相変わらず突拍子もないことを次から次へとしてくれるから、もう頭がついていかない。呆気にとられながら導かれた手で春哉に触れる。気持ち良さそうに目を細めて見返してくるので、その瞳に吸い込まれて囚われたまま無意識のうちに春哉の分身を扱いていた。春哉が手の動きに合わせて小さく息をこぼすので、その音で手淫しているのだと自覚したくらいだ。
「ナオ……ナオも、しよ?」
凄く気持ちいいよ、と春哉が耳元で囁いてくる。掠れて熱を帯びた声にドキリとして、直樹は身体に熱をともす。理性との間で暫し揺れ動いていたが、色を帯びた眼差しと誘惑に負けてしまった。
脱がせようと動く春哉の手に応えて、直樹は腰を浮かせて手伝う。はっきり口で承諾の意を伝えるのは恥ずかしくて、流されているように装うけれど、春哉からしてみれば直樹が拒まなければ大差ないだろう。
「ッ……。」
本当に春哉は何をするにも躊躇うことを知らない。直樹とほとんど大きさの変わらない手だが、分身を捕えた手は自分のものより幾分白い。快感を得る場所はどこだろうかと、春哉の指先が興味津々といった具合に感じる場所を探るように触れてくる。
「ナオ、ドキドキしちゃうね。」
興奮していることを隠しもせず、甘い息をつく合間に擦り寄ってくる。大胆だなと思う一方で、誘ってくる腰に煽られていく。春哉の手の中で直樹の分身が膨れて芯を持つまでに、大して時間はかからなかった。
していることは自分で慰める時と変わらない。けれど春哉の手は的確ながら自分の意思とはまるで違う動きをする。急に快感が競り上がってくることもあれば、緩々と穏やかな刺激に翻弄されることもあった。
手の中にある春哉の分身をじっくり見降ろすだけの勇気はなかったけれど、先端からあふれ出したものが直樹の手を濡らし始めて変化を感じる。
「あッ……!」
「ッ!」
蜜を拭うように指で先端を撫でると、急に春哉が焦った声を上げる。その嬌声に直樹も驚いて、二人で肩を震わせた。直樹の分身を愛でていた春哉の手が止まる。直樹はその隙に乗じて春哉の硬茎を手で攻め立てると、春哉の唇が戦慄いて荒い息を吐き始めた。
衝動的に唇を貪りたくなり、春哉を組み敷いて彼の唇を奪う。春哉の驚きも甘い息もすべて直樹の喉奥へと呑み込まれて消えた。
「ん……ふぅ……。」
身体が熱くて堪らない。春哉の手淫は止まってしまったけれど、彼の痴態に自分の身体が沸き立っていくのがわかる。おぼろげな知識で湧き上がる欲求のすべてを収めることはできない。けれどもっと深く繋がりたいという思いのままに腰を寄せて、二人分の欲望を手に握った。
「ナオッ、それ、きもちい……」
「ッ……」
自分で慰める時とは違う得体の知れない昂揚感に呑み込まれて、どう収拾をつけていいのかわからない。しかしそれでも身体に巣食うこの熱をどうにかしたいということしか頭になかった。
「春哉、さ……」
「ナオ、もっと、先っぽ……ッ」
「ココ?」
「ん、そこぉ……きも、ち……」
二人で息を上げながら没頭する行為の生々しさに直樹は顔を火照らせる。羞恥心は僅かながら頭の片隅に残っていたけれど、強請るように潤む瞳が見上げてきて脳が焼き切れるほどの劣情に身体が染まる。
「春哉さん」
春哉のことを好きかどうか、整然と理由を並べ立てていた自分が愚かに思える。気が付いたら目で追っていて、独り占めしたくて、身体の隅々まで触れたいと思うこの気持ちこそ答えだ。言い寄られて初めて自覚するくらいの鈍さだけれど、突き付けられれば恋慕だと確信できる。
「春哉さん」
薄っすら口を開けたまま荒い息を吐く春哉を呼ぶと、嬉しそうにこちらを見上げながら彼がはにかむ。その笑みに促されて、手の中で膨れていた直樹の熱が波打って弾け、気付いた時には春哉の腹や胸に幾度も白濁を散らせていった。
「ッ……ん……」
「ナオッ……んッ……」
自分が達した衝撃で、つい春哉の分身も強く扱いてしまったらしい。春哉は一瞬顔を顰めて、先端から勢いよく蜜を放つ。仰け反って震え、直樹の手の中で脈動を繰り返すものだから、誘われるがままに喉元に噛り付いて熱の放出が止まらない春哉の分身を擦り上げる。
「ナオぉ……おかしく、なっちゃう……」
おかしくなると身悶えながら、もっとしてと強請ってくる春哉に堕ちていく。射精したばかりだというのに、再び漲ってくる自分の分身が素直過ぎて情けない。
「ナオ、野獣さんだね。」
直樹の変化に目敏く気付いた春哉は、いつもより少し緩慢な動きで上を向く直樹の分身を掴んでくる。硬さを確かめるように強弱をつけて握られただけで、もうすっかり臨戦態勢になってしまった。
「は、春哉さん、今日はもう休みましょう?」
ちっとも説得力がないけれど、一応気遣うポーズだけは取る。
「もう一回、ダメ?」
「……。」
喜んで、と答えたい気持ちは胸の内に伏せる。後戻りできないくらいまで春哉に弄らせて、それを言い訳に直樹は再び春哉に手を伸ばした。
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朝霧とおる