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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

瑠璃色の王と星の子【ある日の夜】

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瑠璃色の王と星の子【ある日の夜】

艶やかな肌を抱き寄せて、この上ない幸福感に浸る。乱れた息を上げて、潤む目が完全に閉じた瞬間、腕に愛しい重みを感じた。

「凛、ゆっくりおやすみ。」

声を掛けても、もう返事はない。紫苑の熱を全身で受け止めた凛は、意識を手放し夢の中だ。

疲れている時ほど欲しくなる。身体を合わせていると、繋がった先から包まれて癒されているような感覚になるのだ。ただ側にいるだけで、凛の中にある命の息吹が紫苑の身体を軽やかにする。その身体を繋げばなおさらだ。

深く交じり合い、火照った身体は汗ばんでいる。汗の匂いさえ甘く感じるのは欲目だろうか。

凛がこの世に生を受けて十八年と少しが経った。十歳の自分が見た彼は、儚くて力強い不思議な生き物に感じた。

幼い頃から草木や鳥たちと戯れ言葉を交わしていた凛。彼はたった三つでその才により星の宮へと迎えられた。

星の宮に入るのは王族の血を受け継ぐ者のみ。癒しの力を持つ者が代々招き入れられ、その才能を磨く。そして凛は先々代から続いた星の宮の主が亡くなった後、主の座に就いた。弱冠七歳の時だった。

癒しの力を持つ者は同じ時代に二人より多く存在することはない。主の寿命が少なくなると、それを見計らうかのように、神の化身が王族に産まれるのだ。

凛の母は短命だった。紫苑は凛の伯父に当たる。姉は凛を産んだ後間もなく亡くなり、凛は母の愛を知らない。父も内乱鎮静のために命を落とし、凛は肉親の愛を十分に受ける事が叶わなかった。時折見せる縋るような目に、紫苑も何度心痛め、惹かれたことか。

やがて幼子から少年へ、そして青年へと美しく変わっていく様を近くで見守るうちに、紫苑が凛へ向ける視線の意味は変わっていった。

守りたい存在であるのは昔も今も変わらない。けれど凛を独占し己の腕の中にずっと留め置きたい衝動は日に日に増していく。

誰にも渡したくないし、触れさせたくない。彼の眼差しが未来永劫、自分だけに注がれ続けることを願っている。

凛の身体に己の証を刻み付けたのは、彼がこの世に生を受け、十五年という歳月を経て成人を迎えたまさにその日だった。

愛を囁き、この手に堕ちてきた彼を優しく溶きほぐして蹂躙した。もとより紫苑には絶大なる信頼を寄せていた凛は与えるものを疑うことすらしなかった。ただこれが定めと、いとも簡単に受け入れたのだ。

紫苑の腕の中で安らかな寝息を立て始めた凛の頬を包み込んで口付ける。ピクリと瞼が動いたが、開かれることはなかった。

一糸纏わぬ艶やかさは人のものとは思えない。玉のように透き通った肌にほんのりとまだ赤みが残り、二人が交わった証を残している。

何の疑いもなく身を委ねてくるその姿にまた煽られそうで、紫苑は甘い溜息をつく。神の化身は華であり毒であり、紫苑にとっては大変厄介なものだ。

民の命運を担うその身を冷やしてはならないと、凛の肩まですっぽりと被さるように布を上げる。凛が安堵の息をついてさらに擦り寄ってきたので、彼が望むように紫苑はその身体を抱き寄せた。
幸せそうな寝顔を眺め、どんな夢を見ているのか思いを馳せる。その世界に自分がいることを願いながら、飽きるほど凛の顔に見入った。





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