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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

碧眼の鳥14

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碧眼の鳥14

コロコロと楽しげに歌う相棒の声を聴きながら、フェイは樹の根元を注意深く見て、薬草を摘んでは籠に入れることを繰り返していた。

命を救ってくれる薬草には、たいてい毒を持つ姿形の似たものがある。経験によってそれを見分け採取するとともに、見たことのない植物があれば薬師たちの勉学のため記録を取り、持ち帰ることもあった。

森の植物のことは、薬師たち以上に、彼らの相棒である国鳥がよく知っている。彼らの声を聞き、観察することもまた重要な手かがりだ。

「お昼ご飯ですか? 随分たくさんですね。」

キィがどこからか赤い実を枝ごと持ってきて、ついばんでいた。枝の切り口を見ると、乾いて数日経っているように見える。キィが折ったわけではなさそうだった。

そろそろこちらも昼にしようと、前日に採集しておいた木の実と芋を荷の中から取り出す。近くの沢から飲める水を調達し、携帯用にもくんでキィのところへ戻り、適当な枝を集めてきて調理の準備をする。

調理といっても、芋を薬草と煮てアクを取り、蒸して終わりだ。木の実は渋味の少ないものであればそのまま口にできる。

生活に必要なものは、一通り森に揃っている。宿場町を転々とする薬師もいるにはいるが、フェイは森の静けさと木々の温もりに抱かれて旅をすることを好んでいた。

季節の移ろいを肌で感じ、時々里へ降りて人々と交流し、また森を進む。薬草の探究をするには森にいる方が適しているから、それも森を好む理由の一つだ。

「キィも食べますか?」

調理したものはあまり口にしない相棒なので、木の実の殻をむいて差し出す。するとお礼と言わんばかりに残りの赤い実を枝ごとこちらへ咥えてきた。

「ありがとう、キィ。」

小粒ながらも赤いその実は、肌が荒れた時に効果のある甘い実だった。食べても、肌に直接塗っても効果がある。幼い頃は採れない冬に、どうにかこの実を食べたくて、師にねだって困らせたものだ。

「美味しいですね。」

大ぶりの木の実をせっせとついばむキィの背中を手で撫でながら、口元を赤く湿らせてフェイも昼食を楽しむ。

こんなに美味しい実なのに、食べた後の有り様を見て、世羅は気味悪がって食べようとしない。何度か王宮へ持って入り世羅に勧めてみたが、固辞されてしまった。

そういうものを臆せず食べるのはむしろ理世の方で、彼は物珍しそうに口にし、品の良い顔で美味だと言って食べていた気がする。

もう王都から旅を始めてひと月あまり。世羅の率いる兵士たちに同行している薬師からは、無事に目的地へ着いたこと、土木工事が始まったという報せが半月ほど前に届いていた。

人の足で一日かかる道のりを国鳥ならば半日も飛ばずに往復する。連絡の担い手として薬師たちの相棒は大変優秀だ。

のんびりした旅になりそうだと思った矢先、木漏れ日の間、遥か遠くから、聞き慣れた鋭い鳴き声が聞こえてくる。

キィがあれほど夢中についばんでいた木の実を放り出し、緊張した面持ちに変わる。

木の葉と枝をかき分けて舞い降りてきた国鳥。その足にくくりつけられた紙を取り、フェイは青ざめてその文を読んだ。

「世羅様、水疱ノ病に臥ス・・・」

水疱の病。そう言われていくつかの候補が頭を駆け巡ったが、この目で見るまで断定することはできない。一刻も早く、世羅のもとへ辿り着き、適切な処置をしなければと、火の始末をし、残りの食べ物を口の中へ押し込んだ。

「キィ、道を急ぎましょう。里へ降りて最短を行かねば!」

フェイは一旦荷を解き、履いていた新しいい草の草履を仕舞い込んで、古い方の草履を取り出す。昨夜新調したばかりの草履はまだ足に馴染んでいない。これで長い距離を早駆けすれば、たちまち足を擦って痛めてしまうだろう。そこであえて、足に馴染んだ古い方の草履へ履き替えたのだ。恐らく半日走れば辿り着く。その間はもってくれるだろう。

「キィ!」

呼び寄せて肩に乗せ、急な坂を一気に駆けて下っていく。里へと続く街道へ出たところで、そのまま止まらず、報せてくれた国鳥の導きに従って走り出した。

「世羅様、すぐにおそばへ参ります!」

天帝とした最後の約束。その約束をたがえないために、フェイは西への道を一心不乱に走り続けた。














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