手ぶらで出て行って、大荷物で帰ってきた大友に目を見開く。そして帰ってくるなり荷物を放って飯塚の胸に飛び込んできたので、驚いて心臓が跳ねた。
「大友?」
「褒めて。」
「・・・うん。」
はっきりとした口調で強請ってきたあと、飯塚の胸に伏せたまま、大友の肩が震え始める。玄関に立った彼の顔は笑っていた。しかし腕の中で泣き崩れる彼を見て、それが虚勢だったのだと知る。ずっと涙を堪えてここまでの道を歩いて来たのかと思うと、強く抱き締めずにはいられない。
「おかえり。よく頑張ったね。」
しゃくりあげながらも声を絞り出して、大友が懸命に伝えようとしてくる。
「ちゃんと・・・言えた・・・。」
「うん。」
「ッ・・・おまえの、顔、見たら・・・ホッと、した・・・。」
「そう?」
「・・・別れて、ホッとした・・・。」
胸に額を押し付けたまま、大友が笑う。泣きながら笑う身体は強張ってはおらず、ホッとしたと言う大友の言葉が真実であることを告げている。
「もう、頑張らなくて、いいよね。」
「これ以上は頑張らないで。」
大人になってこれほど短期間に泣き尽くすのは、人生の中で稀だと思う。大友にとっては衝撃的な年末になってしまっただろうけど、飯塚にとってもそれは同じだった。
一目惚れをして、人の恋に首を突っ込んで、振り向いてもらうために粘ってみたり。こんな出会いは、人生の中でそれほど多く経験できないだろう。
「ねぇ、大友。俺と付き合って。」
もう十分待った気分だったから、改めて申し出る。出会って一か月も経っていないのが不思議なくらい、大友の色んな顔を見た。浮き沈みも激しくて、コロコロ変わる表情に魅せられて。でもこれからは彼の笑顔をたくさん見たい。時々怒らせることはあるかもしれないけど、寂しい思いをさせない自信はある。
「大事にする。大友がうんざりするくらい構って、離してあげない。」
「バカ・・・。」
「茶化さないで、ちゃんと答え聞かせて。」
「・・・き。」
「うん?」
「・・・好き、だ・・・ッ!」
いつだって恋人のことは大事にする気満々だけれど、空回りしてばかりいたから、今度こそ間違えないように、と思うのは大友と同じかもしれない。相性はいいと思う。構い性の自分と、甘えたがりの大友。
ようやく言質を取れたことに満足し、大友にキスを贈る。大友も満更ではなさそうで、夢中で互いの唇を貪った。
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朝霧とおる