痺れていた身体を押さえつけられ、全く抵抗などできなかった。ただ与えられるがままを受け止めて、フェイは世羅の激情に圧倒されていた。
世羅が求めるなら、受け止めたい。それが忠誠心からくるものなのか、世羅と同じ想いを分かち合っているからなのか、自分でもよくわからなかった。
ただ、世羅の苦しむ顔を見たくない。美しく気高い顔を哀しみで歪ませたくない。その一心だった。
世羅が自分に熱情を向けている。それだけは確かで、衣の前を寛げた世羅の身体にその証を見つけてしまった。
掴む手は強くとも、肌に吸い付いてくる唇は柔らかで熱い。落ち着かない感覚が肌を這って、怖くなってくる。しかし恐れが強いのはむしろ世羅の方かもしれない。フェイが視線を合わせようとするたびに世羅の瞳はそらされてしまった。
逃げようだなんて思わない。だからそんな辛そうな顔をしないでほしい。伝えたいのに、未だ思うように動かない身体がそれを阻んでいた。
「せ、ら・・・さま・・・ッ・・・」
世羅は強引に事を運んでいる自覚があるからこそ、苦い顔をするのだろう。けれどそれ以上に世羅の切迫した精神状態が見て取れて、どうしたものかと考える。
何をする気なのか、知識でわかっていても、恐怖は拭えない。フェイが傷付けば世羅の心をさらに傷付けることになるとわかっていたから、彼の行為を拒まずに伸ばした手で世羅の身体を抱き締めた。
「ッ・・・フェイ・・・」
驚いて震えた世羅の身体を離さないように、弱ったままの腕で可能な限り強く抱き締め続ける。
「世羅様・・・優しく、して、ください・・・」
世羅が息を呑む音を聞いて、乱暴に身体のそこかしこを弄っていた唇の動きが止まる。
「フェイ・・・」
どんな言葉をかけていいのかもわからない。けれどここで行為を止めようが行くところまで行き着こうが、もう二人の関係は元に戻らないことは確かだ。
世羅が動きを止めたのは一瞬だった。何かを振り切ったように、また唇がフェイの肌へと落ちてくる。けれど先ほどより、幾分か勢いが削がれて優しい手付きで触れてくる。
「こんな事をしていても・・・まだそなたに許してほしいのだ。我儘だな、私は・・・」
「何が、あっても・・・世羅様の、味方です・・・。お約束、したでは、ありませんか・・・」
「フェイ・・・」
愛してると言葉にされるより、ずっと世羅の愛を感じた。ずっとこの王宮に閉じ込められてきた世羅と、旅をし続けてきた自分。全く違う存在だからこそ、惹かれるものがあった。
友としての愛と、熱情を伴う愛と、世羅はその狭間を彷徨って悩んできたのだろう。自分たちの関係に何の疑問も持たずに今まできてしまったフェイには、やはり抱かれようとしている今でもその意味がわからなかった。
けれど抱き締めるられる腕の強さも、肌に触れる生々しい唇の温かさにも嫌悪は感じない。それが答えといえばそうなのかもしれない。
着ていたものは薄手の衣だったから、あっという間に世羅の前で剝き身になってしまった。肌の上をザラリとしたものが這ったと思ったら、世羅が舐めては吸い付くことを繰り返していた。
世羅に食べられているような感覚。背筋を得体の知れないものが駆け巡って、身体が熱を持ってくる。
「フェイ、気持ちいいのか?」
「ッ・・・?」
下腹部に世羅の舌が這った時、フェイは初めて自分の身体の変化に気付いた。
「私の可愛いフェイ。」
「ぁ、世羅、さ、ま・・・あッ・・・」
緩く兆したものを温かいものに包まれる。驚いて声が裏返り、恥ずかしくなってギュッと目を瞑る。
一番敏感なところを刺激してくる舌の動きに翻弄されて、全身から抗う力が抜けていく。
「せらッ、さ、まぁ・・・んッ・・・」
フェイの象徴を世羅が食む卑猥な音が幾度も繰り返され、羞恥心で泣きたくなった。
怖い。身体を合わせるという行為がこんなに生々しいものだとは知らなくて。
もっとふわふわと穏やかに触れ合うものだと思っていたから、自分がいかに無知だったかがわかる。
けれど世羅を傷付けたくない。自分の知らない感覚ばかりが湧き上がってきて心は畏れでいっぱいだったが、嫌だとだけは言わないように、歯を食いしばった。
「フェイ、どこもかしこも、そなたは可愛いな。」
世羅がフェイの象徴を口へ含んだまま話してくるので、そのすべてが刺激になって伝わってくる。
自分は知っている。このまま刺激され続ければ、自分の象徴は腎水を溢すだろう。世羅がそれを望むように、強く唇を使って吸い上げてくる。
「んあッ・・・せ、ら・・・さ・・・ッ・・・」
熱が競り上がってくると思った瞬間、フェイの身体が硬直する。しかしそれも束の間のことで弛緩した身体から熱を放った。
「ッ・・・んッ・・・あぁ・・・」
誰かに身体を明け渡したことなど初めてだ。だからこれが普通のことなのかどうかもわからず、身体を震わせながら我慢ならなかったことに呆然とする。
これだけでも精一杯だったが、世羅の手が止まらない。想像しなかった場所に指が滑り込んできて、フェイは小さな悲鳴を上げた。
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朝霧とおる