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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

嫉妬3

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嫉妬3

片岡が大学の学食へ行ってみたいと言うので、今日は彼が来る。午前中の講義をソワソワしながら聞いた後、急いで待ち合わせをした学食の入口へ向かった。

彼のことだから校内で迷ったりはしないだろう。すぐに片岡の姿を入口で見つけて駆け寄る。

「走ってきたの?」

駆け寄ってきた自分を嬉しそうな目で見るから、やはり急いで来て良かったなと思う。

片岡が目尻を下げて穏やかに微笑む顔が好き。自分だけに向けてくれるものだとわかっているからなおさらだ。

「賢介、何食べるか決めた?」

「俺は日替わり定食にしようかな。今日、唐揚げみたいだよ。」

「あ、ホントだ。じゃあ俺もそうする。」

朝も夜も二人で自炊している。ちゃんとご飯を食べることは、家を出るにあたって親と交わした約束事の一つだ。

自炊していると、お互いの好みもわかってくる。好き嫌いが幸いにも似ていて、献立にはさほど苦労していない。

唐揚げは二人の好物。けれど揚げ物は片付けが大変だから家では作らない。出来立てを口にできるのは学食だけだから、定食に揚げ物がついている時はどうしても食いついてしまう。

「歩、今日はテニスないの?」

「授業はないけど、ちょっと打っていく?」

「できるの?」

「うん。空いてる時間、申請すればいつでもできるよ。」

「ゆるいね。」

「そう。ユルユル。」

二人で笑い合って学食の中へ足を踏み入れる。休憩時間だからすでに学生でごった返していた。

「やっぱりうちの大学とは雰囲気違うな。」

「そりゃね。色んな意味で凄いでしょ?」

「ホント。」

片岡の目がモヒカン頭の学生から離れない。歩が全身黒タイツの集団を指差すと、片岡が呆気にとられた顔をした。

食券を買って二人で並んでいると、前方に三島の姿が見える。片岡と一緒にいるのがバレたら、後で揶揄われそうだなと人の影に隠れていたが、残念ながら目敏い彼に見つかってしまった。

「歩、何コソコソしてんだよ。あぁ、そういうこと。」

瞬時に歩の状態を理解したらしい三島は手をひらひらと振ってきて、すぐに前方へと向き直る。頭の回転が良いのも、ある意味考えものだ。邪魔をする気はなさそうだが、次に会えば必ず突いてくるだろう。

「歩、誰?」

片岡が訝しげに尋ねてくるので、誤解させてはいけないと、ただの先輩だと強調する。

「同じ学科の先輩。ほら、いつも話してる紳助さん。」

「へぇ・・・。」

慌てて断言したのが裏目に出たのか、片岡を纏う空気が微妙な雲行きになっていく。

「仲良さそうだね。」

「うん、まぁ・・・。」

片岡をまた不安にさせたらどうしよう、ということばかりが頭を回り始める。しかし三島の隣りに目をやると、視界に恵一の姿が入ってきた。

「ほら、あの隣りに立ってる子。わかる?」

小声で賢介の気を引いて、恵一を指差す。

「紳助さんの恋人。綺麗な子でしょ? 俺の一個下なんだ。」

「恋人・・・。」

「そう。」

片岡が興味を示して恵一を眺めている。やがて納得したのか、気不味そうに謝ってくる。

「・・・ごめん、歩。」

「こっちこそ、ごめん。賢介が疑ってるかも、って思ったらテンパっちゃって・・・。」

二人で苦笑いしながら、順番が回ってきたので食券をおばさんに渡す。

疑い深い恋人を嫌だと思ったことはない。だって嫉妬してくれているということだ。好きだからこその嫉妬であって、賢介の想いが今も間違えなく自分のもとにあると確信できる瞬間でもある。

片岡が自分以外の誰かと親しくしていたら不安な気持ちになる。結局お互い様ということだ。

「賢介、後で見せたいものがあるんだ。いい?」

「作品?」

「うん。」

初めて上出来だと思える模型を作ることができた。いつか一緒にこんな家に住めたら、という願いも込めてある。

「大学入ってから、なかなか作品見せてくれないよね。」

「見せられるほどの出来じゃなくて・・・。でも今回はね、上手くいったから見て。」

「もちろん。」

せっかく好きな人に見せるのなら、納得いくクオリティのものを見せたい。人としてプライドもある。

「いただきます。」

二人で好物の唐揚げでお腹を満たしていく。お腹が空いていると碌なことがない。やましい事もないのに慌てて失敗ばかりしてしまう。

美味しそうにご飯を頬張る賢介を目の前に見ながら、歩も箸を進める。

やっぱり恋人には上機嫌でいてほしい。歩は心からそう思った。














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