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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

宮小路社長と永井さん『アクアリウム』9

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宮小路社長と永井さん『アクアリウム』9

バックミラー越しに鎌田と目が合う。胡散臭そうに宮小路を一瞥し、青信号に変わると車を発進させる。

「何が、おやすみなさい、だ。仕事相手に言う台詞じゃないぞ。」

「盗み聞きなんて悪趣味だ。」

「同じ車内に閉じこもってて、聞くなっていう方が無理あるだろ。別に聞きたいわけじゃない。」

言わせた感は否めないが、少し遠慮がちな就寝の挨拶は恋の昂揚感を運んでくれる。興奮で眠れなくなるかもしれないと一人勝手に盛り上がって妙な心配をするのも、なんだか楽しくて仕方がない。再生ボタンをタッチして耳を当てると、彼との会話が耳元でリピートされる。

「宮小路、何やってんだ?」

「声掛けないでくれ。今、彼の声を堪能中なんだ。」

「はぁ?」

携帯電話を構えながら話すそぶりを見せなければ、当然不審に思うだろう。意中の相手と交わした言葉を録音していたわけだが、執着具合に若干の異常性があることは自覚している。

「宮小路、頼むから警察の世話にはなるなよ。」

「個人的に楽しんでるだけだ。本人には言わない。」

「当たり前だ。」

都内にある高層マンションのロビーわきに鎌田が車を滑り込ませる。宮小路は名残惜しい気分で一旦携帯電話を閉じ、急かされる前に車から降りる。

「バカなことやってないで、寝ろよ。」

「失敗して彼に失望されたら目も当てられないからな。有り難く忠告は聞くよ。」

「ある意味ブレてなくて、おまえらしいけど。」

好きな人ができた時、鎌田に隠し事はしない。送り迎えをしてくれる彼にはいずれバレるし、鎌田の助言がトラブル回避に一番貢献をしてくれていると経験則でわかっているからだ。

「じゃあな、宮小路。朝は七時に来る。」

「わかった。よろしく頼む。お疲れ。」

「お疲れさん。」

十年以上変わらず支えてくれる鎌田に、感謝しかない。プライベートな案件でも散々迷惑をかけているが、愚痴を言いつつ、フォローはマメにしてくれる兄貴分だ。

コンシェルジュのいる受付を通り、オートロックを解除してマンション内に入る。エレベータに鍵をかざすと自分の居住階で止まる仕組みになっており、住民同士の付き合いは一切ない。

ワンフロアに一室しかないため、エレベータに乗ってしまうと気が抜ける。いつもなら少し寂しい気分で部屋へ帰り着くのだが、明日の楽しみを前に頬が緩む。

電子錠を再びかざして自室の玄関扉を開けると、一人で住まうには広過ぎる大理石の玄関が出迎えてくれる。

ただいまを言ってくれる同居人がいてくれればと妄想を膨らませる一方で、恋人を部屋に上げたことはなかった。

信用とは口だけで、結局鎌田が指摘するように、内心では宮小路も歴代の恋人たちの問題点に気付いていた。恋人ではなく財布だと言われてしまうだけの理由はある。彼らを招き入れず、私生活を晒せなかったことは一つの解なのだ。

「もういい加減、呆れてるんだろうな……。」

鎌田が珍しく口煩くない。溜息を漏らしつつ黙って見守るのは、諭しにいくだけ無駄だと思われているのか、今回ばかりは見込みがあると算段を立てたのか、宮小路にはわからない。

宮小路は永井から受け取った名刺を早速取り出して眺める。シャンパン片手に乾杯したい気分に駆られたが、その昂揚感をぶつけるのは明日の楽しみとしてとっておくことにした。

ソファは大人の男が二人寝転んでも余りある。しかし心許せる相手を連れ込めないのなら、この広さは寂しさを助長するだけだ。

甘い疼きと、寂寥感に呑み込まれないよう、ソファへ身体を沈めることなくネクタイを緩めながらバスルームへ向かう。

手早く衣服を脱ぎ去ると、まとわりつく湿気から解放された。しかしそれは一瞬のことで、外気の暑さで溜め込んだ汗の匂いが立ち上ってくる。

どうせなら、誰かを掻き抱いて汗を滴らせるくらい充実したプライベートなら文句はないのだが、現実はそんなに甘くない。

警戒心が強そうな永井の顔を思い出しながら、シャワーのコックを捻る。腕が鳴ると意気込んでいられる間は楽しいだろうが、鎌田が危惧する通りこの目に狂いがあると再び残念な結末を迎えるだろう。

「まぁ、一目惚れなんてそんなもんだ……。」

細かいことを心配したところで、蓋を開けてみなければわからない。少しぬるめのお湯を頭上から浴びると、張り付いていた汗と疲れがするする落ちていく。

主人の陽気な気分を察知したらしい分身が、足の重心を移動させると上下に撓って揺れた。

「ステイ。まだ、おまえの出番じゃない。」

つい心の声を口にしてしまうのは、独り暮らしが長いことからくる弊害だろう。他人が聞いていたら、さぞかし奇妙な光景に違いない。

「まったく……。」

一度血流が良くなり熱が集まると、鎮めるのは至難の技だ。赤黒く漲ってしまった自身の竿に、美しい永井の肌を重ねるさまを想像したら、ついに亀頭が天を向く。

目先の欲求と罪悪感を天秤にかけたものの、臨戦状態で我慢は難しい。彼を直接汚すわけではないのだからと言い訳をして、自身の熱情を握る。

顔と声が脳内に甦ってくるだけで、特別なことは何もいらない。想像の中で、ごく自然に永井の着衣を剥ぎ取って、彼の白い手を誘う。瞑った目の奥で光が散った。

「はぁ……はぁ……」

久しぶりに味わうなかなか刺激的な絶頂に、支える下肢が微かに震える。情けないくらい早漏なのは長い間構わなかった所為だと言い訳をした。妄想にまでケチをつけて禁欲的に自分を戒める必要性は感じない。うっかり実行に移そうなどと馬鹿な結論に至ったこともないし、本人を前に動じる性分でもない。

下肢の熱を出してすっきりすると、思いのほか身体が軽くなる。シャワーを終えて寝室へ向かう頃には鼻唄すらこぼれて、いい夢が見られそうだとキングサイズのベッドへ飛び込んだ。









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スーパーダーリンになるはずが、書き始めるとどうしてもスーパーアホダーリンになってしまう。。。
そんな宮小路ですが、ちゃんとバリバリお仕事するところも見せていけた、ら。。。

暑さもこれからが本番というところですが、もうすでにバテ気味です。
今年の夏はまとまった休みを取らず、仕事三昧の予定なので、もう今から意識が遠退きそう。。。
しかし!頑張っているのは自分だけではない!!と言い聞かせて、チョコミントアイスをコンスタントに胃に投入しつつ、こちらも通常運転を目指したいと思います。

こちらのお話、長期戦になりそうですが、温かい目で見守っていただけたら幸いです。


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