キッチンの流し台は背丈が合わず腰にくる。慣れないことをするものではないと思いつつ、ただの役立たずで終わってしまうことはもっと悲しい。
自分は香月の手伝いも、営みの相手も十分に出来ているとは思えない。年を確実に重ね、同時に融通の利かない心と身体になっているのは疑いようがなかった。
「ねぇ、凌さん。いい?」
それでも香月は欲しいと言ってくれる。期待に応えたいとは思うのに、ついていかない身体が悲しい。繋がるのはムリそうだと伝えるために口を開きかけると、香月が気遣うように腰を擦ってくる。
「また少し、痛めました?」
「・・・うん・・・ごめん。」
こんな風に謝罪の言葉を口にしたくなるのは香月だけだ。どちらかというと好戦的な自分は、最後の最後まで折れることができない。勝田を軟化させるのは香月だけだ。それが良い傾向だと認めざるを得ないのは、一人で生きていくと決めていた以前より、心穏やかにいられる自分が好きだと思えるからだ。
「凌さんが謝る必要なんてないでしょう?」
察してくれるから、甘えてしまう。むしろ香月は甘えるように仕向けてくるから、年下の彼に頼りきりの状況に戸惑いつつも、結局その心地良さに自分は負ける。
「君が・・・好きだなぁ。」
「ホント? 嬉しい、です。」
激情に振り回されボロボロになりながら追い縋るものが恋だと思っていた。若くない自分には、もう関係のない心の現象だと。
優しい時間を教えてくれた香月に、今のままの自分でいいと時間をかけて諭してくれた彼に、少しでも報いたいと思うじゃないか。貰ってばかりいて、何も返すことができていない。けれど嬉しそうな顔で香月が見下ろしてくるから、返すことができないまま自分は甘え続けるのだ。
「皐も、疲れてるでしょ? 休みなのに、君ってば掃除なんてするんだもん。」
「でも、綺麗にしてお正月迎えたいし。すっきりしたでしょ?」
「そうだね。」
香月の穏やかな声に誘われて、彼の髪に手を伸ばす。するりと香月の手が重なって、頬の熱さに勝田は一瞬驚いた。昂ってくれている。ただ見つめ合って、手を取っているだけで。些細な事にどれほど胸が高鳴るか、目の前の彼はわかっているだろうか。
伝わっていたらいい。なかなか素直に嬉しい気持ちを伝えられないことが問題ではあるけれど。
「皐・・・」
「ッ!」
手足がもげそうなほど身体中が痛くなったら困るけど、香月の焦った顔が見たいという欲求の方が勝る。香月の前を膨らませている元凶に勝田は手を伸ばして煽るようにさする。
「りょ、凌さん。ま、待って、そんなにもたないから・・・」
息を呑んで眉を顰めるわりに、香月は勝田の伸ばした手を払おうとはしなかった。そして困ったように勝田の手を見つめている。
先に達したくない時、香月はやんわりとこちらを制止してくる。だから口では制しながらも、本心はそこにないということだろう。
勝田は調子付けられ、ファスナーを降ろして飛び出してきた硬茎を手で包んだ。
「ッ・・・ホン、ト・・・出ちゃう・・・」
「出していいよ。ずっとお預けしてたもんね。」
唇を噛んで堪える顔がたまらない。
漲る彼の硬茎は確かに今にもはち切れそうな勢いで、勝田の手の中で熱を伝えてくる。
勝田が手で擦るたびに、香月の息が上がっていく。目を合わせて微笑んでいると、香月の額に汗が浮かんできた。
「あ、凌さん・・・く、る・・・」
「気持ちいい?」
「ん・・・」
小さく幾度か頷いた後に目を瞑って天を仰ぐと、香月の口が薄っすら開いて震えた。
「はぁ、ッ、ん・・・ん・・・くぅ・・・」
手の中で香月が波打った瞬間、温かい飛沫が上がる。
「あ、すご・・・いい・・・。もっと・・・もっとして、凌さん。」
香月が冷静さを欠くのは珍しいなと思いつつ、それが嬉しい。我慢させていたのは申し訳ないけれど、時々こんな顔をさせたい。意地の悪い本来の自分が芽を出して、勝田はつい口元を緩めた。
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朝霧とおる