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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

幸せを呼ぶ花8

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幸せを呼ぶ花8

喧騒の中をぬって、奥の座席に案内される。座席ごとに高い壁で仕切られているので半個室のような席だった。

「ちょっと意外です。」

「ここ?」

「はい。勝田さんもこういうところ来るんですね。」

花屋の閉店後、皐は勝田を伴って近所の居酒屋へ来ていた。なんだかこの人と居酒屋がイメージとして全く結びつかないのだが、彼が何の迷いもなく店に入ったので驚いた。

「まぁ、雰囲気合わないって言われるけどね。入るよ、普通に。だってサラリーマンだもん。」

そういえば、自分はこの人が一体どんな仕事をしているのかも知らない。好意がありながら、知っていることなどないに等しかった。

店員が注文を取りに来たので、勝田は皐の意向など全く聞くことなく注文していく。手慣れているなとも思ったし、人の上に立って物事を進めていくことに抵抗がない人なんだな、と漠然と思う。

「灰皿はいる?」

「いえ、俺は使いません。」

「そう」

勝田がテーブルに灰皿を置こうとした店員に軽く首を振る。全ての動作がスマートで、テーブルに頬杖を付いた姿さえ様になる人だなと見惚れた。

どこか浮世から離れてしまったような近付き難さがある。掴み所もなく、飄々としている。年上だからそう思うのか、この人元来の雰囲気がそうさせるのか。恐らく後者だろう。未だかつて、こういう人種に巡り合った事がない。

「とりあえず、乾杯しようか。」

「はい」

「乾杯」

大ジョッキを片手にぶつけ合ったので派手に音が鳴った。あえて大ジョッキを選ぶということは、飲める口なのだと思うけれど、それもまたイメージと違う。結構豪快な人だとわかって可笑しかった。

「今日、何で誘って下さったんですか?」

「何となく。」

そうだろうと思っていたので、ガッカリはしなかった。

「恋人とか、いらっしゃらないんですか?」

「うん。独身だしフリーだよ。せっかくの休日に、君と会ってるくらいだからね。」

薄っすら赤い頬をして覗き込んでくる目にドキリとする。意味深な視線に一瞬誘われているのかと勘違いしそうになる。

「なんか、勝田さんって危ない人だな。」

「そう? よく言われるけどね。」

「よく言われるんですか? あの・・・何のお仕事されてるんですか?」

「質問攻めだね。」

だってこの人を知りたいからここにいる。あわよくば、とも思っているのだから。

「食品会社の営業。別に職業は危なくないよ。」

「営業か・・・」

「今は子守だけどね。」

「子守?」

「まぁ、こっちの話。」

こんな年下の自分も話しやすいほどノリは良い人なのに、どうにも捉えどころがなく、掴もうとすると指先からスルリと抜けていく。

「手、荒れてるね。痛くない?」

無造作にテーブルへと投げ出していた手を、勝田の綺麗な指先が触れてくる。

「水を使う仕事なので、どうしても・・・。クリーム塗っても、すぐ落ちちゃいますし。」

「でも、楽しそうに仕事してるよね。」

「楽しいですよ。好きで選んだ仕事なので。」

頷きながらも冷静ではいられなかった。勝田の触れた先から熱くなっていくようで、緊張してしまう。

自分で思う以上に、この人に惚れている。それを自覚させられて動揺した。

「ねぇ、香月くん。君はさ、俺のことが好き?」

「・・・。」

確かに好きだからこうやって馳せ参じているわけだけど、思いもよらない唐突な問いに固まるしかなかった。

「やめておきなよ、こんなおじさん。」

「・・・好きでいるのも・・・ダメですか?」

「それは君の勝手だけど。」

どうでもいい、と言われているような気がして、心に影が落ちる。しかし一方で、意地でもこの人を振り向かせたくなった。

「次・・・また会う約束、させてください。」

世間話にでも興じているように、淡々とビールを口へ運んでいる勝田に、必死で訴えた。するとジッと見定めるようにこちらを見た勝田が不意に微笑んだ。

「今夜は添い寝でも頼もうかな。」

こちらの要望には触れずに、唐突な言葉を返される。勝田のビールはすでに空だった。実は酒に弱くて酔っている、ということなのか。しかしその考えを見透かしたように否定の言葉が返ってくる。

「俺ね、潰れたことはないよ。飲み出すと家に帰るのが面倒だから、泊めてってこと。」

そう言ったきり、また澄ました顔でおかわりを店員に頼み始める。

もしかして、自分はとても厄介な人を好きになったのかもしれない。ようやくその考えに行き着いて、豪快にビールを飲み干していく勝田を複雑な気分で見た。













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いつも閲覧いただきまして、ありがとうございます。
今夜は時間がなくて下書きだけで断念。
いつかペン入れしたいです。。。
ツールの種類があり過ぎて、何を使ったら良いのか全くわからず(笑)
昨日に引き続き、沢田家の二人です。

 
 
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