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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

王都の燈火1

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王都の燈火1

揺らめく蝋燭の火に、世羅の下でフェイが深い溜息をつく。

「世羅様・・・きっと、お忘れなのですね。」

「ど、どうしたのだ、フェイ。」

「今宵、王都へお連れくださるとお約束いたしましたのに・・・。」

夜も更け、一度は眠りについたフェイを眺めていたが、何かを思い出すように目覚めたのはそのためだったのだと、世羅は慌てる。

「忘れていたわけではない! 断じて、そなたとの約束を忘れたりなどしないよ。ただ、あまりに愛おしくて我慢がきかなかったのだ。すまない・・・。」

完全に昼間交わした約束は忘れていたが、どうにかこうにか世羅はフェイに言い訳をする。しおらしく伝えてみると、素直なフェイは世羅の様子に大層驚き、かえって申し訳なさそうな顔を見せた。

「楽しみにしておりました。世羅様、つい・・・。」

「あぁ、そんな顔をするでない。私が悪いのだ。だから、そなたの身体に無理がないのなら今から王都へ降りてみようか。」

「よろしいのですか?」

世羅の提案に、フェイの目が輝く。誤魔化した後ろめたさはあったものの、すぐに純粋なまなこに浄化されて些細な罪悪感は吹き飛ぶ。キィがそばにいなくて良かった。こんな愛しい時間を邪魔されたくはない。

フェイに湯浴みを自分でしてもらい、身繕いをさせる。その隙に世羅は世話役を呼び寄せて、こっそり警護の用意をさせることにした。フェイに悟られてしまうと、自分たちの遊びに幾人もの臣下たちを付き合わせてしまうことを嘆くだろうと思ったからだ。

身支度の整ったフェイを一度抱き締めて、微笑んで部屋の外へと誘う。

「フェイ、行こうか。」

「え? 二人で?」

「二人で。」

フェイがフッと笑みをこぼしたので、てっきり喜んでいるのかと思えば少し事情が違った。

「世羅様」

「なんだ?」

「存じておりますよ。世羅様と二人きりで王都へ行くことが叶わないことは。」

「・・・。」

世話役とのやりとりは筒抜けだったかと気まずくなり、世羅は肩を落とす。

「お優しい世羅様が大好きです。」

フェイが微笑んで思わぬ言葉をかけてくる。

「だって・・・私のためでしょう? 私が気兼ねなく楽しめるようにと。」

「相変わらず敏くて、そなたには参る。」

「世羅様、私も天帝にお仕えする身。世羅様を丸腰でフラフラと王都へお連れするわけには参りません。ですから、どうか隠さず・・・私も世羅様をお守りいたします。」

「敵わぬ・・・私こそ身を挺してそなたを守りたいと思うのに、そうさせてはくれぬのか?」

「それは承服いたしかねます。」

どうにも頑固者の臣下であるフェイに苦笑し、世羅は彼の手を引いて王都への道を歩き出す。夜の王都への道はしっとりと濡れていたが、二人を歓迎するようにすっかり雨は上がっていた。









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昼休みがこんな時刻に~(泣)
今日は患者さんが多くバタバタでした。
短いですが、投下いたします。
「2」が明日アップできるかどうか、ちょっとわかりません!すみません!!
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