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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

沢田家の双子「近すぎて遠すぎて1」

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沢田家の双子「近すぎて遠すぎて1」

身を裂くような寒さが堪える師走。二人で一つの自転車に跨り、坂道を下っていく。学校から自転車で片道五分の道程は短いけれど、優希にとっては絶対に失いたくない時間だ。

和希の背中に身を委ねて、ほんの僅かな至福の時に浸る。温かく広い背中が大好きで、嫌な事があっても、これさえあればホッとできた。

和希には彼女がいる。小柄で可愛くて、短いスカートの中から細い足がすらっと伸びた同級生の女の子。付き合いたいと言われて付き合い始めたらしい。

中学時代までは告白されても断っていたのに、高校に入って以降、告白してくれた女の子とすでに二人付き合っている。今の子で三人目だ。異性に興味を持つ年頃で、それが普通の反応だろう。でも長続きしないところをみると、その子が好きというよりも、何となく興味を持って付き合ってみるだけのようだ。和希が女の子より優希を優先することが多いから、それを理解できない女の子たちは間もなく去っていく。だから今の子だって一緒だろう。一緒だと信じたかった。

前に座ってペダルを漕ぐ和希に腕を回してしがみ付く。急な坂道を振り落とされたくないから。スピードが出ている中で重心がずれたら危ないから・・・。色んな言い訳をしながら、和希にしがみ付く理由を探す。

二卵性双生児の優希と和希は似ても似つかない。身長は和希の方が一回り大きく長身で、バスケットで鍛えている身体は筋肉質だ。精悍な顔付きは多くの女の子の心を射止めるくらい整っている。

一方で優希は小柄で細身。今でこそ落ち着いたが、中性的な顔はからかわれる原因になることも多かった。

兄は優希で、弟が和希だったが、子どもの頃からお兄さんらしかったのは和希だ。ちょっとやんちゃだけれど、面倒見も良くて優しい。力も強くて、からかいの対象になりやすい優希を守ってくれた。精神的にもタフで努力家。優希にとって、本当に自慢の片割れ。そして同時に想いを寄せる相手だ。

どうして和希なのか。何故好きなのか。その起源をどこに求めて良いのかわからないほど、自然に、当たり前のように好きになっていた。好きになって、絶望して、それでもやっぱり好きな気持ちは膨れていく。いつかこの想いが弾けてしまわないか、この頃怖くて堪らない。

この想いが晒されてしまったら、和希は何を思うんだろう。今までのように優しく接してくれるだろうか。自分たちは距離の取り方がわからなくなって、仲良しの双子ではなくなるのだろうか。決して埋まらない溝を作って、もう戻れなくなるかもしれない。

だから言わないことにしている。どんなに辛くても、この距離を壊したくない。誰にも割って入ることのできない、双子という殻から自分たちを出さないために、今日も優希は好きという言葉を呑み込む。

白壁の建物に、小さな庭。沢田と表札の掛かる家の前で、今日も二人を乗せた自転車は止まった。

和希から身体を離すことを名残惜しく思う。離れた先から抱きつきたくなった。

冬空の下、生乾きの洗濯物を横目に家の中へと入る。

叶わないことを知っていても尚、優希はこの場所で二人の時を永遠に刻み続けられることを願う。けれど先ほどまで感じていた和希の温もりはすでに消えていた。









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