正月明け一発目の仕事はインフルエンザ患者の対応に追われた。今日は外来のみの仕事だったので重篤な患者の対応はなかったが、仕事終えた時は予定終了時刻を大幅に過ぎていた。それでも好きで選んだ小児科医の仕事。どんなに疲弊しても後悔はない。
優希は夜間スタッフへの引き継ぎを終えて、大学病院を出た。気分が浮き足立っているのは和希が家で待っていてくれるから。和希は七日から仕事だから、それまでの間、彼の時間は全て優希のものだ。そう思うだけで仕事の疲れも吹き飛ぶなんて、自分は相当現金だ。
和希はイタリアンレストランのシェフとしてはもうすでに若手から脱出し、シェフとして責任ある立場で忙しい。季節ごとの新作メニューに参戦することもあるし、料理長と共にメインも振舞う。彼の時間を独占できるのはお正月くらいなのだ。夏休みは合わせることが難しく、事実上一緒に過ごせる時間はないに等しい。
「ただいま。」
おかえり、とリビングの方で声がする。2LDKの間取りで、互いに物持ちではないので空間は広々としている。リビングのドアを開けるとテーブルにはスケッチブックが広がっていた。
「仕事してたの?」
「うん、少しだけな。」
新作メニューの考案をしていたようだが優希の顔を見るとスケッチブックを閉じて、和希はすぐにキッチンへと向かう。
「お正月は重いものが多かったから、今日は野菜スープにしたよ。」
和希はオンオフの切り替えが上手い。構ってくれないとすぐに拗ねる優希の性格も良く分かっている。どちらが兄なのかわからないな、と時々優希自身も思ったりする。
「いい匂い。」
「すぐ食べるか?」
「うん。」
玄関で脱いだコートを部屋に片付けに行き、すぐにテーブルへつく。そして目の前に差し出された器を嬉々として受け取った。
「今日はもう仕事はなしだからね?」
念を押すように優希が言えば、和希が笑い始める。激務をこなしてきたご褒美を強請って何が悪いと口を尖らせて抗議すれば、立ち上がって背後に回り込んだ和希が甘く囁く。
「早く食べて、お風呂入って、ゆっくりしよう?明日は優希も休みでしょ?」
和希は優しい。優し過ぎるから、自分は溶かされて翻弄されて訳がわからなくなる。身体が火照ったのは熱いスープを飲んだ所為ではない。身体が甘い時間を思い出したからだ。
「和希、食べずらいよ・・・。」
口先だけの小さな抵抗は、優しい口付けに呑み込まれた。
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