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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

幸せを呼ぶ花18

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幸せを呼ぶ花18

週末だから期待していたのだけれど、もうさすがにこの時刻では来ないだろうと諦めかけた時だった。

眼下で足音がして暗闇へ目を向けると、勝田の姿があった。しかし佇んだままマンションへは入って来ようとしない。そして迷っている彼に業を煮やして、結局彼が答えを出す前に声を掛けてしまった。

「お言葉に甘えて、来ちゃった。」

「もう終電出ちゃいましたよね。泊まっていって下さい。」

「愚痴をね、聞いて欲しくて。」

「聞きますよ。」

「朝早いんじゃないの?」

「土日は市場閉まってて、仕入れはありませんから。開店に間に合えばいいので、そんなに早くありませんよ。」

勝田の顔は少し疲れて見える。お酒の匂いはしないから、残業だったのかもしれない。日付もとっくに変わった頃やって来たのだ。疲れていて当然だろう。

「ご飯、食べました?」

「うん、会社でね。」

「余計なお世話かもしれないですけど、ちゃんと食べて下さいね。」

そう言うと、勝田がクスッと小さく笑った。

「ここ十年くらい、そんな事誰にも言われてないね。なんか、新鮮。」

「心配なんです。ただでさえ、少食に見えるし。」

「そう? まぁ、君みたいにもう若くないから沢山は食べないけど、ご飯はちゃんと食べるよ。」

「ホントですか?」

「信用ないね。俺が食べないと、部下が遠慮して食べられなくなっちゃうからね。だから少なくとも会社ではちゃんと食べてるよ。」

ちょっと拗ねたような顔をする姿が、何だか茶目っ気があって面白い。けれど勝田はどこまでが素で、どこからが猫被りなのかが非常にわかりずらい。彼に心安らげる時はあるんだろうか。

「話は明日にします? それとも今話します?」

「寝ようかな。香月くんの顔見たら、眠くなってきた。」

それは安心して肩の力が抜けたから、という意味だろうか。そうであったら良いのに、と密かに願う。

「添い寝して。」

「・・・いいですよ。」

簡単に言ってくれる。こっちは抱きたい衝動を堪えるのに必死だというのに。けれどこの前と違って幾分心の準備ができていたから、困り果てるほど苦ではなかった。しかも勝田は目に見えて疲れている。そんな人間を襲うほど、愚かではない。

「お湯張るから少し待ってて下さい。」

「シャワーだけでいいよ。」

「ダメです。ちゃんと身体温めて下さい。」

「過保護だなぁ。」

文句を垂れつつ満更でもなさそうな表情に一安心する。皐は一旦抜いてしまった湯船の栓を再び付けるため、バスルームへと直行した。
















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