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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

碧眼の鳥15

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碧眼の鳥15

いつも通り巡ってきた朝とは思えぬほど、目覚めが悪く、身体が鉛のように重い。身体が熱を帯びていることには気付いていたが、単なる疲れだろうと甘く見ていた。

身体から力が抜け、不覚にも崩れ落ちたのが朝の現場指揮を終えた後だった。城に戻ってから倒れたので、民の目の前で不安がらせるようなことにならず、それだけが幸いと言えた。

「ルウイ様、世羅様の症状はいかほどでしょうか。」

「お疲れが出たのでしょうか。」

役人たちに詰め寄られ、落ち着いて診ることもできないルウイはさぞ迷惑なことだろう。

「皆様はどうか別室へ。移る病であった場合、被害が広がってしまうと困ります。」

「ルウイの言う通りだ。それにそなたたちが取り巻いていたら、まともに仕事ができんだろう。薬師に任せよ。」

渋々下がっていった彼らだが、現にできることは何もない。

ようやく静まった室内で、ルウイが世羅の身体を視診で確かめていく。

「幾分か水疱がありますね。熱もこれからさらに上がるでしょう。水分をよく取り、安静にされていてください。」

「治るのか?」

ルウイが落ち着いた物言いなので焦りはないが、覚えのない病に若干不安の芽が出てしまう。

「水疱の病にも、いくつか種類がございます。しかしいずれの場合も特効薬が存在するわけではないので、世羅様の体力次第と言わざるを得ません。フェイの方が詳しいので、彼を明日には呼び寄せます。しばし、ご辛抱を。」

熱を出したのは久しぶりだ。弱っているところをフェイに見せたくないが、寄り添ってほしいと思う相反する心に戸惑う。けれどルウイの言葉に否は唱えなかった。


 * * *


ルウイの言う通り、夕方になる頃には熱がさらに上がり、皮膚には水疱が増えた。

彼は役人たちに、世羅の籠る部屋へ近寄ることを禁じ、誰も立ち入らせないようにした。そのおかげもあって部屋の周囲は音もなく静かだ。

しかし具合が悪いと人恋しくなるもので、移る病かもしれないと思いながらも、ルウイの気配がなくなってしまうと心細く思う自分がいた。

相当弱っている。フェイ以外をそばに置きたいと望んだことはないのに、誰でもいいからそばにいてほしいだなんて。

明日にはフェイが来るとルウイは言っていた。早くフェイが辿り着いてくれなければ、誰それ構わず、はしたなく縋ってしまいそうだ。

律儀に戸を叩く音がして、静かにルウイが入室してくる。

「世羅様。フェイが十の刻には到着するそうです。一度、衣服を替えましょう。お手伝いいたします。」

汗がべっとりとまとわりついていたので、着替えることができ、ホッとする。サラリと肌触りの良い衣を身に付けて、再び寝台へ横になる。

「水疱がまた増えたな。」

「身体の中の悪いモノを出そうとする、正常な働きです。熱や痛みはいかがですか?」

「熱は高そうだが、痛みはない。」

「さようでございますか。水疱の膿を出しやすくする薬を調合いたしましたので、お飲みください。眠気を誘う作用もありますから、その方がよく眠れます。」

「助かる。昼もそのおかげでよく眠れた。」

薬の効き目が出てくると、夢も見ずに熟睡できる。近頃夢見の所為で眠れない日々が続いていたから、考えずに眠れることが何よりも得難い貴重な時間に感じる。

良薬口に苦しとはよく言ったもので、薬草の青々しい苦味が口の中いっぱいに広がる。

「ッ・・・ゴホッ・・・」

病弱な理世は幼い頃から日課のように似たような苦い薬を口にしていたはずだ。不満も言わずに飲み干していたのだから尊敬してしまう。

口直しの甘湯を渡されて、一気に流し込む。するとようやく苦味で騒いでいた口の中が落ち着いて胸を撫で下ろした。

「お休みください。じき、フェイが参ります。」

「ルウイ、そなたたちの手を煩わせてしまって、すまない。」

「世羅様がお気になさることはありません。これが我らの本業でございますから。」

「そうか。」

目を閉じる前から急激に襲ってきた眠気に、身を委ねる。あらがう間もなく、世羅は無の世界へ落ちていった。














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