飯塚の手が優しく肌の上を滑っていくと、堪えていたものが溢れて涙になる。本心から大丈夫なのに、説得力に欠ける涙に焦って、止まってくれと念じる。しかしいつまでも涙は止まってくれない。
「ふぅ・・・ん・・・」
こんなグズグズ泣いていたら、いずれ呆れられるんじゃないか。心配になって飯塚を見上げると、彼は微笑んで大友の額にキスをくれる。
「ホッとした?」
「ん・・・。」
「嬉しいな。」
「ッ・・・んッ・・・」
「恋人になれた、って感じ。」
大きな掌が大友の胸で円を描いて突起に触れる。赤く膨れたのと呼応して、足の合間にある大友の中心も覆い隠す布を押し上げた。飯塚は大友の様子に満足したらしく、熱い吐息をついては舌で胸の突起を弄り続ける。
「はぁッ・・・あッ・・・ッ!!」
胸ばかりに意識を取られていたから、急に飯塚の手が大友の中心を布越しに握ったので、驚いて息を呑む。
「一度出す?」
「ッ・・・ふッ・・・」
聞いたくせに、答えを聞く気はないらしい。飯塚の唇に塞がれて声を封じられ、直に触れた大きな掌が大友の硬茎を好き勝手に扱く。
「んんッ・・・うッ・・・」
飯塚の抱いてくれる腕にいつも思うのは、性欲を発散するためのセックスと、愛しさが高じて抱くのは、同じ行為でも全く違うのだということ。
好きだと囁かれて、大切に触れられて、愛しい気持ちに包まれることが、こんなにも満ち足りた気分にさせてくれるとは知らなかった。
知らなかった優しさは大友を深く刺激して、飯塚の甘さに身も心も染められていく。
「・・・き・・・い、つか・・・」
「うん。」
「す、きッ・・・」
「俺も好きだよ。」
嬉しくて、ちょっとだけ怖い。大した魅力もない自分が飽きられる日なんて、すぐ来るかもしれない。今考えても仕方ないことだけど、考え始めたら不安が膨らんで、飯塚にしがみつく。
「大友、そんなくっついたら、できないよ?」
微笑んで頬にキスをくれた飯塚の眼光はどこまでも柔らかい。そこには一切の棘が含まれていなくて、真っすぐ見つめてくる瞳には大友の姿だけが映っていた。
宥めるように飯塚の手が大友の硬茎を扱いてきて、しがみついた手から力が抜けていく。慈しむような手が心地いい。腰の周囲がざわめき始めて、熱が競り上がってくるのを感じる。
「あ、まっ・・・んぅ・・・」
「大友、我慢しないで。」
「んッ、イく・・・ふッ・・・」
ソファや服が汚れるんじゃないかと、焦って飯塚の手を掴む。しかし、やんわり掴んだ手を外されて、余計に扱く手を強めてくる。
「ふぅッ・・・うッ・・・んんッ」
「大友、可愛い。気持ちい?」
可愛い顔なんてしていないと思う。引き攣る皮膚が涙の跡がそこかしこにあることを教えてくれるし、紅潮して喘ぐ自分の姿を想像しただけで、気が滅入りそうになる。
「こっち向いてよ。」
直視できなくて逸らしていた顔を、飯塚が覗き見てくる。目が合った瞬間に優しい視線に囚われ、カッと熱くなった身体は飯塚の手に促されるまま精を放った。
「んんッ・・・うッ・・・ふぅ・・・ん・・・」
先端から溢れる精を呆然と見つめる。
疲れていたし、それほど欲求不満でもなかったはずだから自分の身体に驚いてしまった。しかし呆気なく放った熱は飯塚を求めていた証。気が高まって溢したものは、偽りのない自分の欲情だ。
「うッ・・・く・・・あ、あぁッ、やッ・・・」
一滴残らず搾り取ろうとする手の動きに大友は呻いて、過ぎた快感に声を漏らす。
「何にも考えないで。」
「・・・ッ・・・ふぅ・・・」
「掴まってて。」
「ん・・・。」
目の前に現れた飯塚の昂りを見つめて、喉を鳴らす。求めてくれる嬉しさに胸をいっぱいにしながら、飯塚の胸に抱き付いた。
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朝霧とおる