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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

沢田家の双子「1月3日07:00」

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沢田家の双子「1月3日07:00」

 慣れた温もりに安堵して、視界に入ってきた部屋を見て焦る。ここは実家で、優希と二人で暮らすアパートではない。二日連続でベッドに忍び込んできた寂しがりやの双子の兄が愛おしく思う一方で頭を抱えたくなる。

 両親に二人の関係を話す前に見咎められるような事態になるのはいただけない。スマートフォンで時刻を確認すると朝七時過ぎ。一階から物音がするから母はすでに起きているようだ。

 慌てて優希を揺すり起こす。半分夢の中にいるような瞳が和希を見て抱き付いてこようとするから、可哀想だが引き剥がした。一瞬ショックを受けたような表情をしたが、辺りを見回して苦笑いをする。ようやく頭が覚醒して、実家にいる事実に思い至ったらしい。

 「ごめん、和希。」

 「いや・・・うん。」

 昨夜二人で話し合い、今日アパートへ戻るタイミングで両親に告げることにした。怖くないと言ったら嘘になる。

 優希の頰を両手で包み込んで触れるだけの優しいキスをする。優希の顔が少し強張ったので、彼も明かすことに少なからず不安を抱いているということだろう。

 「二人で乗り越えよう。」

 「うん。」

 黒く艶やかな優希の髪を手で梳いて、自分より小さな身体を抱き寄せると庇護欲をそそられる。
 一緒にこの世に生を受けて、同じだけの時を刻んできた。離れがたいのに一度は距離を置き、そして再び共に歩んできた。心も身体も重ねて繋ぎ、何度も何度も互いを確かめた。どんな事があっても、もう離せない。それを両親に伝える術を考えながら、和希は優希の柔らかい唇にもう一度キスをした。



 


 「あんたたち、今日何時頃帰るの?」

お雑煮の出汁の香りがキッチンから程よい加減で漂ってくる。たっぷり睡眠を取った後の朝は、心地良くお腹が減るものだ。腹の虫が威勢良く鳴り始めたところで、お椀がテーブルへ並べられる。

 「昼食べて少ししたら出るよ。」

 「そう。」

 「出る前にちょっと話したいことがあるんだけど、いい?」

 「何よ改まっちゃって。何の話?」

 優希の不安げな視線が絡まって、それを振り切るように無理やり微笑み返した。

 「俺と優希の事でちょっと。」

 父さんが新聞から目を上げて三人にちらりと視線を送り、そのまま新聞へと目を戻す。

 「何なの、気になるじゃない。」

 「家出る前に話すよ。」

 優希が間髪入れずに話を打ち切る。その声が少し震えた事に、朝食の準備に気を取られていた母は気づかなかったようだが、父はもう一度ちらりとこちらを見遣った。




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