あの和希が狼狽していた。自分の双子の兄が男と関係を持っていることに心底困惑していた。それが普通の反応で、和希の答えということだろう。
同性が好きだなんて軽蔑しただろうか。此の期に及んで、嫌われたらイヤだなと思う馬鹿な自分。そういう風に仕向けたのは自分だ。
大内に昨夜の内にメールで伝えておいたら、噂になっていたこと自体は彼も知っていたらしい。優希のいいようにしなよ、とまで言ってくれて、つくづく人がいいなと思ってしまう。けれど自分で事態を収拾することなどできないし、放っておけばその内噂することにも飽きるだろう。大内の好意に甘えることにした。
「昼休みに弟くんが俺のところに来たよ。」
ギョッとして大内を見上げれば、彼は苦笑した。
「優希の誘導に乗せられて、俺と付き合ってるって思い込んでる。まぁ、俺も発破掛けるような事、言っちゃったんだけどな。」
大内と優希が結託して口裏を合わせてしまえば、それが嘘だと見抜くのは至難の技だろう。他に真実を確認する術がないのだから。
「でも・・・本当にあれで良かったのか?」
和希を想っていることは隠し通すにしても、あえて付き合っているふりをする必要があったのかどうかは、冷静になってみると自分でもよくわからなかった。けれどその事で心がささくれ立つことはなく、むしろ諦めがつき、腹を括ることができた。
大内の掌に今日何度目かのごめんなさいを指で書く。すると、謝る必要なんてないんだよ、と言って優しく頭を撫でてくれた。
「普通こういう状況だと絆されて俺を好きになりそうなもんだけどね。でも優希に関してはそうならない確信があったから、慰めてもいいかなって気になったんだよ。」
抱いてくれた時、大内はその理由を多くは語らなかった。大内が自分に向ける好意は恋とは違う確信があった。抱かれた時、そう感じたのだ。
「お互い好きな人が別にいるから、関係を持っても穏やかでいられるんだよ。どっちかが本気になったら、修羅場だろうね。優希の事を可愛いって思ってる。こんな弟がいたらいいな、って。だから傷付いているのを見るのは辛い。慰めてあげられるなら、そうしてあげたい。」
大内の言葉を聞いて妙に納得する。彼がゲイだと知ってから心に抱いていた仲間意識は、自分の見当違いではなかったのだ。
身体と心は別物。想いが報われないなら、せめて身体だけでも思ってしまうのは、熱を放出して満たされるようにできている男の性だから仕方がない。
「この関係に溺れるのは良くないと思うけど、どうしても我慢できなかったら、おいで。優希は危なっかしい。」
前にも同じ様なことを言われた気がする。そんなに頼りないのだろうか。しかし振り返ってみれば醜態しか晒していない。
「弟くんに、ちょっと優越感だな。こんな可愛い優希を知らないなんて、勿体ないな、って。」
ちょっと意地悪な笑みを浮かべて笑う大内に、優希も吹き出して笑う。久々に肩の力を抜いて笑えた気がした。
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いつも閲覧いただきまして、
ありがとうございます!!
激務がカムバックして、
少々干からびている朝霧です。
沢田家の微修正を終えたので、
全話アップロードの予約をしている最中でございます。
私が途中でくたばっても、最終話までお届けできますので、
ご安心を(笑)
我儘で甘ったれな優希くん。
私はこういう面倒な受けが大好物です。
書くのも読むのも好きだったりします。
しかし、高校生、疲れる・・・(笑)
やはりアラサーの私に高校生は無理があります。
沢田家の本編が終わった暁には、
リーマンものの短編を投下したいと思います。
オチも決めておらず書き始めましたが、
恋に臆病な大人を書ければなぁ、と。
寒暖の差が激しい季節に突入しました。
みなさま、体調にはお気をつけてお過ごしくださいませ。
管理人:朝霧とおる
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