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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

碧眼の鳥16

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碧眼の鳥16

半日走り続けて辿り着いた城は王宮の出で立ちとはかけ離れていた。一刻も早く会わねばと気が急いて、汚れた衣服を着替え、ルウイに連れられて寝室へと向かった。

「世羅様・・・」

ルウイが薬を飲ませたらしく死んだように眠っている。フェイの到着に世羅が気付く気配はない。

慌てて脈を取り、どこもかしこも動いていることを確かめたら、ようやく急いた気持ちが凪いできた。

想像していたよりも世羅の呼吸は落ち着いている。肌に浮き出た水疱を見て、あと二日が勝負だろうと思えた。

「解熱薬は飲ませていませんね?」

「はい。フェイが伝えてきた通り、アシビの葉だけです。」

水疱の病に解熱薬は合わない。熱を下げようとするとかえって悪化するのが特徴だった。だからルウイへの返事はまずそのことを記して、彼の国鳥に来た道を帰らせた。

「水疱の様子はどうですか?」

「硬くなり始めたところが・・・。」

「問題ありません。おさまってきている証拠です。」

フェイはルウイに頷いて、一番そばで接触していた彼の様子も確かめる。

「ルウイはこの病になったことがありましたっけ。」

「感染型の水疱ならば一度。」

「では、ルウイがうつる心配はありませんね。水疱が赤い色をしているのがわかりますか?」

世羅の手をそっと上げて、フェイはルウイに視診をさせる。

「確かに。赤いものが感染型なのですね?」

「そうです。世羅様を隔離した判断は正しい。世羅様は体力がおありですから、七日もすれば落ち着くでしょう。」

「大事なくて良かった・・・。心配させまいと虚勢を張っていましたが、実のところは不安だったのです。」

「ありがとう、ルウイ。緊張で疲れたことでしょう。私が看病をします。休んでください。」

「しかし、フェイも走り通しで疲れているのでは?」

ルウイの申し出にフェイは首を横へ振った。

疲れてはいる。けれど、世羅のそばにいたい気持ちが勝った。

それに依然として、世羅の熱は高い。熱に浮かされ、フラフラと出歩いてしまったりする心配はあるので、その時そばにいるのは慣れないルウイより自分の方が適しているだろうと思ったのだ。

「では、お言葉に甘えます。フェイ、朝には交代させてください。」

「お願いします。」

静かに去っていく足音を聞いて、フェイはようやく一息ついた。

ルウイからの文を受け取った時は肝が冷えた。

世羅を守ると理世と約束した矢先の出来事だったからだ。

世羅のことだから、民の前に出て率先して指揮をとったのかもしれない。そこで病をもらってしまったのだろう。

水疱の病は民にとってはありふれた病だ。フェイも師と共に旅をする中で罹患したことがある。この病は一度罹患し治癒すると、その後患者と接触しても再び患うことはない不思議な病だ。

世羅の様子を見る限り、熱のある身体をしているものの、重篤な状態とはほど遠い。とにかくそのことに、一番安堵した。

「世羅様はこういう御顔をして眠るのですね。」

幼い頃に寝台を分け合った時は、いつもフェイが先に寝入っていた。目覚めるのも年上の世羅が先で、彼の寝顔などまじまじと見つめたことはなかったのだ。

ライの話によると、世羅は十五を過ぎた頃からほとんど風邪知らずだそうだ。フェイが世羅の寝顔を知らなくても当たり前だった。

「世羅様は綺麗な御顔をしてらっしゃいますね。水疱の痕が残らなければ良いのですが・・・。」

キィに赤い実をたくさん調達してきてもらい、塗って差し上げよう。水疱を破いてしまうと痕になりやすい。硬くなり始める頃合を見計らうのが良いだろう。

「キィ、この実を採ってきてほしいのです。」

相棒が昼食に分けてくれたものが、食べずじまいのまま荷の中に入っていた。それを取り出し、キィに与える。相棒はジッとこちらを見据えて、すぐに納得したようについばみ、窓の外へとはばたいていった。

キィを見送ったあと寝台へ目を向けると、世羅の瞼がピクリと動く。

「世羅様、眠ってらしてください。まだ熱も高いですから。」

努めて穏やかな声で告げ、宥めるように額に手を当てる。二、三日は高熱が続くだろうから、体力は奪われるばかりで、世羅はきっとつらいだろう。眉を寄せて呻く彼が痛々しくて、少しでも楽にしてやりたいと願う。

フェイは井戸から汲み上げてきた水で布を湿らせ、世羅の額へ置いてやる。すると世羅は安堵したように息を吐いて、また深い眠りへと引き返していった。















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