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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

沢田家の双子「近すぎて遠すぎて18」

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沢田家の双子「近すぎて遠すぎて18」

身体が昨夜から怠い。寝れば良くなるだろうという甘い算段を裏切るように、今朝から頭痛と咳が加わった。以前ならこんな時、すぐに優希が心配してくれたのに、などと情けないことを思う。黙々と隣りで朝食を食べていたと思ったら、さっさと席を立って行ってしまった。

「あんた、具合でも悪いの?」

「ああ、ちょっと。今日、部活は休むよ。」

「学校から帰ったら、病院行ってきなさい。熱は?」

「いや、熱はない、と思う・・・。」

本当は計っていないのでわからないが、感覚からいって、恐らく微熱くらいはあるだろう。しかし倒れそうなほどではないので、これから仕事へ向かう母に迷惑をかけたくない。

「診察券と保険証、どこに置いてたっけ?」

「リビングの引き出しに纏めて入ってるわよ。お財布の中、入れておきなさい。帰りに神谷先生のところ行ってきなさいよ。」

「そうする。」

神谷医院は子どもの頃からお世話になっているかかりつけの診療所だ。今は亡くなってしまっていないけれど、あそこの元院長先生のことを優希は好きだったな、と思い出す。今はその息子夫婦が診療所を継いでいる。しかし懐かしさに浸れるような精神状態でもなく、重い身体に鞭を打って席を立った。





 

 

あともう少ししたら授業も終わる。そう思ってホッとしかけたら、全身から力が抜けそうになって、辛うじて足を踏ん張った。

相当熱が上がっている。朝の時点で見込み違いをした自分が恨めしい。今日は無理せず休むべきだった。乗ってきた自転車に乗るのも危なそうなので、優希に頼んで自転車は持って帰ってもらおうと重い頭で考える。優希と不穏な時に限って、と頭を抱えつつ、そうするより他なさそうだった。

ホームルームが終わってすぐ、隣りの席のクラスメイトに頼んで、優希を呼んできてもらう。自分の足で行けないほどではなかったけれど、自分が行くと逃げられそうな気がしたから頼むことにした。案の定、優希は和希のクラスまでやってきたが、和希の様子を見た途端、心配そうに顔を覗き込んできた。

自分が思う以上に具合の悪い顔をしているのかもしれない。自分のことを心配してくれるのだと思ったら、堪らない気持ちになる。

「優希、悪い・・・。自転車持って帰ってくれる?これ、鍵。」

鍵を渡そうとすると、優希が驚いた顔をして何度も掠れた声で一緒に帰ると言い張るので、戸惑いながらも甘えることにした。

自転車の後ろに乗るのは初めてだった。身体の大きな自分を乗せて漕ぐなんて大変だろうなと思ってしまったけれど、必死な顔をして漕ぐ姿は思いの外凛々しい。優希も男だしな、と今更なことを思う。優希を籠の鳥にしていたのは和希で、その檻が窮屈になってしまったのかもしれない。

「優希、ごめん・・・。」

小さな和希の声は駆け抜ける風の音で消されてしまい、優希の耳に届くことはなかった。













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