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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

幸せを呼ぶ花13

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幸せを呼ぶ花13

あの年は桜満開の入学式だった。真新しいランドセルを背負い、全てが希望に満ち溢れていた日、勝田凌(りょう)と斎藤蓮(さいとうれん)は同じ教室で出逢った。

クラスが一緒だったのは最初の二年だけ。けれど家が近くて学校の登下校や放課後もいつも一緒だった。

他愛もないことでたくさん喧嘩もした。二人とも活発な方だったから、時には殴り合いの喧嘩だってした。

蓮は運動が得意で特に足が速かった。サッカー少年で、小学校四年生の時に彼から誘われて同じサッカー部に入った。ずば抜けた足の速さでグラウンドを駆け回る彼の姿に魅入って、彼のようになれたらと何度も思った。

彼がエースとなって自分は補欠でも、部活を辞めようと思った事は一度もない。彼の背中を近くで見ているだけで、自分は誇らしかったのだ。

学区が同じだったから中学もそのまま持ち上がり。クラスが同じになることはなかったが、一緒に帰る習慣が変わることはなかった。

変わっていったのは自分が先か、彼が先だったのか。

中学に入って周りの男子たちが話す生々しい話に、自分は快く混じる事ができなかった。上っ面だけは女性の身体に興味があるフリをしていたけれど、内心では拒絶だけが渦巻いていた。

自分の性的嗜好が他の人と違うことに気付き、戸惑い、そして自分を肯定できなくなった時、親友を見る目が変わっていった。

蓮を好きなんだと自覚するまで、そう時間はかからなかった。想い耽っては下半身が反応する。凄く自分が汚いモノのように思えて、蓮の目を見ることも怖くなった。

親友のポジションであることに違和感と絶望感が増していく中、二人に転機が訪れた。

自分がクラスメイトの女の子に告白された帰り道、その話を聞き付けた蓮はとても機嫌が悪かった。自分たちの運命の歯車が動き出したあの日ことは、今でも鮮明に覚えている。

「付き合うの?」

「付き合わないよ。」

「フったの?」

「うん。」

即答した自分に複雑な表情を浮かべた蓮。ごめんね、とだけ伝えた女の子の顔はもう覚えていない。

シロツメクサの生い茂る土手を二人とぼとぼと歩く道。転げ回って無邪気な話に興じていられた頃とは、二人を纏う空気が違った。

何も知らないで、純粋に好きでいられた頃には戻れない。戻れるものなら戻りたい。そして永遠に時を止めてしまえたら良いとさえ思った。

「俺ね、嫉妬した。」

「嫉妬?」

「凌に告白してきた女子に。」

最初聞き間違えかと思ったけれど、蓮の瞳は真っ直ぐ自分へと向けられたまま、逸らされることはなかった。

「取られたくなかった。」

夕陽を背に立ってしまった蓮の顔は見えなかったけれど、彼の声はいつもの快活なトーンとは違った。どこか大人びて、何かを振り切ろうと覚悟した声。

「俺ね・・・凌が好き。」

時が止まったように息をするのも忘れて、蓮と見つめ合った。生き方は無限にあるのに、二人の望んだ未来が交わった奇跡を決して忘れることはできない。

手を引かれ不器用に重なった唇は、少し苦く埃っぽかった。













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