唇が触れる。重なるうちに深くなって、世羅の舌が隙間をぬって分け入ってきた。
ほとんど強引とも呼べる行為なのに嫌悪感はなく、そのことにフェイは自分でも戸惑っていた。
世羅が触れてくる場所が熱く燃えて、そのまま冷めてくれない。
以前のような怖いと思う感覚もなかった。ただ熱くてもどかしい気持ちがそこにあるだけだ。
「いけません、こんなこと・・・」
「どうして? 愛しいそなたを愛でるのは、そんなに悪いことか?」
「でも・・・」
「常識などいらぬ。さぁ、私のことだけ見ていればいい。」
世羅は顔が火照るようなことを平気で口にする。普段、さほど口数が多いとは言えない彼が、こんな時だけ饒舌だなんて反則だ。
「ッ・・・ん、ふぅ・・・」
いけない事をしているのではないかと思う自分もいる。けれどそれ以上に与えられる情熱的な口付けが気持ち良くて、次第に思考は奪われていった。
「フェイ、抱きたい。」
尋ねるような口調なのに、世羅の手はフェイの答えを待つことなく衣の間に差し込まれる。
「世羅様ッ・・・ん・・・」
直に平たい胸を撫でられて、緊張と刺激に息を詰める。
「私のことしか知らなくていい。」
はだけた胸元に世羅が思い切り吸い付く。
「いたッ・・・ぁ・・・ん・・・」
痛いのに、そこからじんわりと熱が広がる。どうしたらいいのかもわからず、縋るように世羅を見ると、嬉しそうにフェイの肌についた赤い痕を指でなぞっていた。
「私のものだ。誰にもそなたは渡さない。」
衣の帯を解いて、次々に肌の至る所に所有印のように痕を残していく。世羅の印でいっぱいになった肌。意識が曖昧だった前とは違い、妙に生々しい。
「世羅、さま・・・待っ、て・・・」
「聞けない相談だ。」
口元に笑みを浮かべたまま、世羅はどんどん下肢の方へと下がっていく。象徴を隠す布地を取り払われて、全てが剥き身になった時、世羅の喉が鳴る音がする。
「ふぁ・・・あ、世羅様ッ!」
中心が少し芯を持っていたことに自分でも驚いて、慌てて手で隠そうとすると、世羅の手に阻まれてしまう。
「私を許した、そなたの責任だ。」
優しく微笑む顔とは違い、彼に施されるすべての行為が淫らなことに戸惑う。満足げに笑みを浮かべながら、フェイの象徴に息を吹きかけてくる。
「んッ、ふぅ・・・」
フェイの鼻から情けない声が抜けていく。はしたなく震えてしまった象徴を隠したいのに、世羅に禁じられて、恥ずかしくて消えてしまいたかった。
「世羅、様・・・」
フェイが潤む目で首を振っても、世羅は微笑むだけだ。
スローモーションのように世羅の唇がそそり勃つ先端に触れ、温かいものに包まれる。
知識はあっても、心に受けた衝撃は半端ではなかった。包まれた先から蕩けてしまいそうで、全身が震える。
「そなたが愛しくて、食べてしまいたいほどだ・・・」
口に己を含まれながら喋られると、全てが刺激となって響いてくる。
世羅から紡ぎ出される甘い言葉も耳に入らないほど翻弄されて、気付いた頃には快感か羞恥かわからない涙を流していた。
「ッ、ら・・・さまッ・・・あぁッ!」
前は恐怖と痛みが勝っていた。だからこんな溶けてしまいそうな感覚を自分は知らない。
世羅の口に食まれて、象徴にはどんどん熱が集まってくる。硬く天を向く己に驚き、こんな熱が自分の中に眠っていたことが恐ろしくなる。
「ッ、フェイ・・・ん・・・」
「あ、あッ・・・ふぅ、んッ・・・ん」
ジッと見上げられながら高められて、精の入った袋を器用に揉み込まれる。強烈な刺激に視界が真っ白になる。
ギュッと目を瞑り、勝手に揺れてしまう腰をなんとか宥めようと苦心するが、快感は増していくばかりだ。
「ッ・・・あ、せら、さ、まぁッ・・・もう・・・」
世羅の唇が忙しなく上下して、溢すようにと促してくる。
もうどうしたらいいのか、わからない。ただ気だけが高まっていき、我慢がきかなくなってくる。
揺れる腰を抱えられ、トドメとばかりに世羅が吸い上げてくる。
「ふぅッ・・・あぁ、ああッ・・・ぁ・・・あッ・・・」
世羅の口に腎水を放ってしまったことが衝撃的で、目から涙が止まらなくなる。
「ッ・・・ふ・・・ッく・・・」
しかし世羅は全く気に留める様子もなく飲み下し、優しく抱き締めてくる。大きな掌でフェイの頭を撫で、髪を梳き、頬を包んで、涙を拭ってくれた。世羅の柔らかい唇も肌にたくさん落ちてくる。
「そなたを泣かせるのはイヤだが、こういうのはいいものだな。」
世羅はちっとも悪気がなさそうだ。
その様子に無性に腹が立って、泣きながらそっぽを向く。
「フェイ、怒らないでくれ。」
耳に囁いてくる世羅の声音は楽しげだ。悪いだなんて全く思っていない口振り。
「泣いてる顔も、笑顔も、全部全部、私だけのものにしたい。」
甘い溜息とともに漏れ出た実感のこもった言葉に、心臓が痛いくらいに鳴る。吐精で息の上がっていた身体には、少々キツイくらいだ。
「そなたが、わかったと言ってくれるまで、遠くへ遣りたくない。」
「世羅、様・・・」
「我儘は金輪際言わぬから、必ず私のもとへ帰ってくると約束してほしい。」
「・・・。」
「フェイ・・・」
先ほどまで殊勝な顔をしていた世羅が、真剣な面持ちで懇願してくる。真っ直ぐと求めてくる瞳に、咄嗟に何も言葉を返すことができなかった。
この世に絶対はない。必ず帰ると約束して帰ることのなかった者たちをたくさん知っているからこそ、フェイは安易な約束はしたくなかった。
旅はいつも危険と隣り合わせ。敵わぬ者を前にしたら、小さなこの身が滅びるのは一瞬だろう。
「世羅様・・・いつも、想っております。この身が尽きるその時まで、ずっとお慕い申し上げております。」
「フェイ・・・」
「私から申し上げられることは、これだけです。どうか・・・」
「帰ってこなければ許さぬ。」
「世羅様・・・」
「許さぬ。」
許せないと言いながらも、きっと世羅もわかっているはずだ。それ以上の追求をしてこなかったのが、その証だろう。
熱い抱擁と唇が再びフェイを襲いはじめる。熱情を隠そうとともしない世羅の手に、フェイは翻弄され続けた。
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朝霧とおる