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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

沢田家の双子「9月3日07:00」

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沢田家の双子「9月3日07:00」

和希は普段自分よりずっと大人なのに、肌を合わせると人が変わったように自分を貪る。そんな豹変を喜んでいる自分は、本来必要な頭のネジが数本抜けているのかもしれない。昨夜も途中から意識が飛んだらしく、気が付いたら布団に横たわって朝を迎えていた。昨夜自分を蹂躙していた和希は、まだ隣りで夢の中だ。

「和希」

呼んでも起きる気配はない。頬をつねっても叩いても穏やかな寝息を立てているので、今朝はどうやら狸寝入りではなさそうだった。

昨夜、和希が果てた瞬間を知らない。どうもその前に意識が飛んだらしい。爆睡するほど全力で抱くってどんな感じなんだろう。抱かれる事に満足しているから、それに関しては永久に知る手段がない。

「かーずーきー」

夜の営みでは主導権はいつも和希にある。本人は否定するけど、一度始めるとしつこいし激しい。優希が泣いても止めてくれない。それすらも嬉しいと思うのだから、自分も相当重症だ。

「んッ・・・」

和希の瞼がぴくりと動いた瞬間を逃さず、和希の身体を揺すって起こしにかかった。

「和希、朝だよ。あーさー。」

「・・・ん?」

薄く開いた目はどこか虚ろで、状況を察していそうにはない。

「和希、起きて。朝ご飯食べに行こうよ。」

「ん? 朝ご飯・・・?」

「そう、朝ご飯!」

「・・・あぁ、朝ご飯ね・・・」

和希は布団の中で伸びをして、ようやく焦点の合った目で優希の方を見る。

「今、何時?」

「七時半。よく寝れた?」

「うん。ぐっすり。」

「スッキリしたから?」

「そんな恨めしい顔して言うなよ。優希だって気持ち良かっただろ?」

「盛り過ぎ。」

「・・・悪かった。頼むから朝から拗ねるなよ・・・。」

こういう馬鹿みたいな会話ができることが幸せだと思う。そっぽを向いて拗ねたフリを続けていると、和希が少し強引に手を引っ張ってきて、気が付けば彼の腕の中に収まっていた。

「ごめん、って・・・。」

覗き込んでこちらの様子を窺ってくる。何だか悪い事をした気分になってきて、和希の厚い胸板に抱きついた。

「・・・怒ってないよ。」

「ホント?」

「うん。」

一度和希の腕の中に抱き寄せられると、離れがたい。胸いっぱいに彼の香りを吸い込んで渋々身体を起こそうとすると、背に回された腕の力が強くなる。和希も離れがたいと思ってくれたんだろうか。

「優希」

「ん?」

「ずっと一緒にいてくれる?」

「・・・うん。」

「おじいちゃんになっても?」

「うん。」

「先に死にたくないな。」

「・・・どうして?」

「だって優希は寂しがり屋だから。一人ぼっちにさせたくない。」

「うん。先に死なないで。ずっと泣いてるかも。」

「そこはさ、大丈夫だよ、って言ってくれないと。ホント、心配だな・・・」

先の事なんて、誰にもわからない。けれど、ずっと一緒に生きていこうと決意して言葉にしてくれる事が何よりも嬉しかった。
「和希」

「うん?」

「ずっと一緒。」

「うん。」

手を握り合って、触れるだけの優しいキスをする。朝の明るい陽を浴びて、気の済むまで口付けを繰り返した。









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これにて、「沢田家の双子」終了となります。
長い間、お付き合い、ありがとうございました。

さて、次回作品の予告を、
本日11月6日18時にさせていただき、
11月7日0時より新連載に入る所存です。

「沢田家の双子」いかがだったでしょうか。
みなさまの心に、何か残ってくれれば嬉しいな、と思いつつ。。。

優希と和希がぽつんと座り込んで、線香花火をやるシーン。
私自身はあのシーンをカタチにしたいがために、沢田家を書きました。

優希以外は正直みんな大人過ぎちゃって、
こんな高校生いないよね!と各キャラクターたちに突っ込みつつ、
いや、でもBLは一種のファンタジーなんだし!と開き直り、
書き終えました。

また次回作でもお付き合いいただけたら幸いです。

それではまた、本日18時に。

管理人:朝霧とおる
 

 
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