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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

沢田家の双子「近すぎて遠すぎて8」

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沢田家の双子「近すぎて遠すぎて8」

恋人同士、二人で家の中に籠って話をすることに、何の魅力も感じない自分は薄情だろうか。今野の話を聞く度に溜息が出そうになるのをなんとか堪え、適当な相槌を繰り返す。

優希と話をする時は、自分が一方的に口を開いているが、彼は楽しそうに聞いてくれる。しかしそれは勝手な思い込みで、もしかしたら楽しいフリをしていただけかもしれないと思い至ると、目の前の今野ではなく、そちらが心配になってくる。

昨日まで家にいるような話だったのに、今朝足早に出掛けてしまったことが少し気になる。ここ最近感じる優希を纏う微かな違和感の正体を掴めないまま、喉に何かがつかえたような感覚が拭えない。

つい先日、今野と遭遇して背を向けて去ってしまった優希。そして今日も今野が来ると聞いて、取って付けたように先輩の家へ行くと言い出した。

恋人たちの時間を邪魔しないようにという配慮なのだろうか。何か少し違う気がしても、何故そう思うのかが自分でもわからない。

「ねぇ、かずくん。どう?」

もう少し深く掘り下げて考えたいと思ったところで、今野の声で思考の深海から呼び戻される。

「悪い、聞いてなかった。」

「もう! お正月、初詣一緒に行かない?」

「ああ、うん。別にいいけど・・・。」

「やったぁ! すっごい楽しみ!」

はしゃぐ今野を尻目に、心の底から面倒だなと思う自分がいる。今は優希のことが気になって頭から離れないのだ。

優希にも好きな人がいたりするんだろうか。そういえば、優希とそういう話をしたことがなかった。優希はどんな子が好きなんだろうか。同じように物静かなタイプの子なのか、それとも逆に天真爛漫な溌剌した子だろうか。考え始めたら急に今すぐにでも聞いてみたくなった。

自分はと言えば、付き合えば好きになったりするものだと聞いて、今野で早三人目。未だに好きというレベルまで気持ちが到達したことはない。恋人という言葉の響きに新鮮さを感じていただけなのだと今更気付く。

何事にも慎重な優希なら、こんな馬鹿なことはしない気がした。好きになって、好かれて、大事にしそうだ。こんな適当な気持ちで女の子と付き合う自分の胸の内を知ったら、軽蔑されてしまいそうだ。そしてそれを自分は恐れていると知る。

嬉しそうに浮き立つ今野を横目に別れる事を決意する。中途半端な気持ちでダラダラ付き合い続けたら、それこそ傷付けるだろう。しかし別れを切り出すのは、次の約束をした手前タイミングが悪過ぎる。興味本位だけで付き合うもんじゃないなと、和希は自分のいい加減さを呪いたくなった。










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