触れてくる飯塚の手は大きくて温かい。長い指が肌を撫でていくたびに、ホッとして安堵の溜息が漏れ出た。
「こっち向いて。可愛いんだから、隠さないでよ。」
飯塚の言葉が逐一甘くて。ずっと待つだけの恋しか知らなかったから、惜しみなく与えられることに少し戸惑う。優しくされることも甘い言葉を注がれることも慣れていない。好きだと囁かれるたびに胸が熱くなり、感じていることを指摘されるだけで、頭が羞恥心でどうにかなりそうだった。
「気持ちいい?」
「・・・ん、いちいち、聞くなッ・・・」
密着して飯塚の腹部を押していた昂り。大きな手で包まれた瞬間、先端が濡れた。抱き合うことは慣れているはずなのに、この途方もない恥ずかしさは何だろう。
「教えてよ。知りたい。」
「変態・・・」
「褒めてる?」
「ほめて、ないッ!」
大友に見せつけるようにゆっくり扱いて、飯塚の手を自分の溢したものが濡らしていく。物欲しそうに腰が浮くさまをじっくり見降ろされて泣きたい気分になった。
「ッ・・・はやく、しろってば。」
「そんなもったいないこと、できないよ。ゆっくりさせて。」
壊れ物でも扱うようにそっと抱き締められて、胸がせつなく疼く。ずっと誰かにこうされたかった。大切にされたいと願って、尽くしても待っても手に入れることはできなかったのに。
身を寄せると抱き締めてくれる。それが嬉しくて仕方なかった。飯塚は欲しかったものを全部くれる。諦めていたものをくれる。もう少しいい顔をしておけば良かった。みっともない姿ばかり晒していたのに、彼はちっとも意に介する様子はない。
「大友。俺はね、急かされるのはキライ。どれだけ好きかわかってもらってから、抱きたいんだよ。憶えておいて。」
「んッ、あぁ・・・ん、んッ・・・」
飯塚の舌が胸を這う。彼の手が大友の中心を捕え、そのまま身体のあちこちに唇を寄せてくるので、徐々に思考回路を断たれていく。気持ちいい時間が長いと苦しい。でも頭のどこかで、これこそ愛されている証だと実感している自分がいる。どうして好きな人と触れ合いたいのか、ずっと封印してきた欲求を目覚めさせられた気がするのだ。
「もっと・・・いい、つかッ・・・もっと、して。」
乱れる姿をまじまじと見つめられるのは恥ずかしいけど、求めずにはいられなくて。なりふり構わず強請っても、飯塚なら容易く受け止め、聞き入れてくれそうな気がする。彼は鼻で笑ったりすることもしないだろう。
微笑みながら口付けをくれた飯塚に、嬉しさで胸がいっぱいになって抱き付く。
ほら、やっぱり大丈夫。摺り寄せた太腿に飯塚の硬い中心が当たって、彼の昂り具合を教えてくれた。膝で飯塚の中心を擦り上げてみると、やんわりと彼の手が止めに入る。飯塚は散々好き勝手に触ってくるのに、されるのはお気に召さないらしい。
顔色を窺いながらすることが当たり前だったから、何も隠さずに抱かれる解放感を知らなかった。初めての恋らしい恋は残念な結果で終わってしまったけれど。苦しんだからこそ、飯塚の優しさが心に沁みる。触れる先から大切にしたいという気持ちが伝わってくるから、自分が特別なものになれた気分だ。
「・・・ん・・・飯塚・・・も、ほし・・・」
すぐそばまで限界はやってきていた。もうそろそろ、一つになって彼の熱を直に味わいたい。
「おね、が・・・ッ」
「どうしようかな。」
まだまだ弄り足りないと言わんばかりに、飯塚が頭上で笑いながら悩んでみせる。
「ほ、し・・・イっちゃう、から・・・」
「大友。俺のこと好き?」
急に愛撫の手を止めて、真剣な面持ちで見下ろしてくる。
「いつか絶対、一番だって言わせたい。」
「ッ・・・。」
とっくに好きだと言いたかったのに、飯塚の唇に口を塞がれて言葉を呑み込む。彼が一番であることにこだわるなら、大友の言葉を遮ったことに頷ける。
駿と飯塚では過ごしてきた年月が違う。二人を同列に並べて語ることなどできはしない。わかった上で口を塞いでくれた飯塚の優しさに、今は甘えることにした。
「こんなに強請っておいて、大友から逃げるのはなしね?」
腰に響く低音が、止んでいた愛撫の手を思い出させる。無意識に震えた身体に自分でも驚いて、重なってきた飯塚の身体に焦る。歓喜で身震いするというのは経験がなくて困った。
「大友、ずっと見てて。」
言われなくても、そうするつもりだ。
飯塚の満足気な顔に胸が熱くなる。大友は心に巣食う羞恥心を振り切るように飯塚へ抱き付いた。
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朝霧とおる