瀬戸のハイペースな飲みっぷりに気付いていながら止めなかったのは、こういう展開を心のどこかで密かに望んでいたからに他ならない。
好きになると囲ってみたくなる。込み上げてくる衝動に負けてしまった結果がここにあった。手を出したりしなければ、この気持ちがバレなければ大丈夫だと言い訳をして、少しずつ詰め寄っていく。瀬戸が強く拒めない立場だとわかった上での所業だから、自分でも性質が悪いと思いながら眠る瀬戸の顔を眺める。
「何やってんだろうなぁ、俺。また連れてきちゃったし・・・。」
ソファへ腰を降ろして間もなく、瀬戸は眠ってしまった。普段は警戒心の塊なのに、予想に反して無防備な顔で寝るものだ。
シャツのボタンを一番上だけ開けてやり、すぐに手を引っ込める。これ以上触れたら止められない気がした。けれど肌に纏わりつくほど濡れている服を着せたままというのは、瀬戸の体調に差し障るだろうし、ソファも濡れてしまう。
気を確かにと自分に言い聞かせながら、坂口は瀬戸のズボンとシャツだけ剥がし取って、下着姿になった瀬戸の身体をタオルケットで包み隠した。
アルコールをセーブして良かった。ネジが一つでも緩めば、なし崩しに理性は崩壊しただろう。
「風呂、入ってこよう・・・。」
名残惜しい気分で立ち上がり、ソファで静かな寝息を立てる瀬戸に背を向ける。抱き締めてみたい、眠っている今はチャンスかもしれないという悪魔の囁きと闘う。一度も振り返らず洗面所へ収まると、身体が大きな鉛を抱えたように重く感じた。
洗濯機に瀬戸の服を投げ入れて、坂口も服を脱ぎ捨てていく。じわじわ上がっていく体温には気付いていたが、熱を帯びて緩く勃ち上がる中心を握って溜息をつく。
「出番じゃないっつうの・・・。」
膨れ上がっていくだけの劣情。瀬戸の火照った寝顔を脳裏に浮かべて手を動かすと、坂口の身体は正直に気持ちが良いと主張してくる。
自分がほぼ一方的に話していたが、聞いている瀬戸は熱心に頷き返してくれていた。瀬戸の反応に気を良くして、自分の身体は調子に乗っているのだ。勘違いしてはいけない。抱える腕に瀬戸が身体を寄せてきたのは、足元がおぼつかないほど酔っていたからだ。
「ッ・・・。」
込み上げてきたものに逆らえなくて、バスルームへ閉じこもってシャワーに打たれながら硬茎を擦る。初めて近付けた手応えに頭が沸いているのだ。一度快感を追い始めると、手が止まらなくなるから困ってしまう。
もし瀬戸が起きてしまったら、この声が聴こえてしまったらと思うと、怖いのに興奮する。この熱はそれなりに重症だ。
吐精しそうだと息を呑んだ瞬間、湯に混じって白濁が噴き出す。唇を噛んで堪えるつもりが、つい漏れ出た声がバスルームの中でやけに大きく反響した。
「ふぅ・・・うッ・・・」
急速に興奮が冷めて、頭の中がスッキリしていくことにホッと肩を撫で下ろす。とにかく冷静になれないと瀬戸の前に戻れない。うっかり何かをやらかせば悲劇にしかならないだろう。
「大丈夫・・・。」
何度も心の中で唱えて、自分に言い聞かせる。いつもより高い温度の湯で残滓を綺麗に流し終える頃には、鼓動も凪いでくる。バスタブに湯をためて、身体を温めようと思うくらいには落ち着きを取り戻した。
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朝霧とおる