*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。
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自分の問いに答えることなく席を立ってしまった優希を、呆然と見送る。触れられたくない話ということは、気まずい事実があるということだ。関係を肯定されたも同じだと気付く。
優希が同性相手に恋愛感情を持つなんて知らなかった。他の事はすぐ顔に出るからわかりやすいのに、自分はその事に関してノーマークで、サインを見落としていたのだろう。
優希の一番近くにいたのは自分だと思っていたのに、今は別の誰か・・・大内が優希の一番近くにいる。そう思い至ると無性に腹が立った。心底耐えられないほどの怒りが湧いてきて、自分の中に奪い返したい衝動があることに気付く。
「俺・・・変だ・・・。」
兄弟なんて、いつかバラバラになる。それぞれに家庭を持って独立すればそうなるのが自然だ。けれどその普通に来るはずの未来に憤りを感じている自分は何だろう。そして大内に嫉妬している自分は、まるで優希に恋をしているようではないか。
その事実に愕然としつつ、当然の想いだと納得してしまう自分がいる。
好きだから盗られたくない。好きだから一緒にいたい。好きだから笑っていてほしい・・・。
最近心を閉ざしていた優希に寂しさを感じ、大内と一緒にいる事実に心ざわめき落ち着かなかった。好きだからと認めてしまえば、これまで不明確だった自分の気持ちを簡単に説明できる。
けれど今更そんな事に気付いてもどうしようもない。優希は大内が好きで、大内も優希が好きなら、二人は相思相愛。どう考えても邪魔者は自分だ。
近過ぎて、気付けなかった。ずっと居てくれるものだと、どこか楽観的に構えていたのだ。優希から離れていくことなどないと、自惚れてもいた。だって、ずっと後ろをついてきてくれていたから・・・。
もう甘えて縋り付いてくる幼子はいない。いつの間にか巣立って、籠の鳥ではなくなっていた。優希は自分の知らない世界をずっと前から見ていたのかもしれない。
失くしたものの大きさを知って、和希はただ呆然とした。
昨夜は結局、正確な真偽を知る事ができなかったから、悶々とした夜を過ごす羽目になった。せめて本当に付き合っているのかどうか、ということだけでも知りたかった。優希本人に問いただすのは憚られて、結局昼休みに大内の教室へと足を運ぶ。和希が顔を見せても、さして驚くこともなく、大内は平然としていた。人気のないところまで連れ出したところで、こちらが口火を切る前に大内の方から問われる。
「昨日、優希に確かめたんだって?」
そう言って苦笑されると居た堪れなくなる。話が筒抜けなのも面白くなかった。
「遊びなら、やめてください。」
「随分な言い草だな。真剣だよ?いくら君が弟でも、とやかく言われる筋合いはないと思うんだけど。」
「本気・・・なんですか?」
「当たり前だろ。」
「ッ・・・。」
「そういう言動が優希を傷付ける、ってことがわからないのか?」
「そんなつもりは・・・。」
「傷付けたら、いくら兄弟でも許さないから。」
口調は穏やかだったが、大内は明らかに怒っていた。そしてその怒りは明確に和希へと向けられている。
「話はそれだけ?」
和希は何も言えないまま黙り込んでいると、大内は教室の方へさっさと歩き出してしまう。引き留めように掛ける言葉も見当たらなくて、結局後味だけが悪かった。
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