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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

この手を取るなら35

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この手を取るなら35

いつもより形振り構わず乱れる恵一が愛おしい。恵一の心を自分へと縛った責任はちゃんと取るつもりだ。一生この手から離さない。

恵一は紳助を大人だと事あるごとに言ってくる。けれど実際の歳の差なんてものは二つばかりで、紳助だってまだ大人にはなり切れていない。

自分だって、本当は不安だ。恵一を繋ぎ止めていられるだけの自分でいられるか常に試されている気がする。

人より幾分か恵まれたハードとメンタルがあるにしたって、万能ではない。一人の人間であり、弱いところだってある。

「恵一」

「あ・・・あッ・・・ん・・・」

呼ぶと恵一が嬉しそうにする。眉を顰めて喘いでいたって、気配で彼が喜んでいることがわかる。そしてそんな自分に優越感をおぼえるのだ。

こんな風に恵一が弱い部分を曝け出して全てを捧げる相手は自分しかいない。この独占欲を満たしてくれるこれ以上にない特権が紳助をいつだって昂らせた。

「・・・あッ・・・お、く・・・」

紳助の先端の膨らみが、恵一の奥を突いて抉る。恵一はこれが好きだ。もっと奥へ誘い込もうと中が紳助を刺激してきて、眩暈がしそうなほどの快感を与えてくる。

「・・・ん、すけ・・・ッ・・・あ・・・」

「ッ・・・ん?」

「もっ、と・・・んッ・・・」

強請られて煽られないわけがない。恵一とのセックスはただ気持ちが良いだけではない。相手の身体を喰い尽くすように求め合って、満ち足りた気分と切なさが交互に襲ってくる、他の誰とも経験したことのない感覚。

「恵一」

「んッ・・・あ・・・あぁ・・・」

目尻に涙の雫を溜めて、揺れる視界で必死に紳助へと焦点を合わせようとしている。呼ばれるままに身体が嬉しそうに応えてきた。

「あ・・・ダメッ・・・あぁ・・・あッ・・・」

駄目だと口にしながら、極まるために走り出した身体を紳助に捧げてくる。恵一のダメは、駄目ではない。中途半端にせず、もっとくれという合図だ。

恵一の腰を抱え上げて、二人で熱を追い掛けようとした時だった。

部屋に鳴り響いた着信音に初めは無視を決め込んでいたが、いつまで経っても鳴り止まない音に、さすがに手を止める。

ベッドサイドで鳴っていたのは恵一のスマートフォンだった。忌々しく見つめて切ってやろうと手にしたが、表示されていた名前に気が変わる。恵一に差し出すと涙目で睨んできたが、彼も表示された名前を見て首を傾げて、不安げに電話の向こうへ応えた。

「・・・父さん?」

「・・・。」

「・・・うん。うん・・・そ、う・・・。でも・・・父さん、仕事は?」

ボソボソとだけ電話のやり取りが漏れ聞こえてくる。内容まではわからなかったが、あちらの第一声で恵一の顔と声に緊張が走ったので、すぐに良くない報せだと察しがついた。

恵一をあまり刺激しないよう、そっと身体の向きを変えて、紳助も身体をベッドへ横たえて、事の成り行きを見守る。

「父さんは、仕事抜けられるタイミングで来て。俺、先に荷物持って病院行くよ。うん・・・うん、わかった。うん、また後で。」

病院。倒れたのは母親の方かなと考えが至って、紳助はすぐに身体を起こした。電話口ではしっかり応対していたくせに、通話を切ったきり呆然としていた恵一の身体も引き起こした。

「行くんだろ、病院。」

「う、うん・・・。」

「容態は?」

「・・・意識はあるって・・・」

一瞬ヒヤリとしたが、内心ホッとする。紳助が身支度する様を相変わらず眺めているだけの恵一を見遣って、迷わず抱き上げてシャワールームへ押し込む。

頭から熱い湯を掛けてやると、ようやく彼は焦ったように動き始めた。















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