ドアを開けて今藤を出迎え、肩に受け止めた重さに胸が震える。
「あー・・・疲れた・・・。」
「お疲れ。」
彼が誰と親しくしていようと、この重みは雅人だけに許された特権だと思う。
「ちょうだい、甲斐。」
全く遠慮もなく、がっつりとキスを仕掛けてきた今藤にときめきながらも、彼の肩を押しやる。
「ここ玄関だって。早く上がれよ。」
やっぱり素直になるって難しい。気を許した同期、という時間が長かったものだから、踏み込んだ関係を意識し始めると、どうしても落ち着かない。要は気恥ずかしいのだ。
今藤に背を向けて部屋の方へ歩き出すと、すぐに今藤が背後から抱き締めてきて、彼の顎が雅人の肩に乗った。
「ホント、疲れた・・・。」
「・・・寝てもいいけど。」
「甲斐、ここまで来て、それはないから。」
「えッ、ちょッ・・・うわッ!」
色気のない声で慌てたのは、急に視界が変わったからだ。ベッドの上に放り出されて、あっという間に組み敷かれる。
「んッ・・・ふ・・・ッ・・・」
雅人の唇に今藤の唇が覆い被さって、抵抗する間もなくねじ伏せられる。強引さの中にある優しさを知っているから、雅人は夢中になって今藤の唇に応える。そうこうしている間に身体の熱も上がり、兆し始めたものを彼の腰へ押し付けた。
「最高。良い眺め。」
「ッ・・・。」
「今日は抵抗しないんだ?」
殊勝な顔が微笑んで見下ろしてきたので、居た堪れなくなって片腕で顔を覆い横を向く。しかし憎まれ口を叩くのは辛うじて堪えた。
欲しくて欲しくて待っていたし、今日くらいは素直じゃない口は封印しようと決めたから、雅人も必死だった。
「ッ!」
今藤の手が、反応を示していた雅人の前を、遠慮なく布越しに触れてくる。ビクッと悦びで震えた雅人のことを今藤が見て満足そうに微笑んだ。いつもなら快楽に屈するのが恥ずかしくて仕方ないが、今日は触れられることが嬉しいと思う気持ちが勝る。
自覚もなく、気にしたこともなかったけれど、自分からキスを強請るのは稀かもしれない。今藤が少し意外そうに喉の奥で笑う。そんな彼にまた誘われるようにキスをすると、今藤の手によって暴かれていく。雅人の中心が威勢良く顔を出して彼の直に彼の手で扱かれた。
「はぁ・・・あ・・・」
「なあ、思い出して、した?」
「ッん・・・し、な・・・」
「凄い濡れてるけど、先にイく?」
「いか、な・・・ッ・・・」
一人先にイくのは嫌だと首を振ると、呆気なく今藤の手が雅人の硬茎から離れていってしまう。
触れられる気持ち良さが急に去っていき、身体が震えて戸惑った。
「なんで・・・今藤・・・」
「先にイくのイヤなんだろ? 触ったらすぐイきそうな顔してる。」
「ッ・・・」
思いのほか優しく微笑まれて、彼の手が性急に二人の服を取り払っていく。彼は最初からそうだった。迷うことなく雅人の身体を暴いて、必死だと言いつつ、的確に望むものを与えてくれた。それらが経験の豊富さを物語っていたけれど、不思議と嫉妬心に至らないのだ。今藤が不慣れだったら、照れながら穏やかに朝を迎える、なんていう展開は期待できない。
「甲斐、そんな腰振られたら、触りたくなんだろ?」
今藤は多分、雅人が恥ずかしがることをわかっていて、あえてそういう言葉選びをしていると思う。
服を脱がされ、素っ裸で抱き締められて、彼の昂りが腰に押し付けられた瞬間、雅人の頭は焼けきってしまった。もう恥ずかしいと言っていられるような状況ではなく、触ってほしくて堪らないと切羽詰まって無意識に出た行動だった。
「甲斐。今日、突っ込むのはなしな。甲斐の手でイかして。」
抱き起こされ向かい合ったまま、彼の中心へと手を導かれる。
「触って、甲斐。」
雅人が彼の昂りへ触れる前に、雅人の硬茎が彼の大きな手に包まれる。
二人で熱い息をこぼし合って、ゆっくり刺激して満たされていくというのも、いつもの激しさとは違って、いいなと思える。
「はッ・・・あ・・・」
「・・・甲斐・・・ッ」
最初はゆっくりだと思っていたけれど、今藤の手から送り込まれる快感はちっとも穏やかではなかった。じっとしていられないほど腰から背中に悦楽が走って、今藤の腕にしがみ付いては腰を揺すってしまう。
「気持ちい?」
聞いたくせに雅人の言葉を待っているわけではないらしい。すぐに唇を塞がれて、漏れそうになった嬌声さえ封じ込められてしまう。
キスをしながら必死になって今藤の先端を撫でると、彼が焦ったように乱れた息をこぼす。雅人と同じように、今藤も気持ちが良いと思ってくれている。それがはっきりわかって、安堵して嬉しくなり、膨れて硬さを増していく今藤の昂りを夢中で擦った。
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ぎゃあぎゃあ騒ぐ甲斐も楽しいのですが、大人しくしようと必死になっている甲斐を書くのも楽しいです。
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朝霧とおる