*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。
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和希に追随し、結局優希もインフルエンザの脅威の前に倒れ、丸一週間、沢田家の双子はインフルエンザの猛威に晒される羽目になった。母には呆れられたが、優希本人は実に満たされた気分で寝込んだ。
「優希、具合は?」
先に和希の方が治り、優希も今日から登校できる。和希の問いかけに、大丈夫と答えてベッドから起き上がった。
「きょう、かずきといく。」
「行きだけじゃなくて、帰りも一緒に帰りたい。」
そっと抱き締められて、好きだと言ってもらえたのが夢ではないことを改めて知る。嬉しくて和希に擦り寄った。
「優希、なんだか猫みたい。」
「かわいい?」
頭一つ高い和希を見上げて問う。笑われても呆れられてもいいから、甘えたかった。
「可愛い、って言われて嬉しいの?」
「かずきがいうのは、うれしい・・・。」
今の自分なら、バカだと言われても嬉しいだろう。それくらいのぼせ上がっているし、浮かれてもいる。和希は若干呆れ顔で優希の頬を引っ張ってくる。こういう他愛ないことが嬉しいのだと、和希はわかっているだろうか。
「ほら、支度して、朝ごはん食べて行こう。」
寒空の下、しがみ付いて乗る自転車にもう切なさは感じない。その温もりを胸いっぱいに吸い込んで、心ごと満たされていく自分を感じた。
放課後、図書室で大内の顔を見て、浮かれ気分が急速に冷めていくのを感じたが、事の顛末を話したら苦笑されただけだった。むしろこれからが綱渡りだよ、と諭される。
「まぁ、それはいいとして・・・。俺と寝たことで揉めたりするなよ。」
大内につられて優希も苦笑いをする。その事を忘れていたわけではないが、少々頭が痛いのも事実だ。
「ほんとうのこと、いったほうがいいかな・・・。」
「優希の思うようにしなよ。本当のことを言えば良いってものでもない気はするけどさ。弟くんとしては知らない方が良いかもよ?」
でも任せるよ、と大内の手が頭を軽く撫でていく。この手に抱かれて安堵した日があったことを、この先も忘れることはないだろう。和希に抱く激流のような熱情とは違う、穏やかな好意。和希という存在がいなかったら、この人を好きになることもあったのかなと頭の片隅で思う。口には出さない。大内もそれをわかってくれているような気がした。
「キスはしなくて良かっただろ?」
茶化すように言ってくれる大内に優しさを有り難く受け取る。
「俺も頑張ろうかな。」
大内がどんな恋をしていて、誰を想っているのか、詳しい事を話してくれないからわからない。けれどその恋が実ってくれるといいなと少し寂しそうな横顔を見て思わずにはいられなかった。
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