賢介の方も折れる。

「・・・もう、怒ってない?」

「うん・・・」

最初から怒っているわけではない。気持ちの整理がつかなくてモヤモヤしているだけだ。けれど心配そうに見上げてくる瞳に負けて頷いた。

心底ホッとした顔で歩が擦り寄ってくる。こういう現金なところも好き。まずい事をしてしまったと顔に出てしまうところも、争い事が嫌いですぐに根を上げてくるところも。

一緒に暮らし始めて、好きな気持ちは毎日降り積もっていく。人を好きになる気持ちに際限はないのだ、と思ってみたり。

「歩、隠し事しないでね?」

自分も大概しつこい。耳にタコができるほど同じ事を聞かされているはずの歩は、真剣に頷き返してくる。兎に角、今の歩は賢介の機嫌を損ねたくなくて必死。その単純明快な思考回路が可愛くて堪らない。

先に惚れたのも、好きの気持ちが大きいのも自分。その思いに囚われて抜け出せないのは、自分の狭量さの所為だ。

もう少し器の大きい人間になりたい。

仲直りのキスをしながら、自分の独占欲を苦々しく思った。














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