思いもよらぬ約束をして、勝田の連絡先すら聞いていない自分に愕然とする。完全に向こうのペースに嵌っていたわけだ。彼の掌の上で転がされている。けれどそれでも構わなかった。
「大丈夫なのかよ、その人。」
「変な人ではないよ・・・たぶん・・・」
「相変わらず、ぼんやりしてるな、おまえ。でも花以外の事に興味あるなんて、珍しいじゃん。」
「でしょ?」
「自分で言うなよ。」
親友の大友(おおとも)は自分の数少ない理解者であり、元恋人だ。しかし元恋人といっても深刻なものでもなんでもなく、高校時代の若気の至り。性への興味が先行しての関係だから、今となっては笑い話だった。
同じ高校に通い、部活で仲良くなって、たまたま二人とも恋愛対象が男だったというだけだ。思春期で精神的に複雑怪奇な年頃、マイノリティーだからと鬱屈することがなかったのはこの親友のおかげだ。
二人が選んだ部活は華道部。小さい頃から華道に慣れ親しんでいた大友と違い、自分は花好きが高じた結果だった。けれど花屋を営む今となっては、お客さんとの話も弾むし、日本の美意識を学んだことは自分の糧となっている。
「香月。もしかして、好きとか?」
「うん。好き・・・なんだと思う。」
「薬指は?」
「指輪は付けてなかった。」
身を乗り出して聞いてくる大友は心配しているのだ。二十代の前半、既婚者ばかりに惚れて泣きを見てきた自分を知っている。結果が見えているのに付き合って、悉く惨敗し、恋に疲れてしまったことも。
人を好きになることは楽しいことのはず。けれどそれだけではない沢山の裏を見て、自分は成長したと思う。苦い思い出であったとしても、必要な時間だったのだと自分に言い聞かせている。
しかしそもそもの問題として、勝田が自分と同類という確証はない。ないけれど、男を相手にできない男を好きになったことはない。自分のアンテナの感度は信用している。勝田を初めて見た時から、男に抱かれるタイプの男だと確信していた。
「頑張るわけ?」
「うん」
「そっか。まぁ、振られたら慰めてやるよ。」
「うん」
笑い合って大友に頷く。大友とは恋愛感情がなくとも、身体の関係は切れていない。ある意味、歴代の恋人たちより身体を重ねた回数が多い。互いに、恋人がいない間の繋ぎという感覚すらなく、高校時代の延長なのだ。
普通ならとっくに生涯の相方にでもなっていそうなものだ。しかし何故かそうはならないで今日まできている。大友とは親友という立場がベストポジションなのだ。それは向こうも同じらしい。極端な話、恋愛をするという意味で好みではないということだ。
「ところで今日・・・寄ってくのか?」
自分たちにとっては何てことない会話。抱きたい気持ちと、抱かれたい気持ちのタイミングさえ合えば、いつでも寝る。
好きな人がいると話したそばから他の男を抱くのもどうかと思う倫理観が全くないわけではない。けれど溜まるものは溜まるし、要らない鬱憤を溜め込みたくはない。
「もう、出ようか。」
席を立ち、勘定は皐が済ませた。話を聞いてくれたお礼だ。そしてバーを切り上げ、二人で大友が住むマンションへと向かった。
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いつも閲覧いただきまして、ありがとうございます。
久々に(かれこれ10年は描いておらず・・・)
ラクガキをしましたが、身体のバランスが取れなくて大汗です。。。
文字置いて、ごまかすという荒業(笑)
しかも画像表示が妙に大きい!!
pixcel数の問題??
苦手分野ですが、勉強して参ります。。。
イラストを描きたいなぁ、と思って学生時代に買ったペンタブを引っ張り出したところ、
うんともすんとも言わず。。。
お亡くなりになっていたので、
新しいものを買いました。
描き心地が凄く良くなってて驚きです。
そして画力が相当落ちた自分にも驚きです(笑)
皆様、お目汚しを失礼致します。
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朝霧とおる