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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

大掃除3

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大掃除3

隣りに気配がないと思いながら、皐は瞼をゆっくりと開ける。昨日は真っ昼間から夕方、そして就寝前に勝田と睦み合って、この腕に抱いて眠ったはずだったのだが、素っ気ない恋人に小さく肩を落とす。

勝田を余計な事で悩ませたくないから、皐は触れ合えることで十分幸せだと、繰り返し口にして伝えてきた。しかし皐の言葉にホッと安堵の顔を浮かべたと思ったら、いつの間にかまた渋い顔をしていたりするから油断ならない。繊細で気難しい恋人だけど、面倒だと思ったことはない。もっと甘えて気を許してくれればいいのにと思うだけだ。

早く気まぐれな恋人のもとへ行こうと、散らばっている服を身に着ける。気配のするダイニングへ向かうと、頬杖をついて、飾ってある花を見つめていた。

「凌さん、おはようございます。」

どうしてそばで待っていてくれなかったのかという抗議の声は封印して、背後から抱き締める。

「おはよう。君にしては珍しくお寝坊さんだね。」

勝田の機嫌はすこぶる良さそうだ。その事が何よりも嬉しくて、つられるように皐も気分が浮上する。

「今年の仕事が終わって、気が抜けたみたいです。」

「もっと寝てればいいのに。まだ眠そうな顔してる。」

「イヤですよ。凌さん、起きてるのに。」

背後から勝田の首筋に唇を寄せる。そんな皐の仕草に、くすぐったそうにしながら温かい目で見守っているだけなのが、機嫌のいい証だ。

「ご飯作りますね。」

「今日くらい手伝おうかな。」

「じゃあ・・・おせち料理の下ごしらえとかどうです? 人参の型抜きでもお願いしようかな。あと・・・鍋の見張り。」

「それは重要な仕事だね。この前柔らかくなり過ぎちゃったから。」

皐は軽く首を横へ振って、微笑みながら否定する。

「朝はお粥にしましょう。卵入りの。」

夜遅い日が続くと翌朝は食欲がないと言って、目の前の恋人は食べ渋る。一日の活力には朝ご飯こそ重要だというのに、当初は拒むことも少なくなかったので、どうにか食べさせようとして辿り着いた答えの一つだ。

「昨日取った出汁があるから、それも入れて作りますね。」

「美味しそう。」

予定を気にせずのんびり二人で過ごせるのは、年に数えるほどしかない。けれど貴重だからこそ感じる有難みだとも言えるだろう。

「ねぇ、凌さん。夜、除夜の鐘、聴きに行きませんか?」

「そうだね・・・行こうか。煩悩が本当に百八個か確認しようかな。」

「俺は百八個以上ありそう。でも・・・消えなくていいや。」

勝田への想いがいっぱい詰まっているであろう煩悩を、打ち消そうとは思わない。呆れられながら、受け止めてもらえばいいのだ。甘えてほしいから、まず自分も心を開け放って甘える。少しずつ勝田がこの腕に寄り掛かってきて、肩の力を抜いてくれることも多くなったと思う。嬉しい変化だ。

二人分の熱で温もりを増していた背中から、皐は身体を離す。彼の胃に満足してもらえるものを作って、頼りがいのある男だと思ってもらわなくては。

「ちょっと、待っててくださいね。」

「うん。」

キッチンに向かった皐の背中を、勝田の視線が追いかけてくる。その視線を心地良く感じながら、皐は胸をいっぱいにして調理に取り掛かった。








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今年一年、大変お世話になりました。
本当にありがとうございます。
続けられるのは、皆さまの応援あってこそです!!
感謝、感謝の一年でした。
皆さまから、またエネルギーをいただきつつ、来年も頑張っていきたいと思います。
良いお年をお過ごしください。


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