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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

新緑の楽園7

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新緑の楽園7

泉ノ森へ来るまでの一年間は、ずっと机に齧り付いて勉強三昧だったから、汗を流す気持ち良さを久々に実感する。ベッドに身体を沈めていると、そこかしこに走る痛みすら心地いいから不思議だ。

「ナオ。一緒にマッサージしよ?」

「え……?」

瞑っていた目を開き、声のした方へ視線を移すと、春哉がベッドの梯子を上ってくるところだった。そのまま直樹のベッドに遠慮なく侵入してきたので、二人分の重みで木の軋む音がする。

シャワーを終えたばかりで暑いのか、トランクス一枚だけ身に着けて剥き出しの肌が目に眩しい。なんだか見てはいけないものを見ているような気分になって、直樹は咄嗟に春哉の身体から目を逸らす。

「そんな恰好で、風邪引きませんか?」

「大丈夫。足の裏からやるよー。」

「うわッ! やんなくていいです!!」

掴んできた熱い手に驚いて足をばたつかせるも、意外に強い春哉の握力に阻まれて、彼の手を解くことができない。

「やんなきゃダメだよ。寝てる時に足攣ったら痛いよ?」

くすぐったかったのは最初の一瞬だけだった。足のツボらしき窪みを押されて、あまりの痛さに悶絶する。起こしかけた身体はシーツの上へとんぼ返りした。

「痛ッ……!!」

「ナオ、運動不足だね。身体柔らかくしないと怪我するよ。本格的に走り込めるようになるのは当分先かなぁ。しばらくはストレッチをメインにメニュー組んだ方がいいね。」

今までの奔放な言動からは想像がつかないくらい、至って真面目な助言が春哉の口から出てきたので、直樹は痛みに顔を顰めながら見つめ返す。

「ほら、ナオ。身体の力抜いて。力んでると余計に痛いよ。」

「もうちょっと、手加減してください……。」

「手加減したら、身体解れないよー。」

痛いからこそ力んでしまう。全く緩まない春哉の指圧に、身体は強張っていくばかりだった。しかし耐えに耐えて春哉の手が足から離れると、一気に身体が軽くなって、解れると言った彼の言葉に現実味を感じる。

「教えるから、言った通りに押してみて。」

「はい……。」

立場を逆転して春哉の足を持つと、自分と同じ石鹸の香りがする。太腿から指の先まで、一切無駄な肉が付いていない足は、しなやかで美しい。腰の細さも大人になりきれていない少年特有のもので、軽やかに空を舞うのが容易に想像できた。

「明日は飛ぶんですか?」

春哉は披露したがったのだが、新入生の体験入部を兼ねて全員でランニングをすることになってしまった。だから春哉の勇姿を拝むことは叶わなかったのだ。少し残念な気持ちと、明日以降の楽しみができたという昂揚感が半々。

「明日はぜぇーったい飛ぶ。ナオ、ちゃんと見ててね。」

「はい。」

「ふぅー……。」

足の裏にかける圧を強くしていくものの、直樹が悶え苦しんだように、春哉が眉を顰めることはない。涼しい顔で目を瞑り、ゆっくり呼吸をしているものだから、悔しい気持ちは否めない。

「あッ、ナオ!」

すっかり身体の力を抜き去り寝転がっていた春哉だったが、急にトランクスの前を手で押さえて起き上がる。直樹は上がった声に驚いて、思わず春哉の足から手を離した。

「ゴメン。勃っちゃった。」

「ッ!?」

「トイレ、トイレ。」

こちらの狼狽を気に留める様子もなく梯子を降りていくので、直樹は呆然と春哉を見送る。

「ナオ、トイレでしてもいい?」

何故断りを入れてきたのかも理解の範疇を超えていたが、こうもあっけらかんと言えるものかと、ただただ混乱する。

「ど、どうぞ……。」

間違えなく今日一番の驚きに、頷いて送り出すことしかできない。トイレのドアを閉める音がしても、安堵には程遠い。肩に入った力が抜けることはなく、直樹はベッドの隅で体育座りをして身体を丸める。

「こういうもんだっけ……。いや、違うよな……。」

読めない春哉の行動に翻弄されっぱなしだ。上級生に言われた変人という言葉がようやく腑に落ちた直樹だった。









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