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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

沢田家の双子「近すぎて遠すぎて11」

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沢田家の双子「近すぎて遠すぎて11」

初めて呼び出しなるものを受けたら、和希の彼女の今野だった。正確に言えば、その取り巻きらしき友人付きでもある。

「ねぇ、優希くん。優希くんってさ、いつもかずくんと登下校してるよね?」

和希と一緒に登下校したいから、自分が邪魔なんだなとすぐに合点がいく。先を言わせたくなくて、メモ帳を取り出し書き込んで渡す。

《今野さんと帰るように言っておく》

パッと顔が華やいだ今野を苦々しい気持ちで見る。

もう和希の背中すら見つめることができない。あの片道五分、往復十分の道程は、和希と自分を繋いでくれる、かけがえのない時間だったのに。

満足気に去っていった今野たちを見送って、歯を食い縛る。もう泣かないと決めたばかりなのに、また泣きそうになる。深呼吸を繰り返して込み上げてきたものを何度も呑み込む。始業のチャイムで我に返り、ようやく教室へと戻った。



 

 

顔を見て伝える気力はなかったので、和希にはメールを送った。大内に愚痴る話が増えてしまったな、と送信完了画面を見ながら溜息をつく。でも前までと違うのは、隠し続ける苦しみを抱えなくて済むことだった。それだけでも優希にとっては進歩。自分の気持ちをわかってくれる人がいる心強さが、優希の気持ちを落ち着かせた。

それからというもの、優希は大内と過ごす事が多くなった。学校では学年が違うので図書委員の仕事が被った時くらいだったが、放課後や休日を共にした。

大内は外に多くの交友関係を持っていて、彼の友人の中には同性の幼馴染を好きになって苦しんでいる者もいた。悩んでいるのは自分だけではない。

視野が広まったことで、自分で自分を責めることがなくなった。幸せになりたいのは皆同じ。けれどこの世には叶わない願いがたくさんある。それは誰の所為でもないのだと知った。心が軽くなると自虐的だった思考が、まだ見ぬ未来へと向かい始める。叶えられるものを自分の力で見つけていくしかない。

自分の殻を突き破るのは怖いけれど、そろそろ決意しなければいけない時期まできたのだと感じるようになった。










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