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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

百の夜から明けて28

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百の夜から明けて28

ごめん、浮かれてた、と柄にもなく会った瞬間謝られたら、誰だって油断すると思う。職場で関係を匂わせる発言をしたことは確かに反省しているようだったが、肝心の飯はどうしたとわめいたところで、唇を塞がれてしまえば抗えない。頭が喜びで沸いてしまっているのもわかっていたから、雅人は潔く今藤の唇を受け入れた。

「イヤなんだけど・・・。」

キスの合間に雅人が溢した言葉を今藤が訝しげに拾う。

「やられっぱなしで、イヤだ。」

「あぁ、そういうこと。」

納得した顔をしたくせに、今藤は依然雅人を組み敷いたまま首筋に唇を寄せてくる。

「なぁ、俺にもなんかさせて。」

グッと手に力を込めて雅人は圧し掛かってくる今藤とどうにか距離を作る。今藤が長身だとはいえ、同じ男だから本気でかかれば抵抗できないことはない。

「俺だって・・・好きなんだ、って証明したい。」

「喧嘩するんじゃないんだから、別にそんなところで競わなくても。抱かせてくれるだけで十分わかるけど?」

「俺ばっか、いっぱいいっぱいで・・・悔しい。」

「悔しい、って。おまえな・・・。」

睨み付けると苦笑しながら今藤が起き上がり、雅人のことを引っ張り上げて起こす。包み込まれるようなキスをされ、やって、と今藤が耳打ちしてくる。その声にゾクリと肌がざわめいて、雅人は心臓を掴まれながら、そっと今藤を押し倒す。

他の誰にもこの手は震えたりしなかったのに、今藤のシャツを脱がせているだけで震えてしまう。
ほんの少し前までの自分は、こんな風に彼の肌を知る日がくるとは思っていなくて。今藤に見つめられて、彼の肌を暴こうとしている自分が今でも信じられない。

「なぁ、今藤。」

「うん?」

「なんで、そんな平然としてんだよ。」

「別に平気じゃないよ。ほら。」

グッと強い力で手を誘われて、彼の鼓動を確かめさせられる。早く打つ波に、今藤の表情に現れていない緊張を感じて、雅人は意外に思った。

「なんせ、こっちは十年分だから。」

「・・・。」

「重いって思われたくなくて・・・必死なんだよ、これでも。」

「俺だって・・・。」

期待に心が駆けている分、夢から覚める日が怖い。嬉しくて舞い上がってしまうからこそ怖いのだ。

「甲斐。好き、だって証明してくれんだろ?」

「当り前じゃん。今度は俺が返したい。」

「期待してもいい?」

「絶対、おまえの期待値超えてやる。」

愛おしそうに微笑まれて、雅人は息を呑む。そのまま両頬を大きな手に包まれて、慈しむようにキスをされた。

確かに癖の強い相手に好かれたかもしれない。けれど雅人自身、今藤に好かれることを望んで、奇跡的にもこの気持ちは届いたのだ。自分の凡ミスというところが残念だが、雅人の行動が引き寄せた運なのだと思えば、少しは自分のバカさ加減を好きになれる。そしてそれをバカにもせず雅人の気持ちを拾ってくれた今藤には余計惚れ込んでしまうだけだ。

翻弄されるばかりでは悔しいと、噛みつくようなキスを返す。雅人の行動に優しく笑った今藤を押し倒す。跨ってブチブチと音がしそうな勢いでシャツのボタンを開けきって、ベルトに手を掛ける。キスだけで昂ったらしい彼の中心を見せつけられて、雅人は顔が火照っていくのを止められなかった。

「手でいいよ。」

「いいから黙ってろよ。」

彼の熱のある優しい声を聞くたびに、雅人の緊張は膨れていく。もう一度噛みつくようなキスをして勢いのままに彼からズボンを剥ぎ取ると、雅人の手に彼の硬いものが触れた。

「ッ・・・ふぅ・・・。」

前戯もないまま今藤の硬茎を口に含むと、息を呑んで彼の指が雅人の前髪をかき上げる。口の中で質量が増して、彼が感じてくれているのだとわかったら、雅人は愛撫することに夢中になった。

「甲斐・・・ッ・・・」

必死なのだと言った彼の言葉が、ようやく現実のものとして雅人の胸に落ちてくる。雅人の奉仕ひとつにこんな興奮してくれるのだとわかったら、どうにか夢中にさせて、高まる証を見たいと思ってしまう。

口の中に広がる雄の匂い。含んで扱くたびに、今藤の熱量が増していった。

今藤の焦る声が聞きたい。落ち着きなく上がる彼の呼吸を聞きながら、欲張りな心がさらに乱れた彼を要求する。

「イく・・・甲斐・・・」

震えた今藤の声に望んだものを手に入れた充足感が雅人を調子づかせた。グッと肩を押してきた今藤の手を軽く払って、それ以上抵抗を示さないのをいいことに、雅人はしっかり咥えて吸い上げた。

「うッ・・・ッ・・・」

余裕のない今藤の顔を見上げて確信する。期待し、望んでくれた行為だ。それを感じ取れただけでも雅人にとっては収穫で、嬉しさで胸がいっぱいになる。口の中に広がる苦さをいつもは水で流し込んで誤魔化すけれど、今日ばかりはいつまでも感じていたいと飲み干す。

「バカ、出せよ。」

「いいじゃん、別に。したくてやったんだから、俺の勝手だろ・・・うわッ!」

身体が一仕事終えて弛緩していた隙を突かれる。いつの間にか今藤に押し倒されて、彼の顔は頭上のごく近くに迫っていた。

「煽った責任取れ。」

「なッ・・・」

一度抜けば性欲も減退するかもという淡い期待は打ち砕かれる。返って自分の行動は今藤を煽っただけだと知り、慌てて圧し掛かってきた身体を押し返そうとするものの叶わない。

「あ、明日も仕事あんだけど。」

「知るかよ。」

「いや、ちょっと、マジで勘弁して!」

雅人の抗議は今藤の唇に呆気なく阻まれてしまう。しかし本気で抵抗する気がないことはすぐに悟られ、今藤の手に溶かされるまで、そう時間はかからなかった。








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