個室にあるお風呂は露天で、一緒に入れば大変な目に遭う事を、その時になるまで恵一はわかっていなかったらしい。
「ぁ・・・紳助・・・」
「ほら、恵一。あんまり声出すと、隣りに聞こえるぞ。」
触れたら我慢せず、声を上げさせる事を教え込んだのは自分。恵一は情事に抑えるという事に慣れていない。
「も、やだ・・・しん、すけ・・・」
「嫌だっていう反応じゃないよな、ここ。」
勃ち上がるそこを指で弾けば、恵一が身体を震わせる。どこをどう見たって、もっと欲しいという顔。
しかし火照った頬を見て、のぼせてしまうとマズイなと思い直す。
「じゃあ、続きはベッドな。」
紳助の提案に必死な形相で恵一が頷く。あまりの必死さにうっかり笑いそうになる。
「恵一」
「・・・ん?」
「可愛いね、おまえ。」
「ッ・・・」
絶句してそっぽを向いてしまった恵一の顎をすくい取る。紳助は何事もなかったように啄むような口付けを与えていく。
抱え上げて、肌に浮かぶ湯の玉を拭ってベッドへ横たえると、恐る恐る窺うような仕草でようやく恵一がこちらへ向き直ってくれた。
「可愛い、っていうのが不服?」
「だって・・・」
「好きなヤツを可愛いと思うのは当たり前だと思うけどね。」
「・・・。」
グルグルと迷い始めた恵一が愛おしい。
また、そんなものかと思うようになればいいのだ。自分が与えるもの全てを疑う事なく受け入れていけばいい。そうすれば恵一の身も心も正真正銘、自分のものだ。
「恵一」
組み敷いた下から恵一が見上げてくる。
確かな意図を持って紳助が再び触れ始めると、露天風呂にいた時とは違い、躊躇うことなく甘い声を上げる。
「あ・・・ん・・・あぁ・・・」
腰に響く声が紳助を煽って、愛し方も深くなっていく。
物欲しそうに震える硬茎の先端を唇で食めば泣きそうな声を上げる。けれど抵抗するようなことはなく、恵一は素直に快感を受け止めていた。
「・・・んッ・・・あ、あぁ・・・はぁ・・・」
恥じらいながら気持ち良さそうにする恵一は堪らなく可愛い。限界が近付いてきたのか、恵一を見遣ると何度も目が合う。
放出を促すように幾度か強めに吸い上げてやると、焦ったように身体を捻って、困ったように顔を顰める。
「ん、ん・・・や、あぁ・・・で、る・・・ん、すけッ・・・」
恵一の身体を蹂躙したい気持ちより、このまま彼の痴態を見たい欲が勝った。
宥めるように恵一の手を握って、唇で強く上下に擦っていく。
「ぁ、イくッ・・・ッ、あぁぁ・・・んッ、ん・・・」
達する瞬間をしっかりこの目に焼き付けようと見上げると、恍惚とした表情を浮かべて震えていた。
やっぱり最高に可愛い恋人。
彼が口に放った精をそのまま手に取って、繋がる部分を解していく。
早く恵一の中に入りたい。一つになって難しい事を考えてしまう恵一と自分の頭を休めたい。
「しん、すけ・・・」
「うん?」
「も、ほし、い・・・」
思い掛けず強請られて、気分がいい。けれど急げばそれだけ恵一の身体に負担を掛ける。
「しんッ、す、け・・・ね?」
恵一の言葉に煽られて、下半身に熱が集まる。そしてさらに追い立てるように恵一は紳助の分身に手を伸ばしてきた。
「恵一。おまえが傷付くような事はしない。もう少し我慢な?」
「ん・・・もう、ちょっと?」
「そう、ちょっと。」
早く繋がりたくて堪えているのはこちらも同じ。好きだから繋がりたいけれど、好きだから大事にしたい。それはわかってほしい。
たとえ追い込まれて自分の気持ちが振り切れそうな事がこの先あったとしても、そこだけは変わりたくない。
「きもち・・・ん・・・やぁ・・・」
奥を突くと強請るように締め付けてくる。ここまでくれば、もう大丈夫だろう。
「恵一、力抜いて。」
「ふぅ・・・ん・・・ッ」
怖がったりしないように、傷付けたりしないように、初めてした時はとにかく恵一の事を考えて理性的に抱いた。繋がる瞬間はいつもそうありたいのだが、最近溢れ出る愛しさに衝動的になる事が多くなった気がする。
こんなに全身で求められたら理性の糸も切れてしまう。
「くるし、い・・・」
挿れるはずのないところで繋がっているのだから、それは苦しいだろう。けれど満足そうに腹部を確かめる恵一に、脳が徐々に焼けていく。
「いい、よ? ね、きて・・・」
収まった分身が馴染むまでには、まだ時間が必要だったけれど、痛がる素振りはない。大丈夫だろうと思って、ゆっくりと恵一を揺する。
蕩けた顔をして見上げてくる恵一に煽られっぱなしだ。我慢のきかなくなっていく身体をどうにか誤魔化しながら、ゆっくり優しく抱いていく。
「んッ・・・そこ・・・もっと、して・・・」
欲しがるままに紳助は硬い分身を送り込む。こんな風に強請ってくれるようになったのはつい最近だ。
「・・・あ、まって・・・ッ・・・」
「待たないよ。」
行き過ぎた快感が身体を痺れさせたらしい。大きく身体を震わせて、暴れようとする。
「あ・・・あぁ・・・ッ・・・んぅ・・・」
しつこく同じところを攻め立てると、啜り泣いてしがみ付いてきた。
「ダメッ・・・や・・・あ・・・」
欲しいと強請ったのは恵一の方だ。だから今日は嫌だと泣いても離す気はない。
「イ、く・・・ん・・・んッ・・・あ、もう・・・」
与えられる強い快感に何も考えられなくなったらしい。羞恥心の殻が取れて、紳助の抽送に合わせて腰を揺らめかせる。
「・・・ん、すけ・・・ッ・・・」
「イけよ、ほら。」
紳助が強く突き上げたと同時に二人の合間で擦れていた恵一の分身が蜜を散らせる。
「あぁッ・・・あ・・・ん・・・」
「・・・ッ」
恵一が達した瞬間に紳助も絞り取られて極まる。
何度味わっても最高の瞬間。一瞬何もかもが消える。頭が空っぽになって、全てから解放される。
「恵一」
「ん・・・」
呼んで唇を重ねる。満足そうに微笑んでくるので、早く撤収して正解だったと微笑み返す。
「紳助」
「うん?」
「もうちょっとだけ・・・いてほしかったな・・・。」
「大学?」
「うん・・・。」
歳が離れていて、紳助が先に勉強を終えたのだから、卒業はどうしたって避けられない。
「紳助は、先に大人になるんだね・・・」
「そうだな。」
「どんどん・・・離れちゃう・・・」
涙声で視線を逸らした恵一を抱き締めて宥める。
「離れないだろ?」
「一緒にいる?」
「おまえが逃げたりしなきゃ、ずっと一緒だよ。」
「うん・・・」
「逃げんなよ。」
「逃げない。」
不安なら口にしろと言った効果だろうか。嬉しそうな笑みを浮かべながら泣く恵一は、ちゃんと幸せそうで安心する。
いつもなら恵一が寝落ちするまで抱いてしまうことも多いけれど、今日はそうしなかった。
二人で手を握り合って、啄むような口付けをして、少し先の未来を話す。寂しさより嬉しさの勝った顔をした恵一に、紳助は心の底からホッとした。
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朝霧とおる