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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

百の夜から明けて26

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百の夜から明けて26

ショーウィンドウのガラス越しに見ていた男が目の間に突如降ってきたようなものなのだ。だいぶ浮かれているのだと自分でもわかる。どんなに忙しくても都合をつけたのは、会いたいだなんて言われて居ても立っても居られなかったからだ。

覆い被さった進に慌てる甲斐を見て、堪らない気持ちになる。愛しく思わずにはいられなくて、甲斐が声を上げるたびに、進の心臓も跳ねる。惚れ具合を自分の胸に確かめるには十分過ぎる高鳴りだった。

今まで欲望を吐き出すことがセックスだと思っていたけれど、好きな人とするそれは、随分勝手の違うものらしい。欲しい気持ちが際限なく溢れてきて止まらない。甲斐の反応を見るたびに愛おしい気持ちが積み重なって、胸がいっぱいになっていく。甲斐の身体から漏れ出てくる、自分へ向けられた好きだという気持ちの欠片。進はそれを貪欲に拾い続けた。

こんなに満たされることがこの世にあるのだと知ったら、もう彼以外を抱きたいなんて思う日はこないだろう。

「んッ・・・ふッ・・・あ、ちょっと・・・」

「痛い?」

「うわッ、待っ、て・・・痛くは、ない・・・けど・・・わッ」

「イきそう?」

シーツをきつく握り締めていた甲斐の手が焦ったように進の肩を叩いてくる。進の問いに素直に頷いてきた甲斐の顔は真っ赤で、進の指から与えられる刺激に限界だと訴えてきた。

他の誰もが色気ない声だと断言しても、進には彼らしくていいとさえ思う。どんな男に抱かれてきたのか知らないが、きっとこんな焦った顔や恥ずかしくて堪らないといった顔を晒していたわけではないだろう。今目の前にいる彼は進だけのもの。そう思うだけで満たされる。

「甲斐、いい?」

わざと見せつけるように進は自身の昂りを擦り上げる。

「さっさと・・・ッ!!」

また可愛くない口をきこうとした甲斐の口を自らの唇で塞ぎ、ゴムに手を伸ばす。封を開けて付けようとすると、甲斐が起き上がって進の手を遮った。

「このままで・・・いい。」

進の昂りを直に触って、行為を促すように手で扱いてくる。

「ッ・・・。」

甲斐の秘部を慣らすのに使っていたジェルで熱情を覆われたら、もう我慢もできなかった。優しくしようとしているのに、煽られたらひとたまりもない。勘弁してほしい。

「甲斐」

「んッ・・・」

先端を秘部にあてがうと、恥じ入るように、甲斐が腕で顔を覆った。そんな姿にまた煽られて、堪らず腰を進める。息を詰める甲斐の声を聞きながら、まとわりついてくる内壁に包まれて、進は甘い息を溢した。

「甲斐」

「そういう、声で、呼ぶな!」

「なんだよ。そういう声って。」

幸せでたまらない。愛しさが溢れる声で呼んでしまったと思う。甲斐が顔を真っ赤にして抗議してくるものだから、まだ慣れてくれないのかと思うと、おかしくて笑える。キスして、身体を繋いで、お互い気持ちを晒したというのに。この可愛い生き物をどうしてやろうと、昂り、心が躍るのを止められない。

「性格悪い・・・うわッ!」

いつまでもやかましく、甘い空気などこれっぽちも出そうとしないのが甲斐らしくて。それでもこうやって身体を許してくれることに、彼の好意を受け取る。

経験があるというのは本当らしく、進が突き入れて腰を揺らし始めても、彼が痛いと溢すことはなかった。困ったように眉を寄せ、喘ぐことを躊躇わないところからも慣れを感じる。

嫉妬まではしないけど、少し悔しい。奥を突くたびに嬌声を上げトロトロになっていく顔を他の誰かに見せていたのかと思うと、胸に湧き上がってくる不快感を否定できない。

「甲斐」

「あッ・・・ま、待って・・・やだ・・・。そこ、やだ・・・あぁッ」

甲斐は進の呼びかけに応えることなく、与えられる刺激を受け止めるだけで精一杯のようだった。

「甲斐、ココ? ココ、気持ちい?」

「バカッ! やだ・・・イくッ。あ、あ・・・」

奥より前立腺で感じるたちらしい。甲斐のそこを狙い打ちして突き入れると、面白いように彼の身体が跳ねて、前からは先走りの蜜を飛ぶ。

逃がさないとでも言うように硬茎を絞り上げてきた内壁に、進は心ごと攫われそうになる。

「うッ・・・甲斐・・・」

「早く!」

情事の最中、こんな色気のない言葉を羅列するやつも珍しいと思う。少なくとも進は初めてだ。しかしそれでも彼に包まれているだけで、味わったことのないような充足感があるのだから不思議だった。特別だからこその悪態だとわかっている。甲斐の言動の端々に、好意が窺えるからこそ、進も甲斐の暴言に甘ささえ感じるのだ。

今日だって仕事を半分投げてきたようなものなのに、甲斐との時間を作って良かったのだと心から思っている。

「おまッ・・・ひどい!」

二人の身体の間で揺れていた甲斐の分身を握り込んで達せなくする。すると想像通りの悪態が飛んできて、進は笑いながら揺する腰を早くした。

「やだ! もう、ホント・・・バカッ、イき、た、い・・・」

「俺も・・・ッ・・・イく・・・」

「うわッ・・・あぁ・・・も、もう・・・ッ!!」

「く・・・んッ・・・」

最後の最後まで色気のない嬌声を聞いて、進は絶頂に震えて果てる。甲斐の声を聞いているだけでこの上なく嬉しいのだから、甲斐が罵るとおりバカなんだろう。

「あ・・・んッ・・・ふぅ・・・」

甲斐が進の下で幾度も身体を震わせながら吐精するさまを満たされた気持ちで呆然と見入る。身体が汚れるのも構わず圧し掛かって抱き締めると、恥ずかしそうに甲斐が抗議の声を上げた。

「・・・重い。」

「そんな体重かけてないだろ。」

「変態。」

「気持ち良かったくせに。」

「ッ・・・。もう、寝る。」

「・・・。」

目をギュッと瞑って、甲斐が無理矢理、身体を横へ向ける。

「なぁ、甲斐。」

「・・・。」

「恥ずかしいのはわかるんだけど、なかった事にはすんなよ。」

「・・・一週間。」

「え?」

「一週間、待って。」

あまりに必死な声なので、笑いを堪えて承諾する。一週間待ったところで甲斐の様子が劇的に変わるとは到底思えなかったが、期限付きで気持ちの整理をしてくれるなら、こちらも攻めやすい。

「来週の土曜、仕事は?」

「ない、けど・・・。」

背を向けたまま甲斐が渋々、進の問いに答えてくる。

「じゃあ、朝の十時に俺んち来て。」

「え?」

「甲斐雅人くんが怖気づいて逃げる前に約束。」

「ッ・・・。別に怖気づいてるわけじゃない・・・。」

急に甲斐が身体を起こしてバスルームへと向かって行く。どこも隠しもせず素っ裸で突き進むところに彼の意地っ張りな部分を感じて、進は苦笑しながら甲斐の背中を追って立ち上がった。










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もうすぐ、この二人の話も終わりだな、と思うと少し寂しさもありつつ。
この二人にもう一仕事させてみたい・・・という気持ちがあり、
学会で忙しくしている今藤に、甲斐が構ってほしくてたまらない的な話を妄想しています。
妄想がアウトプットできるかどうか、ちょっと未定です(笑)
甲斐をジタバタ悶えさせて・・・となると、後は今藤に美味しくいただかれる図しか思い浮かばず、やはり私は腐だな、となっております。。。
多田にこっそり登場いただきましたが、久々に多田×柚乃宮サイドも書こう!という気分に。
気分だけで終わらないように祈っていただけると幸いです。。。

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