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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

新緑の楽園11

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新緑の楽園11

いつもはけたたましい目覚まし時計の音で起こされるけれど、今朝は随分前に眠りから解けてしまった。

ベッドの上で直樹が寝ているかと思うと、何故だかソワソワして落ち着かなかったのだ。直樹と過ごす日々が楽しみで、脳がフル稼働したまま、興奮が冷めなかったのかもしれない。

朝の日課であるストレッチをして、春哉は全身をほぐしていく。竜崎には散々寝相が悪いと不評だったから寝ている間も活発に動いているのだろうが、やはり起きている時ほどではない。血流の鈍くなった身体を温め伸ばしていくと、身体が軽くなり、思い切り今日という一日を満喫できる。

最後のひと押しに背伸びをしてベッドを振り返るが、春哉の気配を察することなく、直樹が起きてくる様子はまだない。

春哉はこっそり梯子に足を乗せ、直樹の寝顔を覗き見た。

「可愛い……。」

起きている時は見るからに緊張した面持ちだった。彼は顔を引き締め、もう少し隙を見せてほしいと思うくらいには緊張感を漂わせていた。

しかし、春哉の前に晒されている寝顔は、昼間見るよりあどけない。繰り返し見た写真の顔より更に幼く感じる。

スッと人差し指を伸ばして、直樹の頬を優しく突く。しかし緊張し通しで疲れが溜まっていたのか、彼が起きる気配はなかった。

早く目を覚まし、自分の姿をその瞳に映してほしい。今日こそ彼の前で飛ぶ姿を見せたい。案内しきれていない構内も一緒に駆け巡りたい。直樹とやりたい事が、春哉にはたくさんあった。クラスメイトも口々にこぼしていたが、弟ができたようで嬉しいのだ。

「なーおー。」

キツツキが木を突くように、忙しなく人差し指で直樹の頬をプッシュし続ける。

「起きないなぁ……。」

早く構ってほしいという欲が春哉に悪戯心を芽生えさせ、直樹のベッドに侵入する。

「お邪魔しまーす。」

小声で直樹に囁きながら彼のすぐそばに身体を横たえる。掛布団を半分奪い一緒にくるまると、温もりの心地良さに誘われ、春哉は安堵の息と共に目を閉じた。

「ふぅ……。」

漂ってくる直樹の香りも、その人柄を映すようにどこか優しい。

「ちょっとだけ……。」

ほんの数分のつもりだった。

しかし横たえた身体はすっかり敷布団に根付き、春哉は二度寝の誘惑に勝てないまま、眠りの世界に吸い込まれていった。









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